塚田賞作品の魅力(23)(近代将棋昭和54年5月号)②

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第23回の続きです。
今回は第41期の受賞作を掲載します。
第41期塚田賞受賞作家
短篇賞 滝山外司博
中篇賞 北原義治
長篇賞 詰吉
昭和48年1~6月号


この期も”京都の三羽烏”が大活躍。詰吉(上田吉一)氏が長篇で連続受賞したのをはじめ”影男”こと伊藤果氏も毎月のように力作を出品。”上島正一”(若島正氏と上田吉一氏の合作)というペンネームまで登場して気炎をあげました。
45年以来、三年間途絶えていた”三手の詰み”が、この新年号から復活しました。また4月号では、本誌創刊23周年を記念する田中鵬看氏の珍シリーズ(玉と歩18枚に、香あるいは桂、銀、金、飛角4枚の”23枚図式”や本誌が募集した”オール捨駒作品”の長手数4局も発表されました。
柳田明、深井一伸といった若手のホープが登場したのも、この期です。


短篇賞 滝山外司博作


第41期滝山氏作

滝山外司博作(48年3月号)
2八金 同と 1九金 同と 2八馬 同玉 3九銀 1八玉 3八龍まで9手詰
塚田九段「本作、入玉型の特性を巧みに活用した手順で妙味があり、これに決定。次点は柴田昭彦作(4月号、13手詰)で、一風変った味はすて難い」
狭い入玉型ながら、龍と馬が強力で紛れる手がいくつもあります。その中で2八金から1九金と、手駒の二枚金をさきに捨ててしまうのはかなりの英断。とくに2八とと呼んでの1九金捨ては、同玉なら3九龍以下の詰みを含みとする、入玉図特有のいかにも小気味よい軽手です。というのも、初手から1九金、3九玉、2八銀、4九玉、4八龍、5九玉…のきわどい紛れがあるから、なおのこと。
3八と金を1九まで移しておいて、2八馬と捨てるのが強烈な収束。3九銀と打ちかえると3八龍が可能になって詰み上ります。入玉図の特性をフルに活用して、簡素な形の中に強手を織り込んだ好作。若冠14才、初入選での受賞は立派です。
作者「まだまだ未熟な僕なのに、入選しかも塚田賞までいくとは、全く夢を見ているような気持です。この嬉しさをどういい表わしてよいかわかりません。でも、来年はいよいよ受験です。もう詰将棋にいそしむだけの余裕がありません。この思い出を僕の青春の一コマとして心に刻み、詰将棋とは絶縁するつもりです。また機会があれば、今度は本格的に取り組んでみようと思っています」


中篇賞 北原義治作


第41期北原氏作

北原義治作(48年2月号)
5三銀左不成 5一玉 6二銀不成 同銀 5二銀 同玉 5三銀不成 5一玉
6二銀不成 4二玉 5三銀不成 4一玉 5二銀不成 3二玉 4一銀不成 同玉
5三桂 5一玉 4二銀 同角 6一龍まで21手詰
塚田九段「1、2月号の北原両作品が印象に残り、いずれか少々手間どったが、銀という駒を意識的に細工された手順は巧妙である。他では山本民雄作(2月号、35手詰)がシブイ持ち味で好感が持て、小西真人作(同、19手詰)も香のつるべ打ちと、うまいまとまりを見せている」
本作は徹底した銀不成の繰り返しが主題でとくに二度目の5三銀不成以下の”千鳥銀”の変則的な動きに面白味があります。紛れも変化もほとんどなく、指し難い手は一つもありませんが、このコミカルな銀の動き全体のかもし出すリズム感を、妙手順というべきなのでしょう。
作者「”賞”なんてものと縁がなくなって何年ぶりかなァ、”枯木も花”ってヤツですかなァ。とにかくこの数年、心がけの悪いのをタナに上げて、さっぱりツキに見放されちまっているのを嘆いているところ”天いまだ我を見捨ず”で、嬉しいじゃありませんか」


長篇賞 詰吉作「オーロラ」


第41期詰吉氏作

詰吉作(48年6月号)
2四銀 ㋑同角 3四歩 同玉 2五龍 3三玉 3四歩 同桂 2四龍 同玉
2五飛 1三玉 2四角 2三玉 4六角 3三玉 2二銀 同歩 2四角 2三玉
7九角 3三玉 8八角 7七香合(途中図)

途中図(24手目7七香合まで)
第41期詰吉氏作1

途中図以下、同角 6六香合 同角 5五香合 同角 4四香合 2四角 2三玉
1五角 1三玉 4六角 同香 2四角 2三玉 4六角 3三玉 2三飛成 同歩
2五桂 2二玉 1三角成 1一玉 1二香 2一玉 2二香 3一玉 4一歩成 同銀
2一香成 同玉 3三桂打 3二玉 3一馬 同玉 4一桂成 同玉 4二銀打 3二玉
3三銀成 2一玉 2二香 1二玉 1三香まで67手詰
塚田九段「受賞の”オーロラ”は香の連続合駒という新手筋であり、これを具体的に表現された作者には敬意を表する。傑作。他では、上島作(4月号、75手詰)の趣向手順も見事なものである。”オーロラ”が現われなければ、当然こちらに決まるところだ」
初手2四銀に㋑3四玉の厄介な変化があります。これは3五銀と角を取って4五玉なら6五飛、5五銀引、3六角以下、3五同銀なら、5六角、4五金合(他の合は、2五龍、3三玉、3五龍以下。3三玉は、3四歩、同桂、2五桂、2四玉、1四と、同玉、1二飛以下)、2四飛、3三玉(同銀は、3六龍、3五歩合、4五角、3三玉、2五桂、同銀、3五龍以下)、3四歩、同桂、同飛、同玉、2六桂、同銀、3六龍、3五金打、4五角、2四玉、3五龍、同玉、3六金以下の早詰。
初手2四銀に対するこの変化を通り越すとあとは一本道の捌き。2五飛と打ちかえてから2四角打で4六銀を奪い、2二銀、同歩と退路をふさいでおいて、再び2四角から7九角と打ちかえます。8八角と質駒の角を取ったところで突如、本局の主題が現われます。左様、置駒も何もない中空に輝くオーロラのごとく、7七香・6六香・5五香・4四香と夢のような香の連続中合がとび出すのです。
その意味は、例えば途中図で直ちに4四香合とすると、2四角、2三玉、1五角、1三玉、7九角、4六合、2四角、2三玉、4六角、3三玉、2四角、2三玉、1三角成、3三玉、2二馬までの早詰。つまりこの手順中の7九角引きを消すために、角にくっつけて香を打たねばならない――という訳です。6六、5五、4四の香合も全く同じ理由です。
このような単純な意味づけの四段連続合駒は、実は第22期塚田賞を獲得した山田修司氏の”桂の四段連続合駒”(38年11月号、63手詰)が史上初。これは1七飛に対して2七・3七・4七・5七と横に桂合を連発するものでした。本作は、これと同じ構想を角に対する香合で実現したものです。この趣向は、山田作が発表されて以来、多くの実力作家が試みたと思われますが、10年を経てようやくそれが出現したもので、詰棋界の話題となりました。
本作は”四香連合い”の新趣向手順を実現したというだけでなく、この主題をはさんで適度の変化を含んだプロローグ(前述)と、2三飛成捨てや3一馬捨てのような鮮やかな捌きのエピローグを、殆ど主題を表現するに必要な駒だけで構成したという、見事な出来栄えで、歴史に残る傑作といえます。前期に続く長篇での連続受賞で、超一流作家としての地歩は不動のものとなりました。
作者「連続受賞、本当にありがとうございます。気に入った作の受賞だけに、嬉しさはまた格別です。本作は比較的短期間に完成しましたが、プロットの表現方法は、それほど悪くないと思っています。なお題名は、空中に描けた色彩感を伝達するために工夫したものです」



「オーロラ」は「極光21」第65番に収録されています。
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「オーロラ」

今更ですが、やはり素晴らしい作品ですね。2枚角の活用というテーマでは、同じ上田氏の作品の中で『近代将棋』昭和55年1月号の59手詰 ( http://hirotsume.blog.fc2.com/blog-entry-94.html ) と双璧を成す名作だと思います。
「オーロラ」は、一般的には「角の王手に対する四香連合」の新構想が主題と見られがちですが、作者の上田氏ご自身は、作品集『極光21』で、「本局のテーマは30手近くに及ぶ二枚角の運用」であると書いておられます。

名無しさん

「極光21」は現在手元になく、解説を見ることができないのは残念ですが角の運用がテーマとはなるほど。
美しさを感じる作品です。
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