塚田賞作品の魅力(23)(近代将棋昭和54年5月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第23回も2つに分けて掲載します。
今回は第40期の受賞作を掲載します。
“京都の三羽烏”が大活躍

第40期塚田賞受賞作家
短篇賞 山崎知之
中篇賞 OT松田
長篇賞 詰吉
昭和47年7~12月号


この期の話題は、何といっても、上田吉一氏の本誌初登場。”詰吉”のペンネームで初入選したとたん、”実力問題シリーズ”(12月号)の巨椋鴻之介・田島暁雄氏らの趣向大作を尻目に、長篇賞をかっさらってしまいました。
それもその筈で、上田氏は若島正氏や破天荒(伊藤果)氏とともに”京都の三羽烏”とはやされた逸材。論理的な趣向手順を完璧の構成で表現する”完全主義者”で、満を持しての登場だったのです。
伊藤氏も、ペンネームを”影男”と替えてこの期は力作を続々と発表されました。


短篇賞 山崎知之作


第40期山崎氏作

山崎知之作(47年10月号)
2六桂 1五玉 3四桂 1四玉 2六飛不成 3二飛 1五歩 同玉 2三飛成
まで9手詰
塚田九段「今期はあまり期待できない作品が多かったが、中では本作の”角筋を消す飛不成”に妙味があり、これに決めた」
打歩詰の状態になっているこの形で、2六飛不成は詰キストにとっては常識的な一手です。ところが、これにつられて、2六飛不成、3二飛、1五歩、同玉、2三飛成から、2七桂の筋――と即断すると、3七飛成と角を素抜いた龍が利いてきて失敗します。
最初に、2六桂から3四桂としておくのが伏線的な事前工作で、これによって3七角を素抜かれるのを防げる――という訳です。紛れは殆どありませんが僅かの9手で、しかも簡潔な形で明快に構想を表現したところが買われての入賞は幸運でした。
作者「私にとって9手詰という、長手数の第二作目。初心者中の初心者の私が、”俺にしてはなかなかよくできたので、いっちょう出してみるか、どうせ落ちて元々”という軽い気持で投稿。それが塚田賞とは!初心に還る必要がなかったのがよかったのか。今、近年の異常気象の原因が解明した」


中篇賞 OT松田作


第40期OT氏作

OT松田作(47年7月号)
1五歩 1三玉 1四香 2四玉 2五銀 1五玉 1六歩 同飛 同銀 同玉
3六龍 2六金合 同龍 同玉 2五飛 1七玉 2七金 1八玉 2八金 1九玉
2九金まで21手詰
塚田九段「短篇にくらべて中篇はそれぞれ一騎当千のつわものという感じで、興味ある作品が多く、非常に迷ったが、本作のしぶいねらいが効を奏した感じだ。何となくうす味の感もなくはないが、今までの詰将棋には見られない風味というものがある」
初手から2五銀、1五玉、1六歩……と作意のように追うと、3六龍のとき2六歩合で詰みません。最初に1五歩から1四香としておくと、このとき1五飛、同玉、2五龍までの詰みとなるので、金合が生れる――という訳です。前局(山崎氏作)と似た意味の伏線手が主眼ですが、この初形では何故か1五香と打ちたい気分になるだけに、作者が”歩先香歩”と名付けたくなるのは判ります。構想ものでありながら、心理的な好手といえましょう。2六金合以降はやや軽い感じですが、淡泊な構想に調和した収束といえるかも知れません。
作者「受賞の知らせにビックリ仰天。小生の作より優れた作は沢山あると、今もって信じております。何故なら、歩先香歩といえば目新しい感もありますが、伏線といい直せば平凡なものです。ただ、名手はひとつあればいいのだ、そんな気持が、作るときにあった気がします」

長篇賞 詰吉作


第40期詰吉氏作

詰吉作(47年12月号)
7一角 6二飛合 同角成 同歩 5五飛 5四香合 同飛 6三玉 5三飛成 同玉
5五香 5四角合 同香 6三玉 5三香成 同玉 3一角 4二飛合 同角成 同歩
5五飛 5四香合 同飛 6三玉 5三飛成 同玉 5五香 5四角合 同香 6三玉
5三香成 同玉 3五角 4四飛合 同角 同香 5五飛 5四香合 同飛 6三玉
5三飛成 同玉 5五香 5四角合 同香 6三玉 5三香成 同玉(途中図)

途中図(48手目5三同玉まで)
第40期詰吉氏作1

途中図以下、4二銀 同玉 4三歩 4一玉 3二角 3一玉 2二歩成 同玉
3三香成 1一玉 1二角成 同玉 2三角成 1一玉 2二馬まで63手詰
塚田九段「受賞作にくらべて巨椋・田島両作(前記)は決して劣るものではない。ただ趣向作品の場合、変化・まぎれをあまりにむずかしく持っていくのは考えものだ。受賞作はねらいが明快であり、すっきりしたまとまりを見せており、新人作家とすれば大変な人が現われたものだ」
7一角に6二香合(、)この香をとって5五香に5四角合(香合は売り切れ)をさせて角を取り戻す……というのがすぐに浮かぶ筋。この角と香の交換を繰り返しながら、6一歩・4一歩・4四香を一段づつ上げてゆく”持駒変換”の趣向――と、まず誰しもが考えるところですが、どっこい本作は、7一角に一旦6二飛合とし、5五飛、5四香合でようやく香を手に入れる、という手の込んだ持駒変換が行われます。この6二飛合は、”飛先飛香”とか”不利合駒”のように見えますが、実は”手数延ばし”がその意味なのです。こうして、角→飛→香→角と、持駒変換をしていくカラクリが判れば、同様に3一角、そして3五角と趣向的にこれを繰り返します。もし3五角の方を先にすると、4四桂合、同角、同香、6五桂、4三玉、3二銀、4二玉と逃れ手順前後はできない仕掛けになっています。
収束は、期待通り、銀・香・角をきれいに捌きますが、それが2三歩たった一枚の配置で仕上げてあって、見事というほかありません。論理的な趣向を簡潔に、爽やかに表現した秀作です。
作者「本作、小生好みの趣向作ですが、作品の出来ばえよりも、プロット自体の理論的な珍らしさが賞の対象になったことと思っています。合駒趣向は、棋力の低い人にも創作の可能性は充分あり、とくにリズムの発展は限界が程遠いと考えていますし、また合駒を含まない作においても、まだまだ発掘できると思います」



詰吉こと上田氏作は「極光21」第16番に収録されています。


山崎氏作は5手目1三飛成以下でも詰んでしまうようです。
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