塚田賞作品の魅力(22)(近代将棋昭和54年4月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第22回も2つに分けて掲載します。
今回は第38期の受賞作を掲載します。
田島氏、正解者なしの難解作で連続受賞

第38期塚田賞受賞作家
短篇賞 大西康夫
中篇賞 渡辺三郎
長篇賞 田島暁雄
昭和46年7~12月号


7月号と8月号の二回にわけて、「私の快心作」と題して”詰作家三十人一局集”が掲載されました。これは当時の代表的な詰将棋作家の自信作とプロフィールを紹介する好企画でした。これに名を連ねたのは、村山隆治・桑原辰雄・岡田敏・山田修司・柏川悦夫・酒井克彦・野口益雄・金田秀信・若島正・小西逸生・南倫夫・昼間勉・小林正美・黒川一郎・北原義治・近藤孝・山中龍雄・田中鵬看・田中至・鳥越九郎・柴田昭彦・森田正司・北川邦男・駒場和男・細田強・門脇芳雄・植田尚宏・OT松田・清水孝晏・小峯秀夫の各氏。いま、このような企画をすれば、どんな顔ぶれに変るか、興味のあるところです。
この期に初入選した作家のなかで、安達康二、金成憲雄、大村光良の三氏は、その後も大いに活躍されました。


短篇賞 大西康夫作


第38期大西氏作

大西康夫作(46年12月号)
3一金 同玉 4二金 同玉 2二龍 3二角 3四桂 4一玉 3一龍 同玉
5三馬 4一玉 4二馬まで13手詰
塚田九段「最終候補には柏川悦夫氏作(9月号、11手詰)と本作が残った。本作、初手3一金から4二金が軽妙であり、いきなり4二金とする手が詰まないところなどもよい。初形もよく、これに決定した」
初手から4二金とすると、3三玉、3四金、4二玉、2二龍、3二角となって、桂が跳べません。そこで3三金、同桂と消去して、3四桂、4一玉、3一龍、同玉、5三馬と追うと、2一玉で逃がれます。作意順のように、3一金から4二金とすれば、2一桂が動いていないので、この筋が成立する……という訳です。初手2二金と打つ手も詰みそうなだけに、この3一金はちょっと気付き難い奇手になっています。3一金から4二金という二手一組みの好手に、収束の3一龍捨てが入ったのが受賞のポイントでしょう。
作者「今回の受賞作は、小西逸生氏の作品を見て”私も……”と思い、創作した次第です。これを機会に新鮮味のある手順を取り入れた作品をつくりたいと思います」


中篇賞 渡辺三郎作


第38期渡辺氏作

渡辺三郎作(46年10月号)
3四角 2二玉 2三歩 1一玉 1二歩 同玉 4二飛不成 3二桂合 同飛不成 1一玉
2二歩成 同歩 1二角成 同玉 2四桂 1一玉 1二歩 2一玉 3三桂まで19手詰
塚田九段「今期は渡辺作が二作とも見事な出来であった。どちらを選ぶか少々迷ったが私の好みとして簡素な方をとりたい。最初が意外に手が広く、3二桂の中合などが入って巧妙。他では山本民雄作(12月号、19手詰)もすて難いが、構図のとり方にくどいところがある」
初手から3三角成や3三桂成など、誘手の多い形。3三角成なら1二玉、3四角、2三銀打以下かなり続くがわずかに届かない。また3三桂成もきわどいが逃れる。有用そうな2二角がすぐに取られる3四角は、いかにも打ちにくい初手です。
続く2三歩の変化がまた厄介。同銀ならば3三桂成以下で、3一玉なら3二歩、同玉、4三飛成、3一玉、2二歩成以下、いずれも軽手があって詰みます。
1二玉の局面で、4二飛不成から3二桂の中合を発見して、ようやく本筋に入ったことがわかります。この形での飛不成や桂中合は一つのパターンですが、これに至るまでの紛れと変化を、このような簡潔な形で実現したところに、作者のセンスと棋力を伺い知ることができます。
作者「受賞との知らせに改めて見直して見るに、形は簡潔であり、駒の効率もよく、まぎれもあり、我ながらよく出来たものと感心しています。実は、最初の2手は後から加えたものですが、これにより種々のまぎれを生じ、しかも余詰が出なかったことは幸運で、この辺が受賞の一因になったものと思います」


長篇賞 田島暁雄作


第38期田島氏作

田島暁雄作(46年11月号)
3九角 ㋑4八銀 同角 同と 6七銀 同桂成 同馬 6五玉 7四銀打 6四玉
6三銀成 同玉 7五桂 6四玉 6六香 6五金(途中㋺図)

途中㋺図(16手目6五金合まで)
第38期田島氏作1

途中㋺図より、同香 同玉 7六銀 7四玉 5六馬 同香 Ⓐ8六桂 8四玉
9四金 7三玉 8三金 ㋩6二玉 7四桂跳 5三玉 4三と 同金(途中㋥図)

途中㋥図(32手目4三同金まで)
第38期田島氏作2

途中㋥図より、4五桂 4二玉 3四桂 4一玉 3一と 同玉 2二と 同金
同桂成 同玉 1二歩成 3一玉 3三香 4一玉 3二香成 同玉 2三飛成 同玉
1三香成 3二玉 2二と 4一玉 3二金 5二玉 5三歩 同金 同桂成 同玉
6三金 4三玉 3三金 同玉 2三成香 4三玉 4四歩 4二玉 3二とまで69手詰
塚田九段「候補にのぼった近藤孝作”蟻地獄”(7月号、53手詰)、今井光作(8月号、79手詰)も個性があり、力作である。受賞作の本局は難解であり、ネライの銀先銀歩、金先金歩の組み合わせは奇抜である」
発表当時、正解者なし。とにかく複雑難解な構想作品です。
作意順を追って16手目、常識的に6五歩合とすると、以下同香、同玉、7六馬、5六玉、5七歩、4五玉、5四馬、3五玉(変化図)

変化図(3五玉まで)
第38期田島氏作3

となって、3六歩、4六玉、5八桂、同と、3八桂まで29手詰となります。実は、これが作者の設けた陥穴(偽作意)なのです。つまり6五合(銀合は同香、同玉、7四銀打)とすることによって、右の手順では5七歩が金となるので3六歩が打てなくなり、この順は成立しない――という訳です。
それだけではありません。作者は、この同じ陥穴をもう一度活用しているのです。それは初手3九角打に対する㋑4八銀の合駒。ここは気軽に4八歩合とし、同角、同と、6七歩として、以下作意通りに追うところですが、6七銀と先に捨てれば、同桂成、同馬、6五玉、7六馬、5六玉、5七歩以下、変化図と同様の早詰があります。つまり、4八銀合ならばこの順は成立しない訳で、これは詰方の”銀先銀歩”に対抗する玉方の”不利合駒”という高等戦術といえましょう。
途中㋺図に戻って、6五金合ときまれば、以下、同香、同玉、7六銀、7四玉となり、ここで5六馬、同香と捨てておくのが、後の㋩6二玉のとき6四玉とする変化で6七飛回りを可能にする伏線です。また23手目Ⓐ8六桂のところで、8五金、7三玉、8三歩成、6二玉、7四桂、5三玉、4三と、と行っても同じように見えますが、わざわざ、8六桂、8四玉、9四金、7三玉、8三金……と回り道をしているのは、32手目4三同金(途中㋥図)のところで、同玉の変化に対し、4五香、5三玉、2三飛成、同金、4四銀、6四玉、6五歩(8五金の順ではこれが打てない)、7四玉、8六桂までの変化に備えての深慮という訳です。
この辺りまで、前半の虚々実々の応酬は見ごとなもの。途中㋥図から、まだ延々30数合も手は続きます。これは2七飛にもう一花咲かせようという捌きでしょうが、やや冗長の感がないでもありません。
ともあれ本作は、すぐに取られる合駒を、”歩”でよいところを”銀”と”金”をはり込む「不利合駒」を二回も、それも同じ変化手順を使ってとり入れた珍しい構想の力作で、前期に続く長篇の連続受賞は作者の実力のほどを世に示したものといえましょう。
作者「原図では玉方6一香があり、銀先銀歩の合駒がもう一回入っていて、後半のまとめもスッキリした手順でしたが、余詰があり後は”あちら立てれば、こちら立たず”の繰返しとなり、本図にたどりついたときは完全にグロッキーになりました」
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR