塚田賞作品の魅力(21)(近代将棋昭和54年3月号)②

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第21回の続きです。
今回は第37期の受賞作を掲載します。
第37期塚田賞受賞作家
短篇賞 近藤 孝
中篇賞 山本民雄
長篇賞 田島暁雄
昭和46年1~6月号


前期につづいて、この期も二人の大型新人が受賞しました。中篇の山本民雄氏と長篇の田島暁雄氏です(田島氏は解図歴が長いので新人とはいえないかも知れませんが……)。この当時、昭和20年代生れの若い人達が数多く詰棋界に流入していますが、学園紛争からの落ち着きを取り戻した学生たちが、それぞれの道を自ら求めるようになった――という時代的背景があったからでしょうか。
閑話休題。この年のトピックスは、田中鵬看氏が新年号から9月号まで特別出題した、延べ19局及ぶ”歩なし図式シリーズ”です。全局、歩を除く全駒21枚を使用した条件作(趣向作や構想物も含む)ばかりで、本誌21周年を祝って、この連作に挑戦したということです。


短篇賞 近藤 孝作


第37期近藤氏作

近藤 孝作(46年1月号)
1四銀 1二玉 1三銀成 同玉 1一飛 2三玉 3四銀 同歩 2四歩 同玉
1四飛成まで11手詰
塚田九段「初手から意外に手が広く、考えさせられた。収束の3四銀から2四歩も軽妙で、棋形とのバランスもとれているのでこれに決定した」
初手、まず3四銀(同玉なら2四飛まで)が目につきますが、同歩で以下寄りそうで届きません。1四銀から1三銀成と捨てて、1一飛と据え、ようやく狙いの3四銀打が成立します。3四同歩と最後まで抵抗しますが、2四歩突の軽手でつかまります。さすが、銀使いの名手、短篇でも銀が主役になっています。さわやかな小品といえましょう。
作者「1二香が初手の変化(3二玉、4三銀打、2一玉、1一飛)にだけしか必要のない駒なので不満でしたが、この作意ではこれ以上良くはならないでしょう。初手の1四銀と、最終の2四歩突きがいい感じなので発表する気になったのですが、おそらくこの2四歩で票をかせいだものと思います。


中篇賞 山本民雄作


第37期山本氏作

山本民雄作(46年5月号)
3七歩 3五玉 7五飛 5五角 3六歩 同玉 4五銀 3五玉 3七飛 同角不成(途中図)
5六銀 5五馬 2五金 3六玉 4五銀 同馬 3五金 同馬 同飛 同玉
3六歩 同玉 6三角 3五玉 4五角成まで25手詰
塚田九段「中篇は本作と田島暁雄作(5月号、25手詰)にしぼられた。田島作の二枚の遠角打というネライどころは大変高度なものであり、質的にはこちらの方が上かも知れない。難局である。本作、攻防の応酬は見ごたえがあり、形の広がりもそう気にはならない」
玉は二本の香にはさまれていて行動範囲が限られていますが、玉方応手が厄介。3手目7五飛に同角なら、3六歩、同玉、4五銀、3五玉、3七飛、同馬、3六歩、同馬、同銀……で詰み。これは変化で偽作意の一つです。7五飛に5五角とし、3七飛のとき同角不成(途中図)

途中図(10手目3七同角不成まで)
第37期山本氏作1

と抵抗して、あくまで打歩詰を解消させないのが作意です。
それならば……と、5六銀の開き王手で金を入手すると、今度は5五馬と上ります(5五角成と引くのも、以下4六金、4四玉、5五金、3五玉、6四金のような好手を含む手順です)。あとは2五金から4五銀、同馬、3五金、同馬、同飛と捌いて6三角打で詰み上がります。詰方二枚飛車に対する玉方角馬の虚々実々の応酬が見もので、新人らしい大胆な構図から生まれた新鮮味ある攻防手順といえましょう。
作者「本作は形も広がりすぎており、入選も疑問視しておりましたのに、意外という感じが正直のところです。打歩詰を綾に、二度の移動合を無理やり作意化したものですが、収束が無難にまとまったのが幸いでした」


長篇賞 田島暁雄作


第37期田島氏作

田島暁雄作(46年2月号)
3二歩 同馬 2二金 同玉 3四桂 2一玉 2二金 同馬 同桂成 同玉
3四桂 2一玉 7六角 6五飛合(途中㋑図)

途中㋑図(14手目6五飛合まで)
第37期田島氏作1

途中㋑図より、同角 同歩 5一飛 4一角打 同飛成 同角 5四角 4三飛合
同角成 同歩 2二飛 1一玉 1二飛成 同玉 8二飛成 5二桂合(途中㋺図)

途中㋺図(30手目5二桂合まで)
第37期田島氏作2

途中㋺図より、同龍 同角 2四桂 同歩 1三歩 1一玉 2三桂 2一玉
3一桂成 同玉 4二銀成 2一玉 2三香 1一玉 2二香成まで45手詰
塚田九段「本作の打ち歩詰誘致あるいは打開手法に目新しいものが見られる。飛合い、角合いの手ごたえも受賞十分なので決定。次点はOT松田作(5月号、43手詰)。ネライの馬と角の入れかえ、8筋の歩突きなど、作者一流の奇手であるが、そのネライのよさがじかに解答者に伝わってこないという難点がある」
本作、初めはちょっと筋が見えない形ですが3二歩、同馬と呼んで、2二金と打てば道が開けます。同馬なら4二銀成、2一玉、3二金で清算して2四桂跳び以下長手数ながら詰むので、2二同玉、続いて3四桂以下馬をはずして再び3四桂と据えて、2一玉となったところで、本局の主眼手順が出てきます。すなわち7六角打ちに対する6五飛合(途中㋑図)がその第一弾。他の合(たとえば香)ならば、同角と取って2二香、1一玉のとき1二歩が打てて早いので、飛の不利合駒の一手というわけです。
続いて5一飛で4一角合を強要し、再び5四角で4三飛合の一手となります。これで二段目の歩が移動したので、今度は2二飛から1二飛成と捨て、8二飛成、5二桂合(途中㋺図。7二桂合では同龍、同歩、2四桂、同歩、1三香以下詰)とさせて手駒を補充し、収束に入ります。
必ずしも趣向手順的な構成ではありませんが、角→飛→角→飛と大駒を変換していく手順にはダイナミックな躍動感があふれています。前期、美濃囲いの実戦型で、8三歩打、8四桂打の繰り返し手順まで含んだ力作(45年8月号、59手詰)でデビューし、惜しくも長篇賞を逃がした作者ですが、今期も中長篇分野で大活躍。いずれも候補作になって、衆目を集めました。



山本氏作は5手目同飛以下でも詰んでしまうことが既に指摘されています。


いつの間にかWikipediaの「詰将棋」項目、塚田賞歴代受賞作の表が埋まっていますね。
第82期以降の受賞作を紹介できるのはもう少し先のことになりそうです。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR