塚田賞作品の魅力(21)(近代将棋昭和54年3月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第21回も2つに分けて掲載します。
今回は第36期の受賞作を掲載します。
大型新人が相次いで受賞

第36期塚田賞受賞作家
短篇賞 西田克範
中篇賞 赤羽 守
長篇賞 昼間 勉
昭和45年7~12月号


この年、新鮮な感覚で構想的作品を目指す本格派の新人、赤羽守氏がデビュー。早くも入選5回目にして、入賞の栄に輝きました。
この頃の連載読物は、村山隆治氏の「詰将棋の能率的勉強法」で、詰手筋をいろいろな”形”に分類して解説されたもの。こうした入門記事が、数多くの素質豊かな新人たちを詰将棋の楽園に誘い入れました。このシリーズは最近書き直され、例題も新しいものを入れて「詰将棋をたのしむ本」として金園社から出版されています。


短篇賞 西田克範作


第36期西田氏作

西田克範作(45年12月号)
4二飛 2二角合 2一飛成 同玉 4一飛成 3一桂合 3二銀 1二玉 2三金 同桂
2一龍まで11手詰
塚田九段「今期は佳作ぞろいであった。その中でも、新人の本作が手の多い作品であり、ピリッと引きしまったところもあり、見事な出来ばえである。次点は田島暁雄作(9月号、15手詰)。3手目の2三金すては意表をついたもので話題作であろう」
初手4二飛と銀頭に打つのが短篇の味。他に手もないし、以下2一飛成から4一飛成で質駒奪取という野暮な目的ではありますが、限定打ちになっています。これに対して2二合駒は角か桂(他は同飛と切って簡単)。桂なら、1三金、同玉、3三飛成以下。1四桂の配置は、この手順で2二角合に限定しようというものです。
強烈なパンチの田島暁雄作よりも、このような小品を選ばれる塚田九段の詰将棋感は、短篇はあまりに難解すぎてはいけない、ということであったのでしょう。
作者「本作、簡素な棋形で新鮮な手順をと思って作ってみました。ただ2手目、角合に限定するため、1四桂の少々不自然な配置を余儀なくさせられたのが残念な気もします」


中篇賞 赤羽 守作


第36期赤羽氏作

赤羽 守作(45年11月号)
1二飛成 同玉 1五香 2一玉 1三桂 1二玉 2四桂 同桂 2一桂成 同玉
1二香成 同玉 1三角成 同玉 1二飛 同玉 2二角成まで17手詰
塚田九段「短篇にくらべると、中篇には有力な作品が少なく、さびしい限りであったが、本作が駒の打ち替え操作に新味が出ている。ネライ、手順ともに申し分ないので決定」
初手から1三桂とすると、1二玉、2四桂、同桂、2一桂成のとき1六桂と飛車を素抜かれて失敗します。そこで1二飛成から1五香と打ちかえるのが本局の主眼手。ここで1四飛の中合がありますが、同香、2一玉、1二香成、同玉、1三角成、同玉、1五飛以下で詰みます。1五香に2一玉と決ったところで1三桂から2四桂と蓋をして、あとは2二角を捌き捨て、1二飛と引き戻して爽やかな収束。明快な構想と繰り返し的な捌きの味が調和した好作です。
作者「内容は、不利感を思わせる飛香の打ち替えが主題となり、以後は捨駒の連発で駆けぬける軽作。この光栄な受賞で、これからの詰将棋(新しい味の)を創作するファイトをわき起こされたような気持もしてくる。僕はちょうど今年20才の成人。詰将棋とも一生つき合うことになるでしょう」


長篇賞 昼間 勉作


第36期昼間氏作

昼間 勉作(45年9月号)
9六香 9五桂合 同香 同金 同銀 同玉 8七桂 同金 9六歩 8五玉
9五金 7六玉 8七銀 同玉 8八金(途中図)

途中図(15手目8八金打まで)
第36期昼間氏作1

途中図より、7六玉 7七金 6五玉 6六金 5四玉 5五金 4三玉 4四金 同玉
2二角左成 5三玉 4四馬 6四玉 5五馬 7五玉 6六馬 8六玉 7七馬 9七玉
8八馬 8六玉 7七角成 7五玉 6六馬 6四玉 5五馬 5三玉 5四歩 4三玉
4四馬 4二玉 3三馬 3一玉 2二馬 4二玉 3三馬左まで51手詰
塚田九段「候補になった五作品とも、それぞれ優秀なものばかりであったが、中でも、新人の昼間作は奇抜な着想であり、構成力もたしかなものである。次点は黒川一郎作「矢来」(7月号、89手詰)。受賞作に較べて何ら遜色はない。むしろ作品の質は上であるかも知れぬが、いまさら賞というのも……ということである。他では大塚敏男作(12月号、71手詰)がベテランらしい作品で楽しめた」
一見して、玉から遠いところに角が二枚いるのが何か意味ありげに映りますが、序奏はこれにはあまり関係ないので、まず8四金をはがしてみます。続いて7六金もはがしたところで8八金(途中図)と打って本局の主題が始まります。この金は、実は1一角の見えない糸に繋っていて同玉とは取れません(取れば2二角左成があるからです)。この仕掛けが判れば、リモコン操作によって模型飛行機(金と玉)を何もない広場でとばせてみたい――という作者の遊びを、ともに楽しみながら4三玉まで追って行きます。4四金となればついに同玉と取らざるを得ず、2二角左成以下は第二趣向の追い戻し。9七玉で再びUターンして7七角成以下の追い上げで収束します。
1一角のリモコンによる空中遊泳というモチーフを、あまり凝らずに仕上げたところが解者に好印象を与える結果になりました。
作者「黒川、大塚氏など大家の作品をさしおいての受賞はおこがましい限りです。内容的には山田修司氏の二枚飛車による遠隔操作がヒントになっておりますが、本局の金の運用は私なりに苦心したつもりです」
作者の着想もとになった作品というのは、詰将棋パラダイス誌(43年5月号)に載った39手詰(参考図)

参考図 山田修司氏作


第36期参考山田氏作

のことで、7九馬、同玉、9七馬、6八玉、7九馬、6七玉、5七金、同と、7八馬……と、隠れた二枚飛車の威力で、金捨てをからませながら7筋を馬が単騎でのぼって行く趣向局です。同じような構想でも、駒種類をかえると、このように違った味の趣向手順になるという好例です。




赤羽氏作は「信濃路」第4番、参考図の山田氏作は「夢の華」第71番(「鯉のぼり」と命名)にそれぞれ収録されています。
赤羽氏の短篇が一世を風靡するのは昭和50年代後半(本記事は昭和54年作)の話ですね。

昼間氏作は15手目7七金でも詰むという指摘がありますが、玉方7九と追加で修正できるようです。
追加がなされた図で「近代将棋図式精選」や「三百人一局集」に収録されています。
詳細は(24)にて。
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