塚田賞作品の魅力(20)(近代将棋昭和54年2月号)②

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第20回の続きです。
今回は第35期の受賞作を掲載します。
第35期塚田賞受賞作家
短篇賞 竪山道助
中篇賞 池田 俊
長篇賞 OT松田
昭和45年1~6月号


この年の4月、本誌創刊20周年を迎えました。これを記念して、創刊号(昭和25年4月号)の縮刷版が別冊附録になりました。僅か百ページ、B6版、定価50円の発刊当時の面影を偲ぶにふさわしいプレゼントでした。詰将棋欄の”担当”は清水孝晏・金田秀信の両氏、その後も本誌は伝統的に優れた選者を擁して、詰将棋作品の質的向上に尽した功績は絶大なものがあります。
この期、清水孝晏氏が連載された「知られざる詰将棋」も、古図式探索への新らしい興味をそそる楽しい読物でした。


短篇賞 竪山道助作


第35期竪山氏作

竪山道助作(45年4月号)
3三銀 同銀 3一馬 同玉 3三龍 3二金 2二銀 4一玉 4二銀 同金
3一龍まで11手詰
塚田九段「今期は残念ながら、目をみはるような作品にはお目にかかれなかったが、その中で本作がよかった。3一馬捨ての筋はいい感じであり、無理のない形ででき上った点を評価したい」
紛れといえば、初手3一銀と打つくらいですが、金のそばにすり寄る3一馬の一手が、何ともいえない感じのよい手ざわりで、無理のない初形とも相俟って、易しい好作となっています。
作者は短篇専門のベテラン作家で、第15期の佳作賞に続く二度目の受賞です。


中篇賞 池田 俊作


第35期池田氏作

池田 俊作(45年5月号)
5四銀 3四玉 2五銀 2三玉 4一馬 ㋑3二桂合 1四銀 3四玉 5二馬 同馬
2五銀 2三玉 2四歩 同桂 1四銀 3四玉 4五金まで17手詰
塚田九段「本作と近藤作が最後まで争い、仲々決めにくかったが、本作の打ち歩を解消するねらいにいいものが含まれており、それを無理なく表現されたところを高く評価すべきである。近藤孝作(6月号、33手詰)は、大変巧妙な作品であり、受賞資格十分であるが、ねらいが長篇向きなので、いささか損をしている」
4手目2三玉となったところで、打歩詰の形。ここで4一馬と指せば3二桂合の一手。この形(途中㋑図)

途中㋑図(6手目3二桂合まで)
第35期池田氏作1

になると詰将棋に明るい人ならすぐに閃くものがあるはず。そうです筆者がかつて詰将棋パラダイス誌に(34年9月号)に発表して話題になった”打歩詰解消の新手筋――歩取駒の発生”です。
これに気がつけば、3二桂には触わらずに1四銀、3四玉の形にして5二馬と捨て、再び2五銀、2三玉とすれば、今度は3二桂が生きてきて、2四歩打が可能になり、解決します。
理屈のうえでは二番煎じですが、これを無理のない形で表現し、2五銀←→1四銀の往復の趣向的な味も加わって、爽やかな構成の作品になっています。
作者「本作、構想をたてた後、意外と短時間でまとまり、6二馬の好配置により完成に至りました。ねらいの明確さ、簡潔さを買われての受賞だと思います」


長篇賞 OT松田作


第35期OT氏作

OT松田作(45年3月号)
8九香 8七桂合 同香 8六桂合 同香 8五桂合 同香 8四桂合 同飛 7二玉
8二飛成 同龍 同香成 6一玉 7二成香 5一玉 6一飛 4二玉 4一飛成 5三玉
6五桂 5四玉 6六桂 5五玉 6七桂 5六玉 6八桂 5七玉にて途中㋑図

途中㋑図(28手目5七玉まで)
第35期OT氏作1

以下、4七龍 同玉 4八金直 3六玉 3七銀 4五玉 4六歩 4四玉 5六桂 4三玉
5五桂 4二玉 5四桂 3一玉 2二歩成 同玉 1三歩成 1一玉 1二歩 2一玉
2三香 3一玉 2二と 4一玉 3二と 同玉 4四桂 3一玉 4三桂 4一玉
5三桂まで59手詰

詰上り図
第35期OT氏作2

塚田九段「候補に選ばれた三作とも、それぞれ秀れたものであり、決定に迷ったが、やはり本作が内容的にまさるものがあり、これに決めた。桂を主題にした作品の中では、傑出したものの一つではないかと思う」
四桂の中合、四桂の並べ打ち、そして最後は四桂詰と、一局に三種類もの”四桂趣向”をとり入れた、きわめて贅沢な作品です。
最初は8九香に対する”四桂中合”から。作意の通り、8七桂から順に中合する以外はいずれも、8四銀、9四玉、9三銀成のとき(同玉なら、9二と、同玉、9三歩、9一玉、9二飛、8一玉、7一歩成、同玉、6二銀成、同玉、8二飛成、7二合、7三香成……で詰みます)、9五玉または8五玉のどちらでも詰む――という単純ながら巧妙な仕掛けになっています。
そして最後の8四桂合は同飛と取るしかなく、5筋まで追ってきて、今度は6五桂以下縦の並べ打ち(途中㋑図)。続いて4七龍と切り、4八金直と限定してあるのは、つぎの3七銀のときの変化に備えたもの。4四玉まで追い戻して、今度は桂がピョンピョンと跳ね出し、最後は4一玉の位置で完全な吊し詰め(詰上り図)。応手の手順前後もない、変化のスッキリ割り切れた”四桂詰”です。
この期は、2月号の昼間勉作(香先香歩の構想と斜四桂跳び捨ての趣向の組合せ、45手詰)、4月号の鮎川哲朗作(歩からの順列七種合、67手詰)、5月号の黒川一郎作「蹴鞠」(銀と歩の趣向、113手詰)など、長篇に傑作が目白押しでした。その中で、前期に続いての受賞は見事。新人ばなれしたその作図技術は、”怪人”とまで騒がれたものです。
作者「当地は、日本最初の花火三尺玉の打ち揚げを行った土地でありまして、花火の手打ちの場合、三段打ち、五段打ちと呼ばれているものですから、”桂四段打ち”という呼び方、それ自体が私の主題となりました」



OT氏作は15手目7一成香及び7一飛でも詰んでしまうようです。
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