塚田賞作品の魅力(19)(近代将棋昭和54年1月号)②

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第19回の続きです。
今回は第33期の受賞作を掲載します。
第33期塚田賞受賞作家
短篇賞 谷口 均
中篇賞 高橋和男
長篇賞 近藤 孝
昭和44年1~6月号


この年、1月号で金田秀信氏が入選百回に達しました。北原義治、植田尚宏、柏川悦夫の各氏の続く4人目の偉業です。金田氏は短篇専門で、その軽快な作風は塚田流に近く、初心者に詰将棋の愉しさを広める点でも大いに貢献されました。
金田氏の入選百回を契機に、本誌では入選百回以上に達した4氏を”無鑑査作家”に指定し、投稿された作品は無審査ですべて掲載することを決めました。


短篇賞 谷口 均作


第33期谷口氏作

谷口 均作(44年5月号)
4八角 3七歩成 2七銀 同玉 3八銀 同と 4五角 同金 2六金まで9手詰
塚田九段「今期はこれと思う作品が意外に少なかった。その中では本作が素朴ではあるが、感じの良さが買える。入玉形にありがちなうっとうしいところがない」
すっきりした配置の入玉型。4八角という地味な着手にはじまり、3七歩成とさせて、さらに3八とと進ませる手順が主眼で、筋違いの二枚角の長い足を活用する手筋の作品です。
作者「本作、割合短時間で簡単にまとめることができ、無理のない素直な手順と棋型で完成させたため、強烈なすご味には欠けているでしょうが、序の二手が追加できて、一応はこれでまずまずと感じました」


中篇賞 高橋和男作


第33期高橋氏作

高橋和男作(44年3月号)
1七歩 同玉 2八銀 1六玉 1七銀 同玉 2四香 1六玉 1七歩 1五玉
1四と 同玉 1三銀成 1五玉 2二香成 4二馬 1四成銀 同玉 2三飛成 1五玉
1六歩 同玉 1七飛 同玉 2七龍まで25手詰
塚田九段「短篇に較べて、この部門は良い作品が目白押しで、決定に手間どったが新人高橋和男作を推したい。香の運用が大変面白く、作品にひとつのネライを打出すということは貴重である。他では渡辺三郎作(6月号、23手詰)が簡潔な形で妙味ある発想(打歩詰に関係ない玉方飛先香後の合駒)を実現している」
玉の行動範囲は1筋だけ。迷うところもない棋型ですが、2四香から2二香成と、二度もあき王手で香を移動させるねらいは、打歩詰回避や2二銀の邪魔駒除去の綾もからませながら、鮮やかに構成されています。
初入選で中篇賞を受賞し、スケールの大きい新人登場という期待に違わず、作者はその後、構想的中篇で数多くの好作を発表されました。
作者「本作の最初の構想は”打歩詰を回避する角道遮断”と、その紛れとして”7手目2六香なら2七歩の捨て合で逃れ”というのでしたが、非常に複雑になるので、この配置となりました。初入選で受賞とは、全くついています」


長篇賞 近藤 孝作「桂浜」


第33期近藤氏作

近藤 孝作(44年6月号)
8一歩成 6一玉 7一金 5一玉 6一金打 4一玉 5一金打 3一玉
4一金打 2一玉 1二歩成 同玉 1三飛 2一玉にて途中㋑図

途中㋑図(14手目2一玉まで)
第33期近藤氏作1

㋑図より、3一金 同玉 1一飛不成 2一桂合 4一金 同玉 2一飛不成 3一桂合
5一金 同玉 3一飛不成 4一桂合 6一金 同玉 4一飛不成 5一桂合 7一と
同玉 5一飛不成 8二玉 8一飛不成 7三玉 8三飛不成 7四玉にて途中㋺図

途中㋺図(38手目7四玉まで)
第33期近藤氏作2

㋺図より、7五歩 6四玉 5六桂 同香 6五歩 5四玉 4六桂 同香 5五歩 4四玉
4五歩 3四玉 2六桂 同香 3五歩 2四玉 1六桂 1四玉 1五歩 同玉
1三飛成 1四金 同龍 同玉 2四金 1五玉 2五金 1六玉 2六金 1七玉
3九角 同飛成 1八香まで71手詰
塚田九段「今期は若島正、山田修司両有力作品が不完全で失格となり、北原、近藤両君にしぼられたが、内容的にみて本作に軍配を上げたい。バラエティに富んだ趣向を破綻なくまとめた力量は受賞価値十分であろう」
作者にとっては5度目の受賞。最初の第6期の受賞作が9回もの角不成をテーマにした長篇でしたが、本作は7回の飛不成を趣向手順と組合わせて軽妙に仕上げた快作です。
最初は一段目に金を並べ打ちして右へ追い途中㋑図から折り返して、金を捨てて桂合を入手する軽趣向を反復しながら生飛車で追い戻します。もし成っていると途中㋺図で8三龍となり、6四玉以下作意と同様に進めても一歩不足で詰みません。㋺図のように8三飛不成なら7四玉の一手となって7五歩が入手できる――という訳。以下は桂捨てで退路を開きながら、歩を並べ打ちして右へ追い、最後は1三飛成で合駒させた金を取ってきれいに収束します。
本作は、変化や紛れも殆どなく、わかり易い趣向手順に飛不成を添えてあっさり仕上げたところ、知的浪漫派とでもいうべき作風で”桂浜”の題にふさわしい佳品です。
作者「桂浜は月の名所です。飛不成を星に見立てた訳ですが、感じは出ていませんか?金打ちで寄せていって飛不成で返す、寄せては返す波の音。そんな感じが出ていれば幸いです」
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