塚田賞作品の魅力(19)(近代将棋昭和54年1月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第19回は2つに分けて掲載します。
今回は第32期の受賞作を掲載します。
戦後生れの作家続々と登場

第32期塚田賞受賞作家
短篇賞 株本正貴
中篇賞 山田修司
長篇賞 駒場和男
昭和43年7~12月号


第29期の谷口均氏、第30期の若島正氏をはじめ、この期には株本正貴氏、続いて高橋和男氏と、戦後生れの新進作家が次第に塚田賞に登場するようになりました。他にも、藤江和幸、昼間勉、本郷昌幸、星野健司……といった同世代の有力作家がこの頃に初登場しています。


短篇賞 株本正貴作


第32期株本氏作

株本正貴作(43年7月号)
5一歩成 3二玉 3四飛 2二玉 3一飛成 同銀 2三金 1一玉 1二金 同玉
4五馬 1一玉 1二歩 2二玉 2三馬まで15手詰
塚田九段「3四飛から3一飛成に新味があり、棋形・手順ともまず申し分ない」
3手目の飛打は3五あたりが第一感ですが3三桂合でダメ。3四飛の限定打ちに2二玉と決ったところで、3一飛成とぶち捨てるのが大英断です。3四飛の限定打から直ちに3一へ成り捨てる――この二手一組の手順の新鮮な味が、受賞のポイントになりました。
作者「近藤孝氏の作品にみせつけられて仕組んだのですが、やはり未熟さを感じさせられました。担当者の森さんのご指針で、すっきりしたものになりましたが、感じも大分変わりました」


中篇賞 山田修司作


第32期山田氏作

山田修司作(43年11月号)
4四銀 同歩 4五金 同歩 4六金 同歩 3六馬 2四玉 2五歩 同飛
同馬 同玉 2六飛 1五玉 5五龍 3五角合 同龍 同歩 5一角 4二桂合
同角成 同馬 2七桂まで23手詰
塚田九段「作品のテクニックあるいは重量感などからみて、本作が群を抜いている。作者の詰将棋に対する”眼”の置きどころが優れている証拠であろう」
初手4四銀で同歩と吊り上げて、まず3三への退路を断つのは必然。4四歩となれば、作者名からして、いわくありげに並んでいる二枚の金を続けて歩頭に捨ててみたくなります。これを省いて同じように追った場合には参考図

参考図(5五龍まで)
第32期山田氏作1

のときに4五歩と突き捨て、同龍、3五角合、同龍、同歩、5一角に対して、4二歩合が可能になって逃れる――もし4五歩の突き捨てを見落せば作意手順と同様に詰み、錯解に陥る――という構想なのです。
ところがこの理屈は判っても、作家としては、4五金を省いて4六金とすると逃れ4五金、同歩としておけば2四玉の変化が詰むという手品のような手順がどうして成立するのか不思議です。これは、2五歩、同飛、同馬、同玉、3六金、1六玉、2六金、1七玉、2七飛、1八玉のとき、5八龍と引けるか引けないか、というのがそのタネ明かし。また4五金で2四玉の変化には、3四金、同玉、2六桂と跳ね出すあたり、いつもながらの効率的な駒配置に感心させられます。作者が中篇詰将棋の本分としておられる”謎解き”を論理的に、しかも明快に構成しただけではなくその鍵を”歩頭三連捨て”という味のある手順に秘めたあたり、さすがに構想派の領袖にふさわしい名作です。
作者「この作は、詰棋ずれした人なら初手4四銀打に2四玉とかわす変化で、ほぼ作者の企みを読みとってしまうかも知れません。しかし、その反面、逃れ順を避けるため歩を吊り上げておくテーマと、歩頭三連捨ての味など、”作りもの”としての面白味を見てくれる人も中にはいるだろうと期待し、こちらに重きをおいて構成した訳です」


長篇賞 駒場和男作


第32期駒場氏作

駒場和男作(43年12月号)
8一歩成 9二玉 8二と 同龍 同と 同玉 8一と 同玉 6一飛 9二玉
6二飛成 9一玉 7一龍 9二玉 9三歩 同玉 8五桂右 9二玉 6二龍 8一玉
9三桂 9一玉 7一龍 9二玉 7二龍にて途中Ⓐ図

途中Ⓐ図(25手目7二龍まで)
第32期駒場氏作1

Ⓐ図より、9三玉 8五桂 8四玉 7三龍 8五玉 9七桂 9六玉 7六龍 9七玉
8六角 8八玉 7七龍 8九玉 8七龍 7九玉 9七角 6九玉 6七龍 5九玉
8六角 4九玉 6九龍 3八玉 3九歩 2九玉 3八歩にて途中Ⓑ図

途中Ⓑ図(51手目3八歩まで)
第32期駒場氏作2

Ⓑ図より、同玉 3七金 同玉 3九龍 2六玉 5三角成 同龍 2七銀 2五玉
3五龍 1四玉 1五香 2三玉 3四金 2二玉 2三歩 同馬 同金 同龍
3一角 同金 同銀 同玉 4二金 2二玉 3二金 同龍 2三歩 同玉
2四歩 2二玉 2三銀 同龍 同歩成 同玉 2四飛まで87手詰
塚田九段「作品のネライが一貫しており、それを狂いなく押し通した点は充分買える。右辺の配置にやや強引なところもあるが、作品の性質上やむを得ない」
かつて詰将棋パラダイス誌(32年6月号)に、”スーパー詰将棋”と題して発表された森茂氏の傑作(75手詰)で、二歩と行き所のない駒は打てないことを逆用して、詰方は龍で追い回し、最後は龍一枚だけで詰上るという珍品(参考図)がありました。

参考図 森 茂作


第32期参考森氏作

本作もⒷ図に至る前半部分は、同じように二歩禁と八・九段目に桂合ができないことを徹底的に利用した龍の単騎追いが主題ですが桂香の配置をはじめ、全体に殆ど無理のない棋形になっているために、つい合駒不能の特殊状況を忘れさせて切れ筋と思わせるように構成したところが作者の狙いでしょうか。
作者としては異色のテーマですが、序盤のミニ龍鋸と桂捌きの綾や、この構想を成立させるために盤上に配置した残り駒をⒷ図以降巧妙に捌いていくところなど、やはり鬼才の片鱗をうかがわせる力作です。



山田氏作は「夢の華」第72番、駒場氏作は「ゆめまぼろし百番」第2番(「妖棋伝」と命名、左右反転)にそれぞれ収録されています。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hirotsumeshogi

Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR