塚田賞作品の魅力(18)(近代将棋昭和53年12月号)②

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第18回の続きです。
今回は第31期の受賞作の内、短篇賞・中篇賞作を掲載します。
第31期塚田賞受賞作者
短篇賞 北川邦男
    吉田 健
中篇賞 植田尚宏
長篇賞 八巻広丞
特技賞 田中鵬看
昭和43年1~6月号


お正月に、本誌の主催で「新春詰将棋座談会」が開かれました。出席者は有田辰次、門脇芳雄、金田秀信、黒川一郎、駒場和男、七條兼三、森田正司、森敏宏(司会)の各氏。「詰将棋よもやま話」ということで、最長手数作品・解答王・大道棋・双玉の起源・趣向プロット・短篇・曲詰……と楽しい話題に花が咲きました。
この期の塚田賞は吉田健、八巻広丞の両氏が初受賞の栄に輝きましたが、どちらも相当の実力作家であり、新人がやや不作の年でした。


短篇賞 北川邦男作


第31期北川氏作

北川邦男作(43年2月号)
2八銀 1八玉 1九銀 同玉 3七馬 同馬 1七桂 1八玉 1九歩 同馬
同飛 同玉 7三角 1八玉 2八角成まで15手詰
塚田九段「最近の短篇を拝見すると、相も変らず手筋物の作品が多い。その点、受賞された吉田、北川両君のは、それぞれ独得の作風というか個性を持っている。それが手筋から脱却して、手順に何かをうちだす。この何かを持つということは作家にとって重要なことだ」
1七銀を除去しておいて、3七馬、同馬から1七桂の逆跳ね。質駒のように見える3七馬を取ると2九角というすばらしい捨合いでどうあがいても打歩詰になります。1七桂とわざと馬を残して逆に跳ねるのは、その利きによって1九歩打を可能にするためで、あたかも手品のような奇手です。作者お得意の短篇構想で、簡潔な入玉型にまとめた腕は見事な”芸”といえます。
作者「構想は柏川氏の二番煎じですが、邪魔駒銀と紛れ順の好防手でやや救われているという所。最近の短篇には構想型の作品が少なく、その辺を買われたのでしょうか」
柏川氏作というのは「駒と人生39番」(参考図=8五飛、9六玉、9七銀、同玉、9五飛、同香、8五歩、7五角、7六香以下17手詰)で、取れる7五角を取らずに7六香と短く使って打歩詰を避けるという、珍しい構想の傑作のことです。

参考図 柏川悦夫氏作
「駒と人生」第39番(詰棋界昭和28年1月号)


第31期参考柏川氏作


短篇賞 吉田 健作


第31期吉田氏作

吉田 健作(43年2月号)
6七金引 同銀不成 8六角 7八玉 6八金 同銀不成 6九角 同銀 7六龍
まで9手詰
40年ごろから華麗な短篇作品で彗星の如く登場されましたが、実は21年の「将棋研究」が初入選というベテラン。復帰後は入玉図を中心に、行き詰まりを云々されていた短篇分野に新風を吹き込まれました。
本作は二度の不成を織りまぜながら、玉方銀を翻弄するのが主題で、古典的なテーマを近代的な入玉型で表現した好作です。
作者「作風だなんて、偉そうなことがいえる柄でもありませんが、これは良い点も悪い点も併せて、いかにも私らしい作品だといえそうです。いわゆる現代風でないだけに、最近の傾向から見て、とても”塚田賞”とは縁遠いと思っておりました。何よりも、この作品で受賞したことが歓びを倍加します」


中篇賞 植田尚宏作


第31期植田氏作

植田尚宏作(43年5月号)
3五角 2六歩 2八金 同玉 3八金 2九玉 1九金 同玉 4六角 2八香
同角 2九玉 1八銀 同玉 1九香 2九玉 2七金まで17手詰
塚田九段「今期は仲々つぶぞろいで長考を余儀なくされたが、その中では植田作がやや優れていると見られる。初手の軽い伏線から最終手の2七金のあき王手が一風変っており仲々楽しい手順。次点は中川穎太郎作(7月号、21手詰)、若島正作(同、27手詰)、の両作で、新人ながら興味ある手順を抽出している」
初手3五角で2六歩合をさせておくのがさりげない伏線手。後の4六角に2八歩合をされると、二歩のために1九へは打てないからです。軽い構想を入玉型で造作なく実現した小品で、いつもの植田流とは異色の作といえます。
作者「ニガ手の入玉図での受賞とは全くついています。とにかく目先の変ったものをと思い作図したのが本作で、初手工作で後の歩合をさけるのがイササカ工夫したところですが、この手は何気なくやる手なので、効果があったかどうかというところ」



北川氏作は「渓流」珠玉篇第70番、吉田氏作は「嬉遊曲」遊第26局にそれぞれ収録されています。
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