塚田賞作品の魅力(18)(近代将棋昭和53年12月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第18回は3つに分けて掲載します。
今回は第30期の受賞作を掲載します。
期待の新人若島氏登場

第30期塚田賞受賞作家
短篇賞 近藤 孝
中篇賞 若島 正
長篇賞 山田修司
昭和42年7~12月号


この期は、どういう訳か長篇の発表局数が少なく、不作でした。
これに反して短篇分野に、珍らしく充実した作品が集中し、大いに賑った。とくに、中長篇が専門のはずの近藤孝氏と油の乗り切った谷口均氏が、毎号のように新鮮な感覚の短篇で競い合ったのが印象的でした。
こうしたベテランの活躍に互して、期待の新人、若島正氏が中篇で受賞。初入選の破天荒氏(現解説者の伊藤果四段)も短篇賞の候補にのぼるなど、「京都の三羽烏」が本誌に華麗なデビューをした年でもあります。


短篇賞 近藤 孝作


第30期近藤氏作

近藤 孝作(42年11月号)
3一飛 同金 2三飛 3二玉 2二飛成 同玉 2三金 2一玉 3一と 同玉
3二金打まで11手詰
塚田九段「今期は仲々つぶぞろいで選考に大いに迷った。本作は、ねらいの2三飛から2二飛成が実にすばらしく、これが短篇であるという好見本。今期の近藤氏の活躍は目をみはるものがあり、他の二作(9月号と12月号、いずれも13手詰)も有力な作品で、いずれが入賞してもはずかしくない出来である」
初手3一飛は打診の手。同金に2二飛打では同金と逃れます。そこで2三飛打、3二玉としておいて2二飛成と捨てると同金とは取れません。2三飛打に2二合なら3一と、同玉、2二飛成以下。この2三飛打から2二飛成捨てが、いかにも正統的な短篇の妙味で、これを簡素な形で表現したあたりが、作者のセンスのよさです。
作者「型は簡潔だし、2三飛をすぎ2二飛成とする手が意外に新鮮味があると思う。何はさて、苦手の短篇での受賞なので自信がつきました。こいつは春から……というところです」


中篇賞 若島 正作


第30期若島氏作

若島 正作(42年11月号)
2二飛 1三玉 2四角 1四玉 1二飛不成 2三玉 3二飛成 1四玉 1二龍 同香
1五歩 2三玉 4二角成 2四歩合 同馬 2二玉 2三歩 1一玉 3三馬 同桂
2二歩成まで21手詰
塚田九段「実戦形からかような巧い手順が実現したことに、まず敬意を表したい。少々アッサリしているところもあるが、これ以上手を入れることは考えない方がよい。今後の活躍を見守りたい」
5手目(途中図)の1二飛不成が本作の主眼手。

途中図(5手目1二飛不成まで)
第30期若島氏作1

これを成っては1三歩合で逃れます。不成に1三歩合なら1五歩打が可能になり、2三玉、3二飛成、同玉、4二角成まで。本手順でも3二飛成の軽手があって、1四玉、1二龍となり、今度は1三歩合なら、同角成、同桂、2三龍以下の早詰みです。つまり、最初の1二飛不成は2三歩を消去させるのが目的のシャレた手だった訳です。この”不成による邪魔駒消去”という珍らしい手筋は、第24期塚田賞を得た山田修司氏作(33手詰)が元祖ですが、本作はこのような新奇な構想をしごく簡潔な実戦型で表現したもので、棋力と幸運が合わさって生まれたといえます。
主題のあと、歩中合や3三馬捨ての収束も鮮かで、好形構想の秀作といえましょう。
作者「私の作図法は”モンタージュ逆算”ですが、本作はかなり前の柏川悦夫氏作(確か1二龍に1三桂合の筋だったと記憶)にヒントを得て、”飛生による2三歩消去”というテーマを抽出し、以下正算で収束を求めた図です。原図はもっと複雑だったのですが、愚考の結果、極端に圧縮しました。角の成場所が限定でないという欠点もありますが、私自身としては”快心作”ならぬ”完成作”と思っています」


長篇賞 山田修司作


第30期山田氏作

山田修司作(42年7月号)
8一歩成 同玉 8二歩 9一玉 9二歩 同玉 9三歩 9一玉 8一歩成 同玉
9二歩成 同玉 8三と 同飛 同馬 Ⓐ同玉

途中Ⓐ図(16手目同玉まで)
第30期山田氏作1

9五桂 9四玉 8四金 同玉 9六桂 9五玉 8五金 同玉 9七桂 9六玉
8六金 同玉 Ⓑ8一飛

途中Ⓑ図(29手目8一飛打まで)
第30期山田氏作2

9七玉 8八金 9六玉 8七金 9五玉 8六金 9四玉 8五金 9三玉 8四金 9二玉
8三金 8一玉 7一歩成 9一玉 8一と 同玉 7二香成 9一玉 8二金まで49手詰
塚田九段「今期は長篇は不作で、さびしい限りであった。本作は、狭い範囲でこれだけの内容をすっきり構成されたあたり、作者の力量が感じられる」
序盤はこまやかな歩の捌き。その意味(最初の8一歩成は、これをやっておかないと、9二歩から9三歩のときに、同飛、同馬、同玉、6三飛、8二玉、8三と、9一玉で6一飛成ができない。二度目の8一歩成捨てについては後述)はよく判らないままに、指の調子で運んでしまいます。ともかく途中Ⓐ図以下は金取りの桂跳びの軽趣向をくり返し、途中Ⓑ図になったところでよく8一飛の遠打ちが本局の主眼。この意味は金を追い上げていけば収束で判ります。
僅か三筋の間の無理のない駒配置で、飛車の遠打ちと、それを可能にする8二歩の消去(二度目の8一歩成)の構想を、軽い趣向の往復手順でつないだところ、作者としては手すさびの作品かも知れませんが、易しくて楽しい長篇詰将棋の好見本といえます。
作者「ご覧のように、ごく軽い長篇で、別に新しい構想でもありませんが、伏線・軽趣向・遠打・還元玉・ミニ煙などのモロモロを縦三筋の枠内にキチンと盛込むのが狙いでした。結局9九とが残ってしまい、その意味で快心作にはなりませんでしたが、まずまずの出来と思っています。いたずらに長手数、難解作のみが尊きに非ず、垢抜けした構想で、洒落たセンスの軽量長篇が近代詰将棋の一つの分野として、もっと採り上げられてよいと思います」
(9九とは、19手目8四金のところ8五金、同玉、9七桂以下の余詰防止の駒です)



若島氏作は「盤上のファンタジア」第55番、山田氏作は「夢の華」第66番にそれぞれ収録されています。
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