塚田賞作品の魅力(17)(近代将棋昭和53年11月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第17回も2つに分けて掲載します。
今回は第28期の受賞作を掲載します。
新進、谷口均氏の初受賞(29期)

第28期塚田賞受賞作家
短篇賞 植田尚宏
中篇賞 北川邦男
    桑原辰雄
長篇賞 北原義治
昭和41年7~12月号


この年は「自画自賛」というシリーズがあり小西逸生、北原義治、岡田敏、黒川一郎、湯村光造、藤井国夫、森田正司、田中輝和、山中龍雄、植田尚宏、駒場和男、清水孝晏の各氏が登場しています。それぞれ最も自慢の作品を一局づつ披露する楽しい企画でしたが、惜しいことに一年で途絶えました。


短篇賞 植田尚宏作


第28期植田氏作

植田尚宏作(41年11月号)
2三金 同玉 2一飛成 2二金寄 3四角 1三玉 1二角成 同金 2四金 同角
1四歩 同玉 1二竜 1三合 2五金まで15手詰
塚田九段「2二金寄など手順に味があり、作者のものとしては珍らしく引きしまった感じが見られる」
“短篇の植田”といわれながら、塚田賞には昭和29年の煙詰で長篇賞を受けてはいますが、お得意の短篇では初めての受賞です。氏の短篇は、いずれも練り上げられたソツのない手順で水準以上の作品ばかりなのに、不思議なことでした。
本作は初手の2三金打がヤマ(同金なら、1一飛成、1二合、1四歩以下の詰み)で、同玉、2一飛成に2二金寄が後の1二角成捨てとのからみで、味わいのある手となっています。初形1四玉型で2五金打から始まっておれば、最後の2四金捨てがさらに妙味を加えていたかも知れません。
作者「本作、別にこれといった妙手はありませんが、一個一個の配置にムダがなく、すっきりでき上った点を買ってくれたものと思います。ヘタな鉄砲がようやく当った感じでひとりエツに入っているところです」


中篇賞 北川邦男作


第28期北川氏作

北川邦男作(41年7月号)
5二飛 2二歩合 同飛成 同玉 2三歩 1二玉 5二飛 4二飛合 同飛成 同角
3二飛 2三玉 4二飛成 3四玉 2三馬 同玉 1二角 1四玉 1五歩 2四玉
2二竜まで21手詰
塚田九段「北川作と桑原作。全く正反対な感じの作品で、それぞれ捨て難い味があって伯仲している。北川作は二度にわたる5二飛打、合駒の奇抜さなど、少い駒数でよく処理したものだ」
5手目2三歩打に1一玉が3一飛、2一銀合以下きれいな17手詰。1二玉は簡単……と見せかけての陥穴です。ここで5二飛打に4二飛合が玉方”不利合駒”の妙防。すなわち4二香合なら、同飛成、同角、2二歩成、同玉、2四香以下で詰みますが、これが2四飛なら2三歩中合で逃れ……という含みです。2六銀の配置と収束の処理に甘さがありますが、マニア好みの構想を簡潔にまとめたところは、さすがです。
作者「もう少し序をつけて2六銀に二重の意味を持たせるとか、4手目までを省くとかの案もありますが、難解性はこの作品には不要ですし、5二飛打のくり返しもプラスの面があると思います。ところで、本局のように有名手筋で詰むように見せかけて、実は案外な手順で詰む……という作品は、もっと作られてよいのではないでしょうか」


中篇賞 桑原辰雄作


第28期桑原氏作

桑原辰雄作(41年9月号)
3四馬 同銀 5一角 2二玉 3二金 2三玉 3五桂 1二玉 2二金 同玉
2三歩 同銀 同桂成 同玉 4三飛成 3三歩合 3四銀 2四玉 3三竜 1五玉
2三竜 1六玉 1五角成 1七玉 1八歩 同玉 1九玉 同玉 3七馬 1八玉
2八竜まで31手詰
塚田九段「一方、桑原作も形よし。手順これまた2三竜から意表外の詰上りなど、玄人好みの構成ぶりで、両作受賞ということになった」
この作者のような作風を”力戦派”と私は名付けています。実戦型好形で詰み筋のないような形に仕上げる……初手3四馬や15手目4三飛成からの収束などは、その典型でかなりの棋力がないと読み切れません。このような詰将棋は、前題(北川氏作)とは対照的で、指棋派の人に好まれる作品といえます。
作者「形の良さと4三飛成から2三竜迄の飛の動きなどが選考の対象になったものと推察します。中篇作は中だるみを生じ易く、本作の2三歩から一連の駒交換は、ややもすると安易に流れた平凡手のようですが、逆にいえば、中篇故に救われ手順の流れに自然に溶けたようです」
傍点は筆者が付したもの。さすぎに作図技術のポイントを衝いておられます。


長篇賞 北原義治作


第28期北原氏作

北原義治作(41年12月号)
1六金 同歩 3五飛不成 1四玉 2六桂 1三玉 2二角成 同飛 3三飛不成
2三角合 2五桂 同歩 1四歩 2四玉 3四飛成 同角 同銀成 1五玉 Ⓐ5一角

途中Ⓐ図(19手目5一角打まで)
第28期北原氏作1

3三馬 2七桂 2六玉 6二角成 3六玉 3七金 4五玉 3五馬 5四玉 5三馬
6五玉 6六と 同馬 Ⓑ5四馬

途中Ⓑ図(33手目5四馬まで)
第28期北原氏作2

同玉 5五金 同馬 同銀 5三玉 6三桂成 4二玉 3三角 3一玉 2二角成 同玉
1三歩成 同香 2四飛 3一玉 3二歩 同玉 2三成銀 4二玉 5三成桂 同玉
5四銀 5二玉 Ⓒ6三香成

途中Ⓒ図(57手目6三香成まで)
第28期北原氏作3

4一玉 4四飛 4二角合 5二成香 同玉 4三飛成 5一玉 6一と 同玉
6八香 同と 6三竜 5一玉 5三香 同角 同竜 5二角合 3三角 6一玉
5二竜 同玉 6三角 6二玉 7二歩成まで81手詰
塚田九段「今期の長篇は近来にない充実した作品ばかりであった。10月号の柏川悦夫氏作(49手詰。四香銀替えの軽趣向)、11月号の有田辰次氏作(41手詰。香遠打の変化伏線構想)、12月号森敏宏氏作(59手詰。実戦型七種合)と本作。四作とも違った味があり、全部10点満点。非の打ちどころがない作品ばかりだ。大いに迷ったが、中で一番苦心していると思う北原作に最高努力賞という意味で決定した。この作は、作者の根をつめたあとが如実に現われている」
序盤は飛不成などを交えて、作者らしいキメの細かい手順が続き、5一角打(A図)で3三馬という”移動中合”の絶妙手がとび出します。これは後に4四、5五、6六へ利かすための受けの妙手です。ところが作品としてはここから後のまとめが大変……という構成。2二飛まで逆用して、さすがに粘りのある捌きを見せてくれますが、あまりの長手数のためにかえって主題の印象を薄める結果になってしまったようです。ともあれ労作には違いありません。
作者「発想から約十年、収束が作れずに散々苦労し、長らく”未完成詰将棋”としてお蔵にしてありました。そのため前半に比して後半は全然不満ですが、内容は長篇作の傾向に一つの反逆心を抱いた流れを狙った、若い頃の作風なんかを思い出させてくれます」



北川氏作は「渓流」第57番、桑原氏作は「妙義図式」第70番にそれぞれ収録されています。

北原氏作は73手目6二とや6二龍でも詰んでしまうようです。
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