塚田賞作品の魅力(16)(近代将棋昭和53年10月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第16回も2つに分けて掲載します。
今回は第27期の受賞作の内、特別賞以外の受賞作を掲載します。
ベテランの活躍つづく

第27期塚田賞受賞作家
短篇賞 棋村迷人
中篇賞 山中龍雄
長篇賞 柏川悦夫
特別賞 北原義治
昭和41年1~6月号


この年、新年号から山田修司氏の「名局リバイバル」の連載が始まりました。「年とともに人々の記憶から消え去り、忘られていく詰棋作家の努力の結晶のうち、せめて良い作品の一部だけでもピックアップし、さらに戦後の詰棋界の推移・発展の過程などもあわせて記録にとどめたい――」という趣旨で、戦後の中・長篇の名作・傑作を、毎月二、三局づつ紹介されました。この連載は三年間続き30年代はじめ頃までの、ちょうど百局で終りましたが、その名解説は、”戦後興隆期の詰棋史”としても、すばらしい読物と評判になったものです。


短篇賞 棋村迷人作


第27期棋村氏作

棋村迷人作(41年5月号)
7一飛 9二玉 8三銀 9三玉 9一飛成 8四玉 9三竜 同玉 8五桂 8四玉
6二馬まで11手詰
塚田九段「詰め難い味があり、ユーモラスな感覚がある。有田辰次氏作(5月号、11手詰)と甲乙つけにくいが、競馬でいえば”ハナの差”で決定した」
本名は二瓶誠ですが、鳥越九郎のペンネームの方が有名かも知れません。詰棋界きってのユーモリストで、他にも常盤兼成今田藤四郎伊佐坂棋印久留島義礼……といった珍妙な名前の持主です。
本作は、何となく捉えどころのないような棋形に加えて、初手7一飛に対する8二玉、7二角成……の変化や、3手目8三銀以下の意外な詰上りが受賞のポイントでしょうか。
作者「本局、やぶにらみの詰上りがねらいで、収束からあぶり出し式に戻したもの。M氏が名補正をして下さったのが幸運でした」


中篇賞 山中龍雄作


第27期山中氏作

山中龍雄作(41年3月号)
1八香 2三玉 2七香 3三玉 3六香 4三玉 4五香 5三玉 6五桂 5二玉
5四飛 6三玉 7三角成 5四玉 6三角 6五玉 7四角成 5四玉 6四馬寄 4五玉
5五馬 3六玉 4六馬 2七玉 3七馬 1八玉 2八馬まで27手詰
塚田九段「短篇に較べて、この部門は優秀作品が目白押しで選題に迷ったが、結局、作品的に秀れている本作に決めた。作者のねらいがこれくらい的確に表現できれば、文句のつけようがない」
四香を斜めに並べておいて、この階段を昇ってくる――という明快な趣向を、簡潔に構成した作品。この趣向に似た手順は、ずっと以前に、佐賀聖一氏や黒川一郎氏の作品にありましたが、このように香の離し打ちに対して玉が横すべりするところが新らしく、スイッチ・バックのからくりも巧妙で、そのキーとなった6五桂まで消していくのは鮮やかです。初手1八香に対して2二玉の変化(3二歩成、同玉、3四香、3三桂合、同香成、同玉、3五香、2二玉、2四香、2三歩合、同香成、同玉、1五桂以下)を持たせるあたりは浪漫派とは一味ちがった作風です。
作者「作図に当っては構想の特徴から、使用駒最少、初型美と持駒との調和、流動的な詰手順、綺麗な詰上りを目標としたところ、金銀不使用で完成し、しかも簡潔にまとまったので、典型的な構想趣向の快心作となった」


長篇賞 柏川悦夫作


第27期柏川氏作

柏川悦夫作(41年3月号)
4七香 4六歩合 同香 同角 4三と 4五玉 4四と 同玉 4五歩 同玉
5七桂打 同角成 同桂 5六玉 6六金 ㋑5七玉 5六金 同香 Ⓐ1三角 同飛成
9三角 同竜 5八金 同玉 1八飛成 6九玉 7九金 同玉 8八銀左 8九玉
7八銀 9八玉 9七金 同竜 8七銀右 同竜 同銀 同玉 8八竜 9六玉
9七飛 8五玉 7六銀 同玉 7七竜 8五玉 7四竜 8六玉 7七竜 8五玉
8七飛 9四玉 7四竜 9五玉 8五竜まで55手詰
塚田九段「有力な対抗馬であった駒場和男氏作(6月号、59手詰)が不完全でくずれてしまったので、本作の独走となった。構図にややくどいところもあるが、遠角の連打など受賞に値すると思われるので決定した」
二枚角を入手するまでに”4二と消去”の伏線(㋑で4七玉の変化に備えたもの)を織り込んだ序盤に続いて(A図)、

途中Ⓐ図(19手目1三角まで)
第27期柏川氏作1

1三角、9三角の連続遠打によって1八飛を百八十度転回させ、その後で1八飛成を実現させようという遠大な構想が主題。あとは9七でこの竜を捕えて捌きの収束……という、この作者には珍らしい長篇ですが、質駒を取らないで攻めるという短篇的な味のテーマを大きなスケールで表現してみたいという、作者の雄大なロマンが感じられます。
作者「久方ぶりの長篇で苦心の作品。収束を今少し凝縮できたら……と約一ヶ月ばかり推敲を重ねましたが、結局発表図以上のものは発見できず、やるだけはやったと一応満足はしておりましたけれど、いま受賞作として改めて見るとき、多少、心残りに思っています」



山中氏作は13手目5三飛成以下でも詰んでしまうことが既に指摘されています。
ただし、修正は可能のようです。

柏川氏作は「詰将棋半世紀」盤上流転第41番に収録されています。
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