塚田賞作品の魅力(14)(近代将棋昭和53年8月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第14回も2つに分けて掲載します。
今回は第23期の受賞作を掲載します。
山田修司氏五期連続受賞の偉業

第23期塚田賞受賞作家
短篇賞 金田秀信
中篇賞 古内正孝
長篇賞 山田修司
特別賞 小峯秀夫
昭和39年1~6月号


この期もまた山田修司氏が長篇で受賞。20期、21期の中篇、22期の長篇に続く四期連続受賞は、まさに当代随一の大作家の貫録を示すものでした。そしてこれにストップをかけんものと、長篇の力作の投稿が相次ぎ、毎号のように”力だめし詰将棋”として出題されるなど、詰将棋欄は質・量ともに最も充実した時期でした。
そしてこの年の6月号から、四年余り担当を続けられた小林淳之助氏に替って、新進気鋭の森敏宏氏が”鑑賞室”の解説をされることになったのです。


短篇賞 金田秀信作


第23期金田氏作

金田秀信作(39年4月号)
3五角 2三玉 2四銀 2二玉 1三銀不成 3一玉 4二銀 同玉 4三歩成 同玉
5三金 3四玉 2四銀成まで13手詰
塚田九段「形もよく、まぎれあり、手順も2四銀打から1三銀不成の味が抜群であり、最も短篇らしいので文句なしというところ」
初手3五角に対する1四玉の変化手順――1五銀、2三玉、3四銀、2二玉、1三角成、同玉、2三金まで9手――の方が初心者向きの軽快な手筋で、いかにもこの作者らしい。作意の2四銀打のような野暮ったい手は、異常感覚ともいえる筋で、作風の転換か、と思われましたが、受賞の感想でその真相がわかりました。
作者「最初投稿した9手詰に余詰があり、その手順が案外いけるというわけで、森さんがこれを本手順にする修正案を考えられた。詰将棋ずれした面々の意表をつきそうな手順には”手筋もの”には見られない新らしさ感じられるので、発表は”合作”ということで一任した。そういうわけで、今回の受賞は森敏宏氏の好意と協力によるものです」


中篇賞 古内正孝作


第23期古内氏作

古内正孝作(39年5月号)
6四角 4二桂合 4三桂 2一玉 1二銀成 同玉 4五馬 3四桂打 同馬 同桂
2三銀 1一玉 5五角 4四歩合 同角 同桂 1二歩 2一玉 3三桂まで19手詰
塚田九段「中篇では3月号の井上雅夫氏作(17手詰)と本作が甲乙つけ難く、数時間の長考を余義なくされたが、結局、一風変ったねらいを持つ古内氏に決めた」
本作、詰手順だけを見れば、どうしてこれが……と思われるかもしれません。本作の価値は、初手5三馬と寄って、4二桂合、4三桂、2一玉、1二銀成、同玉、4五角、3四桂打、同角、同桂、2三銀、1一玉と、作意同様に追って行き詰まった人にのみわかるものだからです。即ち、初手6四角と重ねて打っておけば、ここで5五角、4四歩合となって一歩稼げる――という仕掛けなのです。
これが、どれだけ心理的盲点となっているかは測ることができませんが、簡潔な構図にこのような狙いを織り込んだのは立派で、詰将棋の新らしい方向を拓いたといえます。
作者「初手6四角の意外性は新しいのではないでしょうか。6三馬との関連において意外性を強調していると思います。ただ、この一手がこの作品のすべてである点、私の不満でもありますが、アバタもエクボ式の評価をいたすならば、この一手に全手順をかけた点この作品の異色性を自讃できるわけです」


長篇賞 山田修司作


第23期山田氏作

山田修司作(39年5月号)
8六金 同飛 9七金 同玉 8六角 同玉 7六飛 8五玉 1六飛 7六歩合
同馬 8四玉 9三飛成 同玉 9四銀 9二玉 1二飛不成

途中Ⓐ図(17手目1二飛不成まで)
第23期山田氏作1

9一玉 9二歩 8一玉 7一と 同玉 6三桂 6一玉 7一桂成 同玉 7三香 6一玉
7二香成 5一玉 6二成香 4一玉 5二成香 3一玉 4二成香 2一玉
3二飛成 1一玉 7七馬 6六桂合 同馬 同歩 2三桂まで43手詰
塚田九段「今期の長篇は五作品ともすばらしい作品であったが、やはり山田氏のが群を抜いている感じ。遠打の趣向を裏がえしにしたような1六飛~1二飛不成は新鮮味があり(、)それを実現させるための構成力は高く評価しなければならない」
本作の構想は、1六飛と遠引きしておいて1二飛不成と入る――つまり、不成と遠打ちを組合わせたような遠引きです。即ち7二歩の中合をさせないための飛不成であり、不成ならば1二の位置が絶対(これは作意手順で明らか)という訳です(途中Ⓐ図参照)。
ここで、1二飛不成に対して2二歩のような中合も考えられますが、それには同飛不成、9一玉、9二歩、8一玉、8二歩、9二玉、6五馬、同香、9三歩以下ピッタリの詰みを設けています。
また1六飛の開き王手のとき7五玉の変化が難かしく、当時せっせと解答を出していた筆者も、これで解くのを諦めた記憶があります。7五玉には7六飛と戻し、6四玉(8五玉は7三飛成)、6三桂成、5五玉、5六飛、4五玉、1六飛、4四玉、4六飛、3五玉、4五馬、2五玉、2七香以下の無理詰めのような筋があるのです。
このすばらしい構想に比して、後半の手順の平板さを指摘する向きもあるかも知れませんが、本作の内容は中篇的であって、むしろ僅かこれだけの簡潔な配置でこのような高度な手順を表現したあたり、さすが当代随一の構想派作家ならではの秀作と感心させられます。
作者「長篇賞の対象としては他に田中至氏の煙詰や、小峯氏、駒場氏の趣向詰など重量級の傑作が揃っていただけに、一寸弱いなと考えておりました。今回の受賞は、1六飛から1二飛不成と入る構想を買っていただいたものと思いますが、こういった軽量級の作品が認められたという点で、私にとっては幸運というほかなく、嬉しさもまた格別です」


特別賞 小峯秀夫作


第23期小峯氏作

小峯秀夫作(39年4月号)
7一歩成 同玉 8三桂 6一玉 7一桂成 同玉 9三角成 6一玉 7一馬 同玉
8二角成 同飛 9一飛成 8一金合 7二歩Ⓐ

途中Ⓐ図(15手目7二歩打まで)
第23期小峯氏作1

同飛 6一金 同玉 8一竜 7一金合 6二歩 同飛 5一金 同玉 7一竜 6一金合
5二歩 同飛 4一金 同玉 6一竜 5一金合 4二歩 同飛 3一金 同玉
5一竜 4一金合 3二歩 同飛 2一金 同玉 4一竜 3一金合 3二竜Ⓑ

途中Ⓑ図(45手目3二竜まで)
第23期小峯氏作2

同金 4一飛 3一角合 1二金 同玉 1三歩成 同角 同香成 同玉 1四歩 2二玉
3三銀成 同金 3一角 1一玉 4二角成 1二玉 1三歩成 同玉 1一飛成 2三玉
1四銀 2四玉 2二竜 1四玉 2六桂 1五玉 3三馬 1六玉 1五馬 2七玉
3四桂 1八玉 2七竜 同玉 3七馬 1八玉 1九歩 同と 2八金まで85手詰
塚田九段「収束の構成にやや難があるが、趣向はなかなか捨て難い」
7一の地点へどんどん駒を捌き捨ての9一飛成とすると銀は品切れなので金合の一手。ここ(途中Ⓐ図)から金合の繰返しによる飛竜の横すべり趣向が始まります。この形で7二歩打が同飛と取らざるを得ないところがこの趣向成立の根拠で、新発見といえます。これを5回繰返して2筋に来たところで歩が打てないので3二竜(途中Ⓑ図)と切って収束に入りますが、最後までかなり力のこもった捌きです。
一時はやった趣向作品が、そのころは下火になっていたときで、”力だめし詰将棋”に出題された本作は、珍らしさもあってか、大方の好評を得ました。
作者「私としては初めての趣向作。趣向部分が平易なため、以後の手順に力点を置いたが、思うようにはいかなかった。それでも、3三銀捨てを中心とした一連の応酬には見るべきものがあると思う」



山田氏作は「夢の華」第44番(「飛燕」と命名)に収録されています。
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