塚田賞作品の魅力(13)(近代将棋昭和53年7月号)②

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第13回の続きです。
今回は第22期の受賞作、残り2作を掲載します。
新人賞 酒井隆雄作


第22期酒井隆雄氏作

酒井隆雄作(38年9月号)
9二金 同玉 9五飛 9三桂 9一と 同玉 9三飛成 9二金 8一歩成 同玉
9二竜 同玉 8四桂 同歩 8一角 9三玉 9四金 同玉 7二角成 8三金合
9五歩 9三玉 8三金 同角 9四金 同角 同歩 9二玉 9三歩成 同玉
7一角 9二玉 8二角成まで33手詰
塚田九段「初手9二金に意外性があり、面白い」
初手9二金を発見し、確信するまでの葛藤が本作のみどころです。即ち、序盤に紛れが多く、とくに初手から6六角、7五桂、同角、8四桂……といった筋は追いはじめるときりがありません。また、9二金に対する8四玉が切れ筋に見え、追う気がしないのです。実は7四金、同玉、8五角、6四玉、7五銀、5三玉、6二角、同玉、4二飛成以下。
9二同玉となってからの作意手順は9三桂合、9二金合と、大道棋のような合駒選びの問題となりますが、狭い場所での長手順の捌きは、とても初入選とは思えない力量です
この新人賞で華やかにデビューした作者はその後、力のこもった中篇作品を次々と発表し、活躍されました。
作者「解説が意外に好評だったので驚いていたのですが、受賞の通知にまたまた驚きました。捌きと合駒を主題にした局で、序盤、詰上り、初形、きれいにさばける点など、まずまずと思っていたのですが……。ともあれ本誌に入選早々受賞になり嬉しい限りです」


特別賞 駒場和男作「御殿山音頭」


第22期駒場氏作

駒場和男作(38年12月号)
4一歩成 同玉 5一と 同玉 3一竜 5二玉 3二竜 5一玉 6一歩成 同玉
4一竜 6二玉 4二竜 6一玉 7一歩成 同玉 5一竜 7二玉 5二竜 7一玉
8一歩成 同玉 6一竜 8二玉 6二竜 8一玉 9一歩成 同玉 7一竜 9二玉
8三と 同と 7二竜 9一玉Ⓐ

途中Ⓐ図(34手目9一玉まで)
第22期駒場氏作1

5五馬 7三と 7一竜 9二玉 5六馬 8三と 7二竜 9一玉 4六馬 7三と
7一竜 9二玉 4七馬 8三と 7二竜 9一玉 3七馬 7三と 7一竜 9二玉
3八馬 8三と 7二竜 9一玉 2八馬 7三と 7一竜 9二玉 3八馬 8三と
7二竜 9一玉 3七馬 7三と 7一竜 9二玉 4七馬 8三と 7二竜 9一玉
4六馬 7三と 7一竜 9二玉 5六馬 8三と 7二竜 9一玉 5五馬 7三と
7一竜 9二玉 6五馬 8三と 9三歩Ⓑ

途中Ⓑ図(89手目9三歩打まで)
同銀 7二竜 9一玉 5五馬 8二と 7一竜 9二玉 5六馬 8三と 7二竜
9一玉 4六馬 8二と 7一竜 9二玉 4七馬 8三と 7二竜 9一玉 3七馬
8二と 7一竜 9二玉 3八馬 8三と 7二竜 9一玉 2八馬 8二銀Ⓒ

途中Ⓒ図(118手目8二銀引まで)
第22期駒場氏作3

9二歩 同玉 8二馬 同と 8三銀 9三玉 8二竜 8四玉 9四銀成 同玉
9五歩 同玉 9三竜 9四歩 9六金 同玉 9四竜 8六玉 7七銀 同玉
9七竜 7八玉 8七竜 7九玉 6九金 同玉 7八銀 7九玉 8九竜 6八玉
6九竜 5七玉 5八竜 4六玉 4七歩 4五玉Ⓓ

途中Ⓓ図(154手目4五玉まで)
第22期駒場氏作4

3四香 1八と 4六銀 同飛 同歩 3六玉
3七飛 同玉 3八金 4六玉 4七金 4五玉 5六竜 4四玉 3五金 同玉
3六金 3四玉 4五竜 2四玉 2五竜まで175手詰
山田修司「竜馬協力の鋸引は”複式馬鋸”のバリエイションだが、9三歩でギヤチェンジする構想は秀抜だと思う。並び歩や自陣成駒など構成の無理が目につき、さらに後半力感がうすれた感あるは惜しいが、全体として氏の意欲を強く感ずる傑作」
井上雅夫「序の竜鋸と歩成りの趣向も面白いが、初めの馬鋸が9三歩を可能ならしめるための二歩獲得、再度の馬鋸は2九角引と、同じ手段でありながら、それぞれ目的を異にした狙いが良い。後半の追手順も3七飛捨てなどを見せてゆるみがない」
前年、馬鋸趣向の311手詰という大作をひっさげて初登場した鬼才、駒場氏の姉妹篇ともいうべき傑作。”力だめし詰将棋”として特別出題されたものです。
合駒なしを逆用した歩成捨てと竜鋸の軽い趣向手順の序奏は、主題への期待を徐々に高めてくれます。途中Ⓐ図となったところで、いよいよ主題の馬鋸が始まります。ところがこれが単純な鋸引きではなく、7一 7二の竜の往復との組合せた新しい趣向なのです。
最初の馬鋸は2八歩を入手するのが目的で再び馬鋸で6五馬まで戻した途中Ⓑ図で9三歩と叩けば同銀の一手となります。つまり、同玉なら、9一竜、9二歩、9四歩、同玉、9二竜、9三と、9五歩、同玉、9六金、同玉、9七銀、9五玉(9七同玉なら8七馬)、8七桂、9四玉、8三馬まで。この変化のために、馬が6五にいなければ9三歩打ができないという訳です。
9三歩、同銀となったところで、もう一度竜とのコンビで馬鋸を始める訳ですが、前回は7三と 8三と、と金の横運動で遮っていたのが、今度は8二 8三の縦運動に変っているのも面白いところです。今回は2八馬まで引いたところで玉方は8二銀(途中Ⓒ図)と変化します。もし8二となら、9二歩、同玉、2九角、同と、同馬……と一歩を得て早く詰んでしまいます。以下は収束ですが、合駒利かずを前提にしたこのプロットを成立させるために盤面に配置した残り駒が如何に捌けるか――というのが見どころ。竜追いで玉を中原に誘い出して(途中Ⓓ図)それまで隠居していた竜角を働らかせ、最後は4九金までがむくむくと動き出して終焉します。
作者、駒場和男氏は、発表作こそ数多くありませんが、本作でも判るように、超弩級の長篇大作ばかりを手がけるスケールの大きな作家で、三代宗看の再来かと騒がれました。ところが、本作の受賞を前に飄然として姿を消し、以後かなりの間、その底知れぬ実力とともに謎の人物となってしまいました。従って、本作につけられた「御殿山音頭」の題意も判らずじまいです。



「御殿山音頭」は発表図では詰まないようです(「詰将棋トライアスロン」によれば94手目6四歩)。
修正の上で「ゆめまぼろし百番」第98番(「御殿山囃子」と改題)に収録されています。


第22期駒場氏作補足1

解析させてみたところ、127手目9四銀成のところで8五歩、同銀、9四銀成、同玉、9五歩、同玉、9三龍、9四銀、9六金以下本手順に準じて詰むという結果が出ました…。迂回手順という形になりますか。

御殿山というのは駒場氏の故郷にある山であると「ゆめまぼろし百番」で見た覚えがあります。
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