塚田賞作品の魅力(12)(近代将棋昭和53年6月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第11回も2つに分けて掲載します。
今回は第20期の受賞作掲載となります。
塚田賞の歴史において欠かせないにも関わらず、これまでほとんど出番のなかった作家が登場します。
第20・21期受賞作

第20期受賞作者
短篇賞 北川 明
中篇賞 山田修司
長篇賞 山中龍雄
新人賞 森 敏宏
昭和37年7~12月号


この期は、本格的中篇構想作品をひっさげて久しぶりに山田修司氏が復帰したほか、森敏宏氏、駒場和男氏らの大型新人が華々しくデビューしました。
また、北原義治氏の入選百回を記念して、”全国詰将棋解答者番付”が作成され、山中龍雄、安田昭夫、植田尚宏、小峯秀夫、生地鉄之、村上昭二、宮崎忠雄の7氏が”横綱”として名を連ねました。
こうして詰将棋界は、いよいよ昭和黄金時代を迎えることになるのです。


短篇賞 北川 明作


第20期北川氏作

北川 明作(37年12月号)
2四金 1二玉 2三金 同金 1一飛 同玉 2三桂 1二玉 1一桂成 同玉
2二金まで11手詰
塚田九段「私の手元に送られて来た短篇の候補作品は六編。過去の標準を大幅に下まわる低調さであった。ちゅうちょした末に、入選ときめた本作は既成手筋の活用の域を出ないが、まとまっており、短篇らしいところを買った」
この年は、”鑑賞室”とは別に、”○月の出題”と題して、毎月、短篇6局が紹介されました。本作は”12月の出題”の中の一局。金桂を二度づつ働かせるところなど、軽快で、味のある手順ですが、紛れが少ないのがやや物足りないところでしょうか。
こくのある小西逸生作(13手詰、8月号)や、意欲的な柏川悦夫作(13手詰、9月号)などを押えて受賞したのは好運でした。
作者「本作は、あるインスピレーションによりごく短時間にまとめたもので、手順は金と桂の二段活用が中心となっており、まず解いて楽しめる作品だと思っています。1二歩は銀でもよく、いまだにその採否については迷っていますが、全体的に軽い味ですし、発表図でも悪くはないでしょう」


中篇賞 山田修司作


第20期山田氏作

山田修司作(37年11月号)
5五銀 4三玉 4四銀上 3四玉 2五銀 同玉 2六歩 3四玉 1四竜 2四飛
2五竜 同飛 3三桂成 4五玉 4六歩 5四玉 3六馬 同歩 5五歩 同飛
4三銀 5三玉 6三歩成 4四玉 3四成桂まで25手詰
塚田九段「短篇にひきかえて、中篇は素晴らしい作品が多かった。8月号の堀内和雄作(19手詰)と12月号の森敏宏作(23手詰)の二編は受賞するに充分すぎるほどの資格(価値)を持っている。ただ運悪く山田氏作が良すぎる。1四竜で飛合を強要し、以下打歩詰を回ひして追い上げる手腕は、並大抵のわざではない。心から感服した次第である」
本局は手順を追って鑑賞しないと、簡単には理解できません。
初手から素直に攻めるなら、5五銀、4三玉、4四銀上、3四玉、(A)3三桂成、4五玉、4六歩、5四玉(参考図)となって打歩詰の状態に陥ります。

(参考図)
第20期山田氏作1

そこで、(A)3三桂成にかえて、2五銀、同玉、2六歩、3四玉、1四竜とすれば、玉方は2四飛合と、強力な合駒を余儀なくされます(途中1図)。即ち、以下3三銀成、4五玉、4四銀成の順を同飛と防ぐためです。

(途中1図)
第20期山田氏作2

こうして合駒として登場した2四飛が参考図における5五歩の打歩詰を回避することになる……といっても、まだピンと来る方は少ないでしょう。これを実現するのが次の一連の強手なのです。即ち、2五竜同飛で五段目にこれを移しておいて、3三桂成、4五玉、4六歩、5四玉と運んだところで、3六馬、同歩(途中2図)とすれば、5五の地点まで飛車の効きが届くことになって、5五歩以下の詰みが得られるのです。

(途中2図)
第20期山田氏作3

このように、打歩詰を回避するために”取歩駒を発生”させるという構想手順は、実は筆者作(詰将棋パラダイス、34年9月号)が最初です。これは桂合による単純なものでしたが、山田氏の本作は、別の場所で発生させた飛車を竜捨ての強手で移動させ、さらに遮効駒の3五歩を馬捨ての妙手で動かすあたり、看寿を凌ぐ傑作といっても過言ではありません。
因みに、本作と同じ号に発表された小峯秀夫作(27手詰)も、角合による取歩駒発生の第一号作品でした。このように同種の新型プロットが同時に誕生したということは、詰将棋史に残る奇跡といえます。
作者「作品の出来ばえはともかく、構想のオリジナルな点だけは認めていただけるだろうと期待しておりましたが、入賞するとは思いもよりませんでした。ともかく、詰棋界に復帰早々、塚田賞を受賞するとは、私にとって運がよかったと申すほかなく、嬉しさもまたひとしおです。これを契機に、よりオリジナルな作品を創作すべく努力したいと思います」


長篇賞 山中龍雄作


第20期山中氏作

山中龍雄作(37年8月号)
2四馬 同玉 2三馬 同玉 3五桂 2二玉 5二飛成 3二飛合 2三銀 1一玉
1二銀成 同飛 4一竜 2一金合 2三桂行 2二玉 1四桂 2三玉 2一竜 2二桂合
同桂成 同飛 同竜 同玉 1四桂 3一玉 6一飛 4一角合 2二金 4二玉
6二飛成 5二角上 5四桂 4一玉 3二金 同玉 5二竜 2三玉 2二竜 3四玉
1二角 4四玉 4五角成 5三玉 6二竜まで45手詰
塚田九段「長篇は岩井銀吉作(7月号)が良いと思われたが、山中氏作と細かく比較検討してみて、やはり山中氏の実戦的な味を推したい気持になった」
本作は”力”の詰将棋です。2三馬と捨てて3五桂打から5二飛成の序奏は、あたかも余詰筋でも追っている感じがします。そして3二飛や2一金、さらに2二桂といった合駒選びの煩わしさで、投げ出したくなるところです。しかもその後は、全ての駒を切りちがえて裸にしてしまうのです(途中図)。

(途中図)
第20期山中氏作1

以下、1四桂で足場をつくり、6二桂の質駒を見当てにした6一飛の限定打には4一角合で抵抗。6二竜までの詰上りも、珍らしい形です。当時”余詰検討王”として勇名をはせた強腕の作者にふさわしい、異色の長篇といえます。
作者「本作は序盤二枚馬捨て、桂の打換えから、大道棋の”飛金問題”の如き局面となり、飛金桂角と、ほぼ等間隔に四種の合駒を織り込むが、合駒作品特有の複雑性、長篇に必要な難解味は薄く、受賞の対象となるだけの作品価値があるかどうか、疑問に思っている。ともあれ嬉しい誤算で幸運至極」


新人賞 森 敏宏作


第20期森氏作

森 敏宏作(37年12月号)
2四歩 1二玉 4五角 3四桂合 同角 2三桂合 1三歩 1一玉 1二歩成 同玉
2三角不成 1一玉 1二歩 2二玉 3二竜 1三玉 2五桂 同竜 1四角成 同竜
2五桂 同竜 2三竜まで23手詰
ご存知、本誌の現編集長。当時は四段で日大将棋部の主将として活躍中でした。11月号の初入選が美濃囲い実戦型の47手詰という力作で、本作はそれに続く第二作。
桂の二段変則合駒に、2三角不成と1一銀消去の”二段打歩詰回避”を組合せ、入手した2枚の桂もきれいに捌く収束まで、鮮やかの一語に尽きます。素晴らしい構想手順を美しい棋形で表現した秀作といえましょう。
作者「もっとも気に入った作品の一つが受賞になって満足しております。以前、この作品を北原義治氏にみせたところ、即座に2五歩と置駒にしたら……といわれ、なるほどと感服。創作のむずかしさを改めて知らされた次第です」



山田氏作は「夢の華」第38番に収録されています。

山田氏作の解説で触れられていた2作品を掲げます。
まずは森田正司氏作(詰将棋パラダイス昭和34年9月号)です。


第20期参考森田氏作

そして小峯秀夫氏作(近代将棋昭和37年11月号)です。


第20期参考小峯氏作


第2期以来の受賞となった山田修司氏。
「続・塚田賞作品の魅力」で扱われていた第51~81期の間は(2度目の)冬眠中でした。
これ以降、幾度も登場します。
昨日82歳になられた氏。これからも素晴らしい作品を発表することを願ってやみません。
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