塚田賞作品の魅力(11)(近代将棋昭和53年5月号)②

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第11回の続きです。
今回は第19期の受賞作を掲載します。
第19期塚田賞受賞作者
短篇賞 田中輝和
中篇賞 山中龍雄
長篇賞 小峯秀夫
昭和37年1~6月号


この年の6月号に、本誌創刊以来はじめての百回入選作家が誕生しました。
その人は北原義治。27年6月号に初入選して以来、わずか10年間で百回入選の偉業を達成したのです。しかも短篇・中篇・長篇のあらゆる分野に近代的合理性を追究した好作が多く、この間に7回も塚田賞を受賞しています。黄金時代の詰将棋界にあって、ひときわ輝かしい活躍ぶりでした。


短篇賞 田中輝和作


第19期田中氏作

田中輝和作(37年5月号)
3三金 同角 1四金 同玉 1三金 同香 3二馬 2三合 2六桂まで9手詰
塚田九段「今期は特に印象に残る作品が多かった。5月号の柏川悦夫氏作(15手詰)は詰手にかなりの難解さがあり、形も実戦的に好形。2月号の北原義治氏作(15手詰)と本作は流石に優劣つけ難く、私としても相当の長考を余儀なくされた」
この頃は、あたかもベテラン作家の競作展の観があり、毎号、巧妙な短篇が数多く発表されました。この期には、右の他にも、1月号の柏川氏作(15手詰)や、3月号の近藤孝氏作(13手詰)のような新鮮な感覚の佳作が誕生しました。
さて、このような激戦の中で選ばれたのが鬼才、田中輝和氏の作品。煙詰などの大作だけでなく、短篇にも鋭い感覚を示した小品です。その中心手は1四金から1三金の連続パンチ。詰上りは上下からのはさみつけで、多少、野暮ったい感じもしますが、この詰上りのために初手の金捨てで4四角を3三へ移しておく伏線が、これを救ってくれています。
作者「本作が受賞とは全くの意外でした。大作創作中に気まぐれに作った作品で、受賞の価値がどこに……と頭をひねっているところです。実戦型中篇にするつもりでしたが、パッとしないので、簡素に、ごく簡素に仕上げたのが良かったのかも知れません」


中篇賞 山中龍雄作


第19期山中氏作

山中龍雄作(37年1月号)
3三角 2二角合 2三桂 1二玉 1一飛 同角 同桂成 1三玉 3五角 2四桂合
同角引成 2二玉 3一銀 同金 2一成桂 同玉 3三桂 2二玉 2三銀 1一玉
1二銀成 同玉 1三馬 1一玉 2三桂まで25手詰
塚田九段「五月号の北原義治氏作(25手詰、詰上りヰの字)は難解性を多分に含んでおり、四月号の同氏作(27手詰)も、手品を思わせる駒の回転率と収束形の良さには感嘆させられた。それに対する山中氏作は、収束形に若干劣る点があるが、俗手の好手、3一銀、2一成桂など、また随所に見られる合駒の難解さ、力強さなどが私を強くひいた」
当時、余詰指摘の第一人者として強腕ぶりを発揮した山中龍雄氏。作図の方でも、簡潔な形から合駒の綾を織り込みつつ、強引に詰手順をひき出す独得の作風をつくりあげました。初受賞の本作も典型的な「ヤマタツ流」の中篇で、爽やかな実戦型に似合わない強手を秘めています。即ち、初手3三角に2二銀合なら作意順のようには追わず、1四飛、1三歩、同飛成、同桂、2二角成、同銀、1二歩、同玉、2三銀打以下。また、3五角の限定打やそれに対する2四桂の捨合いなどの好手よりも、その後の3一銀や2一成桂のような駒取りの俗手に、詰棋人は悩ませられるのです。これは、良くも悪くも、形から詰手順をひき出す作図法の特徴といえます。
作者「使用駒少数の場合の中篇創作には、初形簡素で綺麗、詰手順軽快、詰上りすっきり、変化紛れ適度、難易度中位の合駒中心の作品を目標にしています。本作は盤駒を使用せず頭の中だけで比較的容易にまとめあげたものです。最初盤面右五枚の形を作り、持駒飛角として出発しましたが、4一金、4三歩を配するだけで巧く完成しました。初形、詰手順、詰上り、変化、紛れなど、バランスはとれていると思います」


長篇賞 小峯秀夫作


第19期小峯氏作

小峯秀夫作(37年5月号)
9三桂成 同桂 9五歩 ㋑同玉 7五竜 同竜 8七桂 ㋺9四玉 7六馬 8五桂跳
9五金 9三玉 7五馬 9二玉 9三馬 同金 6二飛 8二飛合 同飛成 同玉
6四角 7三飛合 同角成 同玉 7二飛 6四玉 7五飛成 6三玉 7三飛 6二玉
7一飛成 5一玉 5二銀成 同玉 7二竜入 4三玉 4一竜 3三玉 2二竜 同玉
3二金 2三玉 2一竜まで43手詰
塚田九段「長篇では小峯秀夫氏作の一人舞台となった。おもしろい玉型や奇手好手が多分におりこまれており、受賞水準には充分に至っている」
構想派の作者には珍らしい、好手をふんだんに詰め込んだ中篇的な味の実戦型力作での受賞です。
本作は導入部の変化がきわめて難しく、3手目9五歩に㋑8五玉なら、7七桂、8六玉(同竜は7六角以下)、7六馬、9七玉、7九角、同竜、9八金まで。9五同玉に7五竜、同竜と捨てるのが英断で、つづく8七桂に㋺8六玉の変化を読み切らなければ指せない強手です。㋺8六玉には、7五馬、8七玉(7七玉は7六飛以下)、6九角、7八銀合、8六飛、7七玉、7六飛、6八玉、7八飛、6九玉、7九金、5九玉、4八馬まで。
この後は、手数はかかっていますが、短篇的な軽手を選んでゆけば、自然と詰み筋へと導かれて行きます。前半の難かしさとは対照的な感じで、長篇では異色の受賞作といえましょう。
作者「本局の主題は7手目8七桂から22手目7三飛合に至る、一連の攻防にあります。一手一手をみれば、さして重量感のない軽手でも、それを数多く有機的に連ねることで、妙味を現出せしめようというねらいは、一応いい線を行っていると思います。悪かったのは後半の収束で、全体的にみて前半に重心がかかり過ぎ、このアンバランスが本局の大きい難点と思っていただけに、この受賞は好運だったと思っています」



今回の記事が第19期ですから、「続・塚田賞作品の魅力」の第51~81期と合わせて50期分の塚田賞受賞作品を掲載。
ようやく折り返しまで来たことになります。
これからも無理のない範囲で更新していきたいと思います。
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