塚田賞作品の魅力(11)(近代将棋昭和53年5月号)①

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第11回も2つに分けて掲載します。
今回は第18期の受賞作を掲載します。
第18・19期受賞作

第18期塚田賞受賞作者
短篇賞 巨椋鴻之介
中篇賞 堀内和雄
長篇賞 近藤 孝
昭和36年7~12月号


長篇が目白押しの前期に対して、この年の後期は長篇が不作。逆に、短篇に新鮮な感覚の好作がいくつか見られました。受賞作の他では、これが初入選かと目を疑いたくなるような大田達三氏作(15手詰、8月号)や、詰達者の心理の逆を巧みに衝いたベテラン細田強氏作(9手詰、11月号)など、行き詰まりを心配された短篇詰将棋の世界に、再び光明が燈されたといえます。


短篇賞 巨椋鴻之介作


第18期巨椋氏作

巨椋鴻之介作(36年11月号)
1一飛 2三玉 3五桂 同香 2四歩 3二玉 2一飛成 同玉 2二馬 同玉
2三金 1一玉 2二金打まで13手詰
塚田九段「形の良さと、3五桂から2四歩の手順がおもしろい。スッキリした感を抱かせる作品だ」
本作は”小川三四郎”という名で発表されたもの。作者は”巨椋鴻之介”のほかに時折この漱石の小説の主人公の名前を借りることがありました。
手順は、柔道青年”三四郎”に負けないほどカッコイイもので、3五桂から2四歩と突き出す軽い味と、その直後の2一飛成の荒技が、見事一本きまった――という感じ。いかにも塚田好みの小品といえます。
作者「本作は頭の中だけで簡単にまとめあげたもので、自分では期待していなかっただけに、受賞は全く意外でした。五手目からの紛れと2一飛成の味が買われたのかも知れませんが、受賞の対象となるほどの作かどうか自分では疑っています。しかし、これで14期と前期に続いて短・中・長篇を一通りいただくことになり、この点は大いに満足しています」


中篇賞 堀内和雄作


第18期堀内氏作

堀内和雄作(36年8月号)
1四香 1三桂 同香成 同玉 2五桂 2二玉 1三桂成 同玉 3一角成 2二角
1四金 1二玉 2二飛成 同金 2一角 同金 1三金まで17手詰
塚田九段「一見、単純な形に見えて、合駒の複雑性を含んだところが非常に秀れている。収束も鮮やかである」
初手1四香に対し角桂以外の合駒は、その駒を1四へ打って簡単。角合なら、3五角成、2四桂、同馬、2二玉、1三角以下で詰みます。桂合の場合は、この3五角成、2四桂合の筋は、同馬、2二玉、3四桂、3二玉……で届きません。
5手目、1三玉の形で2五桂と飛車筋を消すので心理的に打ちにくい手が、本作のポイント。1四玉でも2三玉でも、2四金と打って詰むのです。そして2二玉ならすぐに1三桂成と捨て、3一角成。つまり”2二歩”の消去が本作のテーマであったわけで、あとは2二角合のおまけがついて軽く収束します。
巧妙な手順構成によって、飛先に桂を打つような野暮ったい手を好手に仕立てた作者の腕は見事なものです。堀内氏は当時まだ学生で、この受賞が一流作家へのキッカケになったといえるかも知れません。
作者「十月号で解説の小林淳之助氏におだてられ、いささか心安らかざるものがありましたが、受賞の報を手にして何かほっとした気持です。本局の主眼は3五角成を有力なまぎれとする2五桂打で、これは偶然に発見しました」


長篇賞 近藤 孝作


第18期近藤氏作

近藤 孝作(36年10月号)
8八桂 同角不成 7七歩 同角不成 6六金 同角不成 7八竜 7七角不成
8八桂 6六玉 6七歩 5六玉 4五竜 同玉 4八竜 5五玉 4五竜 同玉
4六金 3四玉 3五金 2三玉 2四金 1二玉 2二角成 同角成 同と 同玉
1四桂 2一玉 3二角 1一玉 2二桂成 同玉 2三金 1一玉 2一角成 同玉
3二と 1一玉 2二金まで41手詰
塚田九段「四度にわたる角不成が、非常におもしろい。難をいえば、収束がやや平凡な感じ」
7七歩と突き出してみたいが同とでダメ。8八桂で角を呼んでから突き出すと、角筋が消えて6六金が可能になるので、7七同ととは取れません。”7八歩”が消去できて7八竜と寄ったところで7七角成なら、6八桂、6六玉、6七歩、同馬、7五竜まで。ところがこの棋形でこんなに早く終わる筈がないので、角は”不成”であったことがわかります。つまり6七歩が打歩詰となるのです。
角が成ってくれないのなら、こちらも6八桂とは打たず、何とも心もとない形ながら、8八桂と打ち直します。これで6七歩が打てるようになって、あとは質駒の4八金を奪って収束へ一気呵成です。
“角使いの名人”といわれるだけあって、前半は趣向手順のような角不成のくり返しがあり、続いて8八桂と控えて打つ心もとない味から、自刀一閃、4五竜と切り捨てる豪快さはさすが――と感心したのですが、その後の冗長さが、この感激を薄めてしまったのが惜しまれます。
手数もわずか41手で長篇賞を得たというのは珍しく、この期は他に有力な作品がなかったのが幸いしたといえましょう。
作者「長篇賞は今度で二度目ですが、何度でも嬉しいものです。本局創作の動機は、型手順、変化、まぎれとバランスのとれたスマートな作をと心掛けました。収束が付けたしたようで不満がありますが、これも角をさばくために仕方がなかったのです」



巨椋氏作は「禁じられた遊び」原点と習作第8番に収録されています。
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