塚田賞作品の魅力(10)(近代将棋昭和53年4月号)②

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第10回の続きです。
今回は第17期の受賞作を掲載します。
第17期受賞作者
短篇賞 北川邦男
中篇賞 巨椋鴻之介
長篇賞 小林正美
昭和36年1~6月号


この期の受賞者は、いずれも二度目という実力者ばかり。新人は出られませんでした。田中輝和氏の煙詰第七局「千鳥玉」は中心手にかけるため落ちました。さすがの煙詰も、大量に生産されはじめたため、それだけでは価値がなくなってきたといえます。


短篇賞 北川邦男作


第17期北川氏作

北川邦男作(36年2月号)
2九香 2八歩 同香 2七角生 3五馬 1六玉 3六飛 同角成 1五と 同玉
1四飛 同馬 1六歩 同玉 2六馬まで15手詰
塚田九段「中合いと玉方角不成という、短篇に珍らしい玉方の妙手が面白い」
短篇に中合いなどの変則的な合駒手順を入れて新鮮味を出そうという試みが、この頃の構想派作家の間で流行しました。それも進んで、二段中合といった曲芸のような作品(湯村光造氏作や筆者作)まで出現したのです。
本作は、さらに発展して角不成の移動中合まで含んだ二段中合が主題ですが、スッキリした配置でこれを実現し、二枚の飛車までも捌けるところなど、全く非の打ちどころのない構成の佳作といえます。
作者「大駒の不成中合いを入れた作を――というのがそもそもの発想で、短篇では本作が初めて(長篇でも、記憶に誤りがなければ故奥薗氏の飛合入り一局だけ)ではないかと思います。近頃の短篇は前半は易しく、後半に中心手を持ってくるというのが流行していますが、本局はその逆を行っているのも面白いと思います」


中篇賞 巨椋鴻之介作


第17期巨椋氏作

巨椋鴻之介作(36年6月号)
9八飛 同玉 9九歩 8九玉 9八銀 9九玉 8七桂 4九馬 同飛 8九角生
(途中図)

(途中図)
第17期巨椋氏作1

8八銀引 同玉 8九銀 8七玉 9八角 9六玉 9七歩 同玉 4七飛 5七桂打
同飛 同桂成 8八銀打 同香成 8六角 9六玉 8七角 同成香 8八桂 同成香
9七歩 8七玉 7七金まで33手詰
塚田九段「偶然にも、短篇賞の作品と同じ構想の、中合いと玉方角不成が主題となっている。北川氏作をマネたわけでなく、新しい手である。収束はよくある手だが、巧くまとめてあり、傑作として敬意を表したい」
俗手の導入部を経て、8七桂のカラ跳びが最初の関門。6七桂と馬を取れば、そこが玉の逃路となってしまうのです。それならばと玉方は4九馬のカラ捨て。これは次の8九角生(途中図)と後詰めの角を、不成変則合でほうり込むためなのです。8九馬(または金)の合では8八銀打、9八玉、9九歩で早いので、これを打歩詰に導くのが目的――というわけで、同じ変則合でも前作よりはかなり手がこんだ構想になっています。
後半は、入手した角や桂を活用して打歩詰を避ける巧みな捌きで収束します。構想派作家の本格的中篇でした。
作者「詰め方の打歩詰回避の手段としてよく用いられる馬捨てから角生を、逆に玉方の打歩詰誘致の手段として用いたものです。この構想には自信があっただけに、喜びもひとしおです。先に長篇賞、今回中篇賞を頂きましたので、今度は短篇賞をと思っています」


長篇賞 小林正美作「鯉の滝のぼり」


第17期小林氏作

小林正美作(36年1月号)
4二角成 同竜 2三と 同玉 2五香 2四歩合 1五桂 1三玉 1四歩 同玉
2六桂 2五玉 1七桂 1六玉 2八桂 2七玉(途中図)

(途中図)
第17期小林氏作1

1六桂 同玉 2五桂 同玉 Ⓐ1四桂 同玉 2三桂成 同玉 2四香 同玉
2五歩 同玉 2七香 2六歩合 同香 同玉 1七馬 1五玉 1六馬 1四玉
1五馬 2三玉 1四馬 2二玉 1三馬 1一玉 1二歩 2一玉 3一馬 同竜
1一歩成 2二玉 1二竜まで49手詰
塚田九段「小林氏の”鯉の滝登り”が受賞した。形がよい。いやそんなことよりも、桂のさばき方に妙趣がある。この筋は多くの作家が夢みたろうと思うが、これ程うまく作れたのは素晴らしい。詰め上がりも五枚だけとは見事」
一月号に「珍品詰将棋」として特別出題された四桂さばきの趣向小品。軽い前奏を経て1五桂から2六桂、1七桂、2八桂となったところ(途中図)で、題名どおり”鯉の滝のぼり”の舞台ができあがる。このあと四尾の鯉(桂)がピンピンとはねながら滝をのぼっていく。簡潔な構図で鮮やかな趣向を実現したセンスは素晴らしく、連続受賞の栄に輝きました。
作者「本局、発想の動機は、最初2一に玉を置き、1九、3九に香を配した形からヒントを得て、これは面白いと思い、色々手を加え55手詰に仕上げましたが自身満足できず、収束の一部を修正し、やっと完成。その間一年有余、全く苦心さんたんの末、出来たものです」

ところが11月号に、山中龍雄氏により本作に横槍がつき出されました。すなわち、21手目Ⓐ1四桂のところ、3四桂、1四玉、2三桂成、同玉、2四香、同玉、2五玉、2三玉、2四香、3三玉、4二桂成以下複雑難解ですが51手で詰むというもの。修正は容易なだけに惜しまれます。



「鯉の滝のぼり」は、「近代将棋図式精選」において玉方4八歩が追加されています。


北川氏作は「渓流」珠玉篇第25番、巨椋氏作は「禁じられた遊び」禁じられた遊び第41番にそれぞれ収録されています。
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