塚田賞作品の魅力(8)(近代将棋昭和53年2月号)

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第8回です。
今回は第14期の受賞作を掲載します。
第14期受賞作

第14期受賞作者
短篇賞 北川邦男
中篇賞 守谷敏彦
長篇賞 巨椋鴻之介
昭和34年7~12月号


第14期塚田賞は初めての受賞者ばかり。当時は、今から振り返れば、30年代の「昭和詰将棋黄金時代」を飾る有力な新人が続々と輩出した頃でした。


短篇賞 北川邦男作


第14期北川氏作

北川邦男作(34年7月号)
1五飛 同玉 3三角 2五玉 1七桂 1六玉 1五角成 同飛 2六金 1七玉
1五金 1八玉 1七馬 同玉 1六飛まで15手詰
塚田九段「着想が変っていて面白いし、1五角成が妙手で、最後の1七馬捨てまで仕上げがピタリと決っている」
本作のポイントは、序盤の3三角打。これは、5手目1七桂に同飛成と変化された場合に3五馬という軽手を秘めた限定打です。あとは1五角成と再活用してから、2六金以下の有名手筋(将棋世界28・6小西稔氏作)をとり入れた、捌きの作品です。
作者は当時まだ高校生。この受賞が契機となって、その後、構想派短篇作家として活躍されました。翌年の新年号で催された本誌10周年を祝う曲詰コンクールでも、氏のあぶり出し「十」の字が見事C組一席となりました。
作者「受賞の報に接し、ただただ驚くばかり。まだ入選するのがやっとで、塚田賞なんて夢想だにしなかった位ですから、その喜びもひとしおです。この作品はまぎれの少ないのが不満ですが、自分にしては良くできた方だと思っていました」


中篇賞 守谷敏彦作


第14期守谷氏作

守谷敏彦作(34年10月号)
2三飛成 同玉 2四歩 同玉 2七香 2六飛合 同香 2五桂合 2三飛 同玉
2五香 2四歩合 1五桂 同歩 2四香 同玉 2五歩 3四玉 3五金 2三玉
2四金 1二玉 1三金まで23手詰
塚田九段「中合い問題としては形も無難であるし、二重の合駒がいい上に、攻方が2三飛と打って、最後に1五桂捨の小味と、攻防共によい」
本作は、2七香打に対する飛、桂の二段変則合駒の応手がテーマ。2五桂合をすぐに取らないで2三飛と打つのが唯一の好手です。初入選で受賞は幸運でした。それにしても、いきなり駒を取る初手や冗長な収束は何とかならなかったのでしょうか。
作者「大道棋の金問題に飛の中合いがありますが、それとは別に、打った駒に対して飛の中合いをする形を、と思って作図。はじめ投稿するつもりで作ったのではないのですが出来上がってから面白い、と思い投稿したのです。それだけに、塚田賞と聞いてもまだ何かピンとこないというのが本当の気持です」


長篇賞 巨椋鴻之介作


第14期巨椋氏作

巨椋鴻之介作(34年11月号)
2三と 同金 3四銀成 同金 3三銀 1三玉 2二角成 同飛 1一飛成 1二金合
2二銀生 2四玉 1五角 同歩 2三飛 同玉 1二竜 3二玉 3一銀生 3三玉
4三金 2四玉 1五竜 2三玉 3五桂 同金 3三金 同玉 3五竜 3四歩合
4四金 3二玉 3四竜 4一玉 4二銀成 同玉 4三金 5一玉 5四竜 6一玉
5二金 7一玉 6二金 同玉 7三歩成 同玉 7四銀 同成桂 8三桂成 同玉
7四竜 8二玉 9二香成 同玉 8四桂 9一玉 9二歩 8二玉 7二桂成 9二玉
9三歩 9一玉 8二成桂 同玉 9四桂 8一玉 9二歩成 同玉 7二竜 9三玉
8二竜 9四玉 8四竜まで73手詰
塚田九段「小型煙詰で、序盤の1五角、2三飛の所は、詰めにくい形を打開する妙手である。収束も類型的になるのを避けて、なかなか巧く作ってある」
本作、前半の40手は、僅かこれだけの駒でよくも好手、軽手が続くもの……と感心させられるくらい、駒がフルに活躍して消えていく。後半は桂を巧みに操って三枚で詰上る。奇術の手さばきを見る思いです。
作者は、このあとの新年号で北川明氏と並んで全駒煙詰(史上6番目)を発表し、その後の煙詰ブームを呼び起した大作家ですが、これは、その前祝いともいうべき受賞です。
作者「驚き、かつ喜んでいます。詰上り三枚の小型煙詰ですが、消去のための物々交換を避け、手順そのものに面白味を持たすように努力しました。ことに序盤、1五角、2三飛の大駒連捨、4三金打から2七桂の活用に至る駒の有機的な動きは快心の出来で、3三に打った銀が千鳥に一回転するのや、4四金の三段活用など、駒の能率がよい点を買って下さい。楽屋話をすれば、本局は序盤から作り出した煙詰だけに、収束をまとめるのに、ずいぶん苦労しました。今回の受賞で、それも報われた感じです」

×   ×   ×

参考までに、35年1月号に発表され、詰将棋に輝ける一頁を加えた巨椋鴻之介氏と北川明氏の新”煙詰”を紹介しておきます。
煙詰は、全駒使用で詰上り三枚になるという詰将棋で、伊藤看寿の「図巧99番」以来、誰もつくることができないとされていましたが、昭和29年に至って黒川一郎氏が「落花」を完成。続いて植田尚宏氏が「王将」8月号に発表して、第4期塚田賞に輝きました。その後31年に駒場和男氏の「淡雪」、黒川一郎氏の「狭霧」が出たあと、暫く跡絶えていましたが、本誌が34年の新年号で新煙詰の長期大募集を行い、これに応えて誕生したのが、この二作です。
いずれも塚田賞を得て当然の大作ですが、皮肉にもこれに刺激されて一挙四局の煙詰をひっさげて登場した鬼才田中輝和氏に、第15期の長篇賞をさらわれてしまったのは不運でした。


新煙詰 巨椋鴻之介作


第15期参考巨椋氏作

巨椋鴻之介作(35年1月号)
5一と 同玉 4一歩成 6一玉 5一と 同玉 4二銀成 6一玉 5二成銀 同玉
5三金 6一玉 5二金 同玉 4三と 同と 同と 同玉 4五竜 3二玉
3四竜 2二玉(途中1図)

(途中1図)
第15期参考巨椋氏作1

2三歩成 1一玉 1二歩 同と 同と 同玉 1三歩 2一玉 2二歩 同玉
1四桂 2一玉 1二歩成 同玉 3二竜 1三玉 2二竜 1四玉 2五銀 1五玉
1六銀 同玉 2五竜 1七玉 2九桂 同馬 1八歩 同馬 同金 同玉(途中2図)

(途中2図)
第15期参考巨椋氏作2

6三角 1九玉 1六竜 2九玉 1八竜 3九玉 4九金 同玉 2七角成 5九玉
3七馬 6九玉 4七馬 7九玉 5七馬 8九玉 6七馬 9九玉 2九竜 9八玉
8九竜 8七玉 9六桂 9七玉 9八歩 9六玉(途中3図)

(途中3図)
第15期参考巨椋氏作3

8五馬 同成香寄 9七飛 同成香 同歩 9五玉 8五と 同と 9六香 同と
同歩 9四玉 8四と 同と右 9五香 同と 同歩 9三玉 8二銀 同成銀
9四香 同と 同歩 9二玉 8二と 同と 9三銀 同と 同歩成 同玉
9四歩 同玉 9五歩 同玉 9六歩 同玉 9七歩 同玉 9八香まで117手詰
作者「収束の趣向部分で集団的に駒を消化できたので、まあ何とか一局できました。今までの五局の煙詰と比して不自然な成駒が多いのが残念ですが、詰上り型と、趣向が最後に出てくるところが特色かな」
作者は謙遜してますが、周辺巡りのような味もあり、終盤にははがし趣向も取り入れた愉しい煙詰です。


新煙詰「竹上雪」 北川明作


第15期参考北川氏作

北川明作(35年1月号)
9二馬 同玉 8一銀 9三玉 8三と 同桂 9四香 同金 同と 同玉
8四金 同玉 8六竜 9三玉 8五桂 9四玉 9五金 同桂 9三桂成 同玉
9五竜 8三玉 7五桂 同歩 7三桂成 同玉 7五竜 8三玉 7四竜 8二玉
8四竜 9一玉 9三竜 8一玉 7一歩成 同と 同香成 同玉 6一歩成 同玉
6三竜 5一玉(途中1図)

(途中1図)
第15期参考北川氏作1

4一歩成 同と 同と 同玉 3二銀生 同成銀 同歩成 同玉 2二歩成 同と
同と 同玉 1三竜 同玉 2三金 1四玉 2五と 同と 2四金打 同と
同金 1五玉 1六歩 同馬 1四金 同玉(途中2図)

(途中2図)
第15期参考北川氏作2

1五歩 同玉 2四銀 1四玉 1五歩 同馬 2三銀 1三玉 1四歩 同馬
2二銀 1二玉 1三歩 同馬 2一銀 1一玉 1二歩 同馬 同銀成 同玉
1八香 同竜 3四角 1一玉 1二歩 同竜 同角成 同玉 2二飛 1三玉
2三飛成まで99手詰
作者「序盤のさばきは変化もまぎれもあり割合い気に入っています。終盤の歩の打捨てによる銀ずらしが既成手筋なのが残念です。しかし、馬と組合わせて1一の雪隠まで追い上げるのは、かつてなかったと思います。表題の『竹上雪』は、下段の三香を竹に、上辺の歩を雪に見立てたものです」
序盤6手目、8三同玉で切れそうですが、7三桂成、同玉、7四と、8二玉、8六竜、同金、7三と以下で詰みます。中盤の3二銀成らずも粋で、中盤と終盤をつなぐポイントになっています。前作と同様、小駒の捌きを主体にした爽快な煙詰です。


北川氏作は「渓流」珠玉篇第5番に収録されています。

巨椋氏作、受賞作は「風立ちぬ」、全駒煙詰は「風とともに去りぬ」と命名、それぞれ「禁じられた遊び」禁じられた遊び第36番・第35番に収録されています。
なお、「風とともに去りぬ」は禁じられた遊び収録に当たり、2五と→2五歩・8五龍→8五飛の改良がなされています。
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