塚田賞作品の魅力(7)(近代将棋昭和53年1月号)②

森田銀杏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第7回の続きです。
今回は第13期の受賞作を掲載します。
第13期塚田賞受賞者
短篇賞 嬰ハ短調
中篇賞 北原義治
長篇賞 小峯秀夫
佳作賞 巨椋鴻之介
佳作賞 曽根康夫
昭和34年1~6月号


この期も短篇に軽妙な作品が多く見られました。これは、当時の解説担当が駒形駒之介氏であったからかも知れません。
駒形駒之介とは人も知る短篇作家、野口益雄氏のペンネームで、その軽快な作風と同じく、洒脱な筆調の解説で詰将棋の楽しさをひろめられました。
氏は最近、そのころの解説文や随想を集めて「詰棋評論」と題して上・下二巻を刊行されました。昭和20年代から30年代の詰棋界を知る資料としても絶好の著作といえます。


短篇賞 嬰ハ短調作


第13期嬰ハ短調氏作

短篇賞 嬰ハ短調作(34年6月号)
3一飛 同銀 3三金 2一玉 2二金 同銀 3一金 同銀 2三飛成 2二銀
3三桂 3一玉 4一とまで13手詰
塚田九段「3一飛、同銀と取らせ、3三金打からこの金を2二へすり込んでいく味が、なんとも言えぬ良い感じだ」
短調の音楽が好きで、こんな変ったペンネームをつけたという古川満氏の初入選作。もっとも、すでに詰将棋パラダイス誌で活躍中の短篇作家で、当時は中大の将棋部員でした(。)
本作は、3三へ打った金を2二へすり込ませる感触と、3一銀の動いたあとへすぐに金を打ち込む微妙な味が組合わさって、繊細な音色を奏でる辺りが、近代的短篇の典型といえましょう。ただ、3一飛という初手をつけるために後手に関係のない駒が多くなったのが残念なところです。
作者「どうも塚田賞というタイトルに価いするには、イカンながらウエイト不足を感じます。いわゆる手筋物の域を出ませんが、ねらいは金を残さず、桂一枚で収束をまとめるところにあります」


中篇賞 北原義治作


第13期北原氏作

中篇賞 北原義治作(34年1月号)
4六馬 3四玉 2五銀 同玉 3六竜 3四玉 4三桂成 同玉 5四銀 同玉
6四馬 4三玉 4二馬 5四玉 6四金 5五玉 4七桂 同馬 5四金 同玉
8四竜 7四金引 同竜 同馬 6四金 5五玉 6五金 同馬 6四馬 同馬
5六竜まで31手詰

詰上り図
第13期北原氏作

塚田九段「ムリに曲詰(Yの字)にしてしまったような感じが全くなく、妙手が続出する。また、21手目8四竜に玉方が7四金と引くなど面白い」
初手4六馬に始まり収束の6四馬捨てまで馬の押し売りが四回。これに対して守備駒の中心である7四馬も四回動いて大奮戦。その間を金銀などの軽い捨駒でつなぎ、好手連発の本格的な中篇曲詰です。その密度の濃さはYの字の決定版といえましょう。
片隅から駒を捌きながら玉を中段に呼び込んで形をつくる――というような、それまでの安易な曲詰創作法に抵抗して、中段で手順を練りに練って仕上げるという曲詰の新時代を開いたのが、この作者です。塚田賞は三度目の受賞。
作者「正直言って相当な自信作でした。着想~表現の出来栄えの点では、自作品中でも数少い作の一つ」


長篇賞 小峯秀夫作


第13期小峯氏作

長篇賞 小峯秀夫作(34年5月号)
2四飛成 同玉 1四金 同香 3五角 3四玉 1三角成 3六馬 3五金 同馬
同馬 2三玉 1三馬 3二玉 3一馬 2三玉 2四香 同玉 1三馬 同玉
3三飛成 2三飛 2二角 1二玉 2四桂 同飛 1三竜 2一玉 1一竜 3二玉
3一竜 2三玉 3三角成 1三玉 1一竜 1二金合 1四歩 同玉 1二竜 1三金合
同竜 同玉 2三金 同飛 1四金 同玉 2六桂 同金 1五香まで49手詰
塚田九段「特に驚くような妙手はないが全体が引きしまっている。終りに二回、金の合駒をさせ、それを取ってきれいに詰み上がる所は巧かった」
移動中合は当時の構想派作家が好んで試みるテーマの一つでした。ただ、受方の変則合だけでは詰将棋にならないので、その前後をいかにまとめるかが、かなり困難なことなのです。
本作は、3六馬出という応手の奇抜さもさることながら、その後を延々40手に及ぶ応酬が見物で、収束の飛金金の合駒もあまり煩らわしく感じさせないところが成功の因でしょうか。この期も長篇作品の発表は少なく、受賞は幸運でした。
作者「いきなり3六馬出の奇手を命題として与え、強引に作った。従って偶然又は偶意というものが影響した」


佳作賞 巨椋鴻之介作


第13期巨椋氏作

佳作賞 巨椋鴻之介作(34年2月号)
4四銀 同歩 3六香 2六玉 1七銀 1五玉 5五竜 4五歩 同竜 3五歩
同竜 2五歩 2六竜 同歩ⓐ 5五飛 同金 1六歩 2四玉 2五歩 同桂
2三銀成 1四玉 1五歩 同玉 3三馬 1四玉 2四馬まで27手詰
塚田九段「初手の4四銀引が含みのある、実に変った手。中篇賞を北原氏と争って敗れたが、見方によればこの方が上ともなろう」
正にその通りで、初手4四銀捨ては、後にさらに4五歩と突き出せるために4四歩の形にしておくという珍無類の伏線です。どうしてこのような不思議な手が成立するのでしょうか。途中ⓐ図を見て下さい。

途中ⓐ図
第13期巨椋氏作

もし4五歩のから捨てをしていないで4四歩が残っているとすれば5四飛の横利きが止っているのでここで1六歩打ができて早く詰みます。また、初手4四銀、同歩をしてなければ、この局面で一歩不足する――というのがそのカラクリなのです。作者の本名は佐々木明氏。当時は東大の大学院生で、数々の巧緻な構想作品を発表されました。昭和詰棋界に一時代を築いた中長篇作家の一人です。
作者「もう七、八年も詰棋をやってきて、ある意味では詰棋にはあきています。そこで同様にあきている方々に『ほほう』といわれるようなものを作ろうと念願して作図したのが本作です」


佳作賞 曽根康夫作


第13期曽根氏作

佳作賞 曽根康夫作(34年5月号)
2四歩 1三玉 2三歩成 同玉 2五飛 1三玉 5七角 2四桂 同角 1四玉
1三角成 同玉 2三飛成 同玉 1四角 1三玉 2五桂まで17手詰
塚田九段「形の整っているわりに、目新しい手が幾つも現われて面白い」
第10期の新人賞に続いて二回目の受賞。2五歩を飛車に打ちかえて、1三玉の形で角の遠打ちで桂合を強要する。これが変則合なのも味が良く、再び飛車を捌いて収束。つまり4手目の局面から飛角角の持駒が角桂に替ったというだけのことですが、アッサリとした配置と手順でこれを表現したところがセンスの良さです。
作者「構想当初において2五歩の配置はなかったのですが、後日これを加えこれを消す手順を思いついた。それにより、この作品に重量感を与え得たと思います」



ⓐは、実際にはAに○です。

巨椋氏作は「禁じられた遊び」禁じられた遊び第40番に収録されています。
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