塚田賞作品の魅力(7)(近代将棋昭和53年1月号)①

筆者が森敏宏氏から森田銀杏氏(詰将棋作家の肩書が付されています)にバトンタッチした「塚田賞作品の魅力」、第7回の前半です。
今回は第12期の受賞作を掲載します。
第12期塚田賞受賞者
短篇賞 椿井弘通
中篇賞 浮寝鳥
長篇賞 岡田 敏
昭和33年7~12月号


今月から、森敏宏氏に替って、このシリーズを担当することになりました。
この頃になると、塚田賞は詰将棋作家の最高の栄誉としての権威が確立し、これを目指して、好作が続々と寄せられるようになりました。黄楊の盛上駒という豪華な記念品も魅力だったのでしょう。
この期は中長篇の発表が少く、短篇に佳作がいくつかありました。受賞作のほか、小西逸生作(15手詰、9月号)や北原義治作(17手詰、10月号)は、いずれも角の遠打ちという高級手筋を簡潔な構図で実現した好作で、構想的短篇の萌芽といえます。


短篇賞 椿井弘通作


第12期椿井氏作

短篇賞 椿井弘通作(33年10月号)
7六角 5九玉 5八金 6九玉 6八金 同竜 5九金 同竜 8七角 7九玉
7八竜まで11手詰
塚田九段「使用駒は飛角金二枚づつで出来ており、駒数の少いのにかかわらず、案外まぎれがあって上級向きの作となっている。初手も金を打たずに7六角引とするところが気に入った。金を5八から6八に捨て、そして5九に打ち捨てる手順が良い」
作者は当時19才の学生で、この頃、軽快な短篇をいくつか発表した新鋭作家でした。本作は、7六角と据えて6八金の二段活用から5九金が一組みになった軽快手で、飛角図式にまとめたところが、センスの良さといえます。
作者「本局は飛角図式で形は良いのですが手順が比較的平凡なので余り期待してなかった。しかし入賞の知らせを受けてから会心作に思えてきたから全く不思議です」


中篇賞 浮寝鳥作


第12期浮寝鳥氏作

中篇賞 浮寝鳥作(33年7月号)
9二角不成 9四玉 8五金 同玉 7四角不成 9四玉 9一飛不成 9三歩合 9五金
同玉 9三飛不成 9四銀合 9六歩 8四玉 8三角成 同銀 9五飛成まで17手詰
塚田九段「17手なのにナラズが四回あって詰上りも角がさばけて引きしまっている」
手順だけを見れば、角飛それぞれ2回づつの不成で打歩詰を回避するだけの作品のように見えますが、持駒にも、盤面玉方にも歩のないこの局面から、初手の角不成を予想できる人はまずないでしょう。中盤に合駒で歩を手に入れ、13手目になって初めて打歩詰の形が出現する。ここで苦吟してようやく飛角大駒の不成に気付く訳で、打歩詰回避の不成ものとしては完璧な構成となっています。また、3手目の8五金は、同桂なら8三角成の妙手を秘めた好手で、序盤のポイントです。
作者は、不成ものを主体に、新感覚の傑作をいくつか発表して、当時の注目を集めました。前期の新人賞に引き続いての連続受賞は立派です。
作者「光栄の至り。何もいうことはありません。なお新人賞を受けた時の○(のぎへんに喜)夫というのは病気中に祈祷師のつけた名で、河内繁夫が本名です」


長篇賞 岡田 敏作


第12期岡田氏作

長篇賞 岡田 敏作(33年12月号)
2二銀 同飛 同と 同玉 2四飛 2三桂合 1一角 1三玉 2三飛成 同玉
3五桂 同歩 3四金 同玉 4三銀不成 2四玉 3三角成 同玉 3四金 2二玉
2四香 2三桂合 同金 1一玉 2二金 同角 2三桂 2一玉 3三桂 同角
3一桂成 同玉 4一歩成 同玉 5一香成 同角 2一飛 3一香合 同飛成 同玉
3四香 3三桂合 同香 同角 3二香 4一玉 5三桂 5一玉 6一歩成まで49手詰
塚田九段「いきなり2二銀打から飛車を奪って2四飛と打つ。この所はゴツゴツした手順だが面白い。以下4三銀不成とする所までがヤマで、そこまでの15手が一連の好手である。後半の部分も合駒をとり入れてうまくまとまっている。ただし、なんとなく物足りぬような感じもする」
四回にわたる合駒選びを交えて、軽手を連発しながら切れるようで切れない手順をつみ重ねていく、当時はやった典型的な短打型の長篇です。全体を通じての主題がはっきりしないのと、合駒限定のための四香を盤上に配置して、駒数が多くなったのが惜しまれますが、この期に発表された唯一の長篇ということで受賞したのは幸運でした。
作者は、当時、療養中に詰将棋に熱中されたという遅咲きの作家ですが、この受賞を機に、数多くの軽快作や曲詰を発表し、現在もなお壮棋会の主力として盛んに創作活動を続けておられるのには敬服します。
作者「年甲斐もなく、喜色満面という所です。受賞作は今年(33年)の正月に、割にスラスラと創作したもので、前半は軽妙な捨駒の連続、後半は巧妙な合駒の綾を織込み、さばきの良い軽快長篇で、私の数多い作品中でも、五指に入るほど気に入った作品でした」
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