塚田賞作品の魅力(5)(近代将棋昭和52年11月号)①

森敏宏氏の連載「塚田賞作品の魅力」、第5回です。
今回は第8期の受賞作を掲載します。
第八、九期の受賞作

第八期受賞作(31年7~12月号)
短篇賞 田辺国夫
佳作賞 平井孝雄
佳作賞 竹内 伸
佳作賞 北原義治

中、長篇は該当なし

今期の塚田賞は田辺国夫の一作だけという淋しい結果に終っている。このころは詰棋界不作の時期だったのか。


短篇賞


第8期田辺氏作

田辺国夫作(31年7月号)
1四歩 同玉 3六馬 同歩 1三飛 同玉 2五桂 1二玉 2四桂 同歩
1三桂成 2一玉 2二竜まで13手詰
塚田九段「短篇作の中ですぐれたものといえば、田辺国夫、竹内伸、平井孝雄の三局であろう。この三局中から一局を選ぶのは仲々むずかしい。わずかに、そうほんのわずかに田辺国夫作が勝ると思われるので推奨した。惜しくも入賞にならなかった、竹内伸作も香四枚の配置や、1四金から2五銀は巧い。平井孝雄作も銀四枚の趣向で詰め上りも気が利いている」
作者「二度目であり、ある程度予期していたにもかかわらず、胸の底から突き上げてくるようなうれしさで一杯。1三飛は正に快心の一手」
作者がいわれるように1三飛は当時話題になった新手筋。1三飛は飛車の性能をいかんなく発揮した絶妙の一手で、この筋は以後の詰将棋にかなり応用されたものである。
塚田賞短篇としては、上位に入る作品であろう。


佳作賞


第8期平井氏作

平井孝雄作(31年9月号)
7八銀 7九玉 8八銀 同玉 7七銀打 9七玉 8六銀打 9六玉 8七銀 同玉
8八竜 9六玉 9七竜まで13手詰
作者「はじめから塚田賞など眼中になかった上(達観?)(、)全般に小生作は他の作品に比べて少し落ちるとあきらめていたため、今度の受賞は意外でした。どうやら形と持駒の面白さを買われたようです。何しろ愉快です」
盤上二枚に持駒銀四枚というユニークな作品。竜での王手はないから、銀を打っていくことになるが、手順にいや味がない。初手に打った7八銀が最後にさばけるのは気分のいい順である。


佳作賞


第8期竹内氏作

竹内 伸作(31年12月号)
2七桂 同香成 1四金 同玉 2五銀 同玉 3五飛成 1四玉 1三金 同玉
1五竜まで11手詰
作者「思いがけず佳作入賞との報を得、喜んでいます。行き詰まりつつあると思われる短篇に、いくらかでも新味を盛ったものを作りたいと思います」
当時の短篇界で作者など新鮮味ある作品を数多く発表していたもので、本作品もその一つ。
1七香だけは歩でもよいと思うが、四香の配置にしたところに、作者のセンスの良さが出ており、これが成功したか。香の位置を逆用した手順もサラリとして好感が持てる。


佳作賞


第8期北原氏作

北原義治作(31年7月号)
9四飛打 8二玉 8四香 7二玉 8三香成 同玉 8四金 7二玉 8三金 同玉
7五桂 7二玉 6三飛成 8二玉 8四飛 同角 7二竜 同玉 9四角 8二玉
8三角成まで21手詰
塚田九段「中篇の部で北原作を掲げた。巧すぎるほどの終束だが、入賞するには一本筋金が欲しいと思う。この人の作は一応安心して見られるが、入選のツボを心得ているので巧妙に逃げて安易におちいりやすいのだろう。佳作で惜しい気もするが、入賞にはちょっと……というのがいつわらぬ私の気持だ」
作者「何回もらってもよいものだ。今一歩というところで塚田賞になれなかったのは誠に残念」
実戦形でこのようなスキのない手順をみせられると、批評の余地がないというものだろう。作者の丹精こめた作図による完ペキな手順はすばらしい。
32年3月号に田辺国夫と北原義治の受賞対談が載っているがその中で北原作にまぎれの話が出てくる。それは作意13手目6三飛成で7一と金とするキワドイ順で、以下同玉 6二銀 同玉(8二玉は8四飛左 同角 同飛 7二玉 6一角 6二玉 6三桂成 同玉 4一角 6二玉 5二角右成 7一玉 8一飛 同玉 6三馬 8二玉 7二馬 9三玉 8三馬まで) 6三飛成 7一玉 5三角 8二玉 6二竜 7二金合以後手は続くが、かすかに逃がれている。



田辺氏作は以前掲載した際にご指摘いただきましたが、3手目4四龍でも詰んでしまうようです。

平井氏作、「近代将棋図式精選」においては1八龍が2八龍になっております(作意不変)。
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