続・塚田賞作品の魅力(29)(近代将棋平成9年9月号)②

今回は中篇部門を取り上げます。
第79期(平成4年1~6月号)

中篇賞 林 雄一作


林 雄一作(H4・6) 詰手順
45香 ②同桂 54金 同龍 53金 ⑥同玉 33飛成 ⑧43馬 54香 同玉
66桂 同香 46桂 同と 64飛 55玉 44龍 同馬 65馬まで19手詰
②同龍は55桂、54玉、66桂、同香、64金、44玉、43金、同馬、同桂成以下
⑥同龍は同香成、同玉、33飛成、43合、65桂、同香、63飛以下
⑧43歩合は54香、同玉、66桂、同香、46桂、53玉、63飛、52玉、66飛成以下(同手数、駒余り)
詰筋の見えにくい初形ですが、とりあえず45香で上部から攻めてみます。②同龍に55桂…がシャレた変化。同桂で香筋が通ったのに、54金、同龍とこれを塞いでしまって53金と打つのが味のある手順です。続く33飛成に43馬とする移動合は65に利かすのが目的ですが、あとはポンポンと桂を打ってから44龍捨てで馬の利きを外せば都詰。しかもHの字なので、解いた人はアッと驚かされます。
初形には駒の影が一枚もなかった所に字が現れる炙り出しは意外性が大きく、動駒率も百%なので解後感は抜群です。作者にとって初めてとは思えない見事な曲詰でした。
谷口均「好形・好手順。まばゆいばかりの鮮やかな作意に、意外な詰上りの夢を実現した理想的な格調の高い曲詰」
兼井千澄「不動駒なしとか、都曲詰とか、そういうレベルでは形容しきれない作品。中段玉の好局と思う」
服部敦「調和の極致と言えそう」


中篇次点 岡本眞一郎作


岡本眞一郎作(H4・5) 詰手順
26金 17玉 25金 ④16玉 17歩 27玉 63角生 ⑧54歩合 同角生(途中図)

途中図(9手目63角生まで)
第79期岡本氏作

45桂跳 28歩 37玉 67飛 ⑭57桂生 38金 46玉 35角 同歩 47歩 55玉
65飛 44玉 43角成まで23手詰
④26歩合は18歩、27玉、26金、37玉、67飛、57歩合、38金以下
⑧45(36)香合は同角成、同桂、26金、37玉、67飛(36金右)以下
⑭57桂成は38金、46玉、47歩以下
金移動の軽い序奏の後、63角生から主題が始まります。36・45合では早いことを確認し、37玉なら67飛、57歩合、38金、46玉、35角、同歩、47歩…で詰むとなれば、次に考えるのは54歩の中合。これも同角生と取ると37玉なら先程と同じような手順で打歩詰が解消できて歩が余ります。はて面妖な…と途中図を眺めていると、妙応手が見つかりました。54角生には45桂跳びで一旦は角道を遮りますが、67飛にもう一度57桂生と跳んで打歩詰の形にする…これが最長手順なのです。
打診中合と呼ばれる54歩に備える角生に始まり、玉方桂を二段跳びさせる移動中合も不成とは何と奔放な構成でしょうか。不成ものの名手の面目躍如たるものがあります。
服部敦「高度な打診合」
岡田敏「手数に比して盤面駒数が十六枚とやや多いが、内容は非常に高度であり、57桂生という不成移動中合を繰り込んだ歩詰作品で、感心した」
伊藤果「これぞ中篇という出来で、これだけの内容を20手台前半に凝縮させた腕前は天晴の一語に尽きる。ことに移動合で活用する桂の跳躍は駒から魂の叫びを感じる」
谷口均「不成の第一人者らしく、豪華絢爛たる手順にはあでやかに咲く華の賑わいがある」


中篇次点 山田康平作


山田康平作(H4・5) 詰手順
23角成 31玉 53角 ④42金合 34香 ⑥33歩合 同香 21玉 32香成 同金
13桂 11玉 44角成 ⑭22桂合(途中図)

途中図(14手目22桂合まで)
第79期山田氏作

21桂成 同玉 32馬 同玉 33歩 ⑳41玉 42歩 51玉 52歩 同玉
53金 51玉 41歩成 同玉 32歩成 同玉 43馬 31玉 42金まで33手詰
④42飛合は33香、21玉、13桂、11玉、12歩、同飛、21桂成、同玉、31角成、11玉、12馬以下
⑥21玉は13桂、11玉、44角成、33合、同馬、同金、同馬、22合、21金以下
・33桂合は同香、21玉、31香成、同玉、43桂、21玉、13桂、11玉、44角成以下
⑭他の合は同馬左、同金、12歩、同金、同馬、同玉、23金以下
⑳21玉は43馬、11玉、12歩、同玉、23金、11玉、21馬、同玉、32歩成以下
盤上に僅か四枚の簡素図式。4手目に飛合の変化を読み、金合のときは34香と離して打ちますが、33歩の中合。これは44角成を防ぐためです。32香成と消し、あくまで44角成として22桂合をさせた途中図からもさらに20手近い積み崩しの手順が続き、爽やかに収束します。
簡潔な棋形からこのような好手順を引き出せたのは、作者の棋力とセンスのなせる技でしょう。
岡田敏「盤面僅か四枚という楚々とした形から、切れんとして切れない密度の高い攻防が出てくるのは驚嘆あるのみ。形に惚れ、手順に惚れてしまった」
谷口均「簡素な構図から奇跡的な高密度の攻防を見せた素晴らしい作品である」
服部敦「奇跡のような簡素図」
北原義治「成り行き式(逆算の反対)で諦めずに追った若さのもたらしたもの」
植田尚宏「作者が自負するだけある」



岡本氏作は氏の作品集「競馬式」不成百番第85番に収録されています。
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