続・塚田賞作品の魅力(25)(近代将棋平成9年3月号)②

今回は長篇部門を取り上げます。
第75期(平成2年1~6月号)

長篇賞 墨江酔人作


墨江酔人作(平成2年1月号) 詰手順
9六飛 ②1五玉 2五馬 同玉 3六金 1四玉 2五金 同玉 3六馬 3四玉
3五飛 ⑫2四玉 9四飛 8四歩合 2五飛 1三玉 1四歩 同玉 4五飛 2四玉
4六馬 1四玉 4七馬 2四玉
5七馬……5八馬……6八馬……5八馬……5七馬……4七馬……4六馬……1四玉
3六馬 2四玉 (1)2五飛 1三玉 1四歩 同玉(途中1図)

途中1図(44手目1四同玉まで)
第75期墨江氏作1

8五飛 ㊻2四玉 8四飛寄 7四歩合 (2)2五飛……7五飛……7四飛寄 6四歩合
(3)2五飛……6五飛……6四飛寄 5四歩合
(4)2五飛……5五飛……5四飛寄 5四歩合
(5)2五飛……4五飛……4四飛寄 3四香合(途中2図)

途中2図(80手目3四香まで)
第75期墨江氏作2

(6)2五飛……3五飛……3四飛寄 同金 同飛 同玉 3五金 4三玉
5三銀成 同金 同銀成 同玉 5四金 6二玉(途中3図)

途中3図(98手目6二玉まで)
第75期墨江氏作3

7二銀成 同金 同と 同玉 6四金 8三玉 7二馬 [106]同玉 7三金打 7一玉
8三桂 6一玉 6二歩 5一玉 5二歩 同玉 6三金寄 4三玉 5三金寄 3二玉
4二金 3三玉 3四香まで121手詰
初手2五馬と龍を取る前に9六飛と遠打ちをしておくのが第一の状態ですが、②4六香合、2五馬、同玉、3六馬、3四玉、3五飛、2四玉、9四飛、8四歩合、2五飛、1三玉、1四歩、同玉、4五飛、2四玉、4六馬…や②8六歩合、同飛、1五玉、2五馬、同玉、3六馬、3四玉、3五飛、2四玉、2五飛、1三玉、1四歩、同玉、4五飛…などの変化も克服しなければなりません。
次いで3六馬の前の4七金を消去しておくのが第二の伏線。これで4七馬以下の馬鋸で歩二枚を補充しておくことができるのです。
こうして途中1図から8五飛と開き(㊻2五角合なら同馬、1三玉、2二角、同香、同銀、同玉、2一桂成、3二玉、4三馬、同玉、5三銀左成、同金、同銀成、同玉、5四歩…)(、)四段目の歩合を取りながら飛車を寄せてくる8手サイクルの趣向手順が始まります。なお途中1図で先に8四飛と歩を取ると同金、8五飛に対し2五角合以下の変化手順に入って5四歩のときに金の位置の違いで6三玉…と逃れます。この辺りの変化と紛れの差は紙一重です。
五段目の飛車の開く場所が次第に近づいて来て途中2図から収束に向かいますが、その前の3五飛に対する[86]2五角合の変化が、同馬、1三玉、2二角、同香、同銀、同玉、2一桂成、同玉、3一銀成、同玉、3四飛寄、同金、同飛、3二桂合、同飛成、同玉、4四桂…とそれまでとは手順が変わることに注意する必要があります。
途中3図では7四桂と打ちたくなりますが、7一玉、7二香(歩は打てない!)、同金、同銀成、同玉、6四金、8三玉、7二馬、8四玉、7三馬、8五玉…で逃れ。単純に7二と、同金、同銀成…とバラし、6四金から7二馬…と捨てて漸く大団円となりました。
本局は遠打ちした飛車がもう一枚の飛車の力を借りて次第に近づいて来るという珍しい趣向手順を主題とし、最後は殆どの駒を綺麗に捌いて終わらせる作者お得意の構成に加え序盤に金の消去から馬鋸による二歩奪取の伏線まで入って多岐にわたる紛れと変化も内蔵した傑作で、豪華遺作集『将棋墨酔』だの第七十九番に納められました。作者にとっても代表作の一つであり、ほぼ満票を得て大作家としての最期を飾ることができたのはお見事でした。
岡田敏「二枚飛車による面白い趣向で、序の金捨ての伏線が生きている」
吉田健「鮮度あふれる趣向手順を、技法の集大成とも見なせる見事な構成で描破」
柏川香悦「一手一手の手順に深味があり、二枚飛車の連係プレーでじわじわ迫る様は圧巻。傑作である」
北原義治「これぞ<風格>である」
桑原辰雄「改めて七條(詰)将棋の長篇の熱意に脱帽」
谷口均「ややゴテゴテした墨江氏の作風は好みに合わない面もあったが、本作は作者なりに趣向を力強く表現した点を買う」
金田秀信「対抗馬が見当たらない」


長篇次点 大光菱輝作


大光菱輝作(平成2年5月号) 詰手順
3八と右 4六玉 3六と ④同金 4八香 4七歩合 同香 同金 同と 同玉
4八と ⑫3六玉 3七金 2五玉 1五と 同玉 2六銀 1四玉 1五歩 1三玉
1二と 同玉 2二歩成 同香 同銀成 同玉 2一と 同玉 3一香成 1一玉
1三香 1二歩合 同香成 同玉 3四馬 1一玉(途中図)

途中図(36手目1一玉まで)
第75期大光氏作

4四馬 ㊳1二玉 4五馬…(馬鋸引き)…6七馬 1一玉 6六馬…(馬鋸戻り)…3四馬
1一玉 3三馬 1二玉 2三馬 1一玉 2一成香 同玉 3二と 同金 同馬 同玉
3三金 4一玉 5一飛成 同玉 6二桂成 [76]同と 4二銀 6一玉 7二桂成 同龍
5一金 7一玉 8一歩成 同龍 同香成 同玉 9三桂打 同と 同桂 同金
8二飛 9一玉 9二歩 同金 同飛成 同玉 9三歩 同玉 9四歩 同玉
8四金 9五玉 9六歩 同玉 8七と上 9五玉 8六と(直)まで107手詰
全駒使用の大作で、導入部から厄介な変化があります。まず3手目3六とに④同玉は、3五と、同玉、5五飛成、4五歩合、3四馬、同玉、4四金、2五玉、1五と、同玉、4五龍、3五歩合、1六歩、1四玉、1五香、2五玉、3四龍、1六玉、1七歩、1五玉、1六銀、1四玉、2五銀、1五玉、2四龍…。歩合を稼ぎながら金をバラした後の11手目4八とが妙手で、⑫同玉なら5八飛成、3七玉、3八金、3六玉、4七龍、2五玉、1五と、同玉、2六銀、同玉、6二馬以下です。ここから3七金…2六銀…1五歩…と斜めに駒が並んだ辺りで大菱の片鱗が見えて来ました。
次いで上隅の駒をどんどん捌いて行き、3四馬と引いた途中図で4四馬(㊳2二香合は同馬、同玉、3二と、同金、同成香、同玉、3四香、2一玉、2二歩、1一玉、5一飛成、1二玉、2一龍、2三玉、3二龍…)から馬鋸で6七歩を取って一歩補充しておくのが収束に備えた伏線。2三馬まで戻って3二地点で金と刺し違え、3三金と据えて5一飛成…6二桂成…と左辺へ追い込んで行きますが、ここで[76]6二同金と同龍の変化が最後の難関です([76]同金なら4二銀、6一玉、6二銀成、同玉、7四桂、同龍、5三金…、[76]同龍なら同銀成、同玉、7二桂成、同と、5三銀、同玉、4三飛、6四玉、7六桂、7四玉、7五歩、同玉、4五飛成、6五合、6六金…)。ここを通過すれば、後は流れるような捌きの手順を経て9筋に三歩を連打して見事な大菱の形に詰上りました。

詰上り図
第75期大光氏作2

大菱の炙り出しは久留島喜内の妙案94番が一号局で、本作は七局目。途中に馬鋸の伏線が入った百手を越える力作で、大菱の最長手数記録を更新しました。作者名が明らかにペンネームなのでベテランの作品かと思いましたが、初入選の新人です。実は投稿図に早詰があり、作者は6七桂と6一とを入れ替えて途中図までの序盤を作り替えた修正図を用意していたのに原図の方が発表されたのは残念でしたが、修正図で候補作とされました。
柏川香悦「全駒使用、百手越えとは真に雄大。曲詰に馬鋸が出てくるとは驚きである。変化、紛れも多く、断然、光り輝いている」
北原義治「大型曲詰もそれだけじゃもう色褪せて消えるのか…」
吉田健「ただでさえ難物の大菱を馬鋸入りの長手数で実現。特技賞ものであろう」
岡田敏「馬鋸を入れて百手を超える大菱の最長手数だが駒配置に若干の無理がある」

〔追記〕
第71期長篇賞の墨江酔人作の余詰に駒場和男氏から左の修正案が寄せられました。

墨江酔人作「純四桂詰修正図」
第75期墨江氏作修正案



墨江氏作は残念な事に、5手目3六馬以下でも詰んでしまうようです。

大光氏作も11手目5八飛成以下で詰んでしまうようです。


次回からは第26回(第76期)に入ります。
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