続・塚田賞作品の魅力(25)(近代将棋平成9年3月号)①

森田銀杏氏の連載「続・塚田賞作品の魅力」、第25回(第75期)は2度に分けて取り上げたいと思います。
今回は短篇・中篇部門です。
第75期(平成2年1~6月号)

この年、6月号と7月号に「二上詰将棋精選」と題する付録が付きました。これは二上達也九段が塚田正夫名誉十段のあとを継いで昭和55年1月号から本誌の巻頭に出題された十年間の作品から九十六局を選んで解説したもの。指し将棋派にも詰将棋マニアにも受ける二上流の作品集として読者に喜ばれました。
さて、この期の短篇は数人のベテランに入選が偏ったためか、票が分散しましたが、実戦型好形の柏川香悦氏が八回目の受賞。中篇も好作が多くて票が分かれ、ついに「該当作なし」となりました。
長篇は受賞級の大作がいくつかありましたが、亡くなられた七條兼三氏の遺作に票が集中し、十三回目の栄誉を獲得されました。受賞回数がそれまでトップだった北原義治氏に追いついた上、山田修司氏の五期連続受賞という輝かしい記録にも並び、塚田賞受賞番付の東の横綱に叙せられることになりました。
なお、平成元年度の「三手詰最優秀作」には六十題の中から左図が選ばれました。この最優秀三手詰賞はこれが最後です。

第9回三手詰最優秀作
塩見倫生作(平成元年10月号)
第75期塩見氏作


第75期「塚田賞」選考投票 集計表



短篇賞 柏川香悦作


柏川香悦作(平成2年1月号) 詰手順
3二金 同金 4三桂 同金 2二香成 ⑥同玉 3二飛 1三玉 2三飛 1四玉
1二飛成 同香 2六飛成 1三玉 2三龍まで15手詰
初手4三桂や2二香成とするのは4一玉と角を取られて駄目。3二金で金を呼んでから4三桂と打つのが軽い序奏で、金のいなくなったところへ2二香成とするのは、えも言えぬ感触です(⑥4一玉なら6一飛…3一飛…の二丁飛車の挟みで早い)。
あとは3二飛から2三飛と意表外の展開になり、1二飛成捨てで綺麗に決まりました。
端正な実戦型でこの妙手順は気品あふれる完成品と言えましょう。
金田秀信「私の好みです」
北原義治「手づくりの芸。昔の少年の夢、いまだ失わずを感ずるのは喜ばしい」


短篇次点 桑原辰雄作


桑原辰雄作(平成2年1月号) 詰手順
2二龍 ②同玉 3三銀 同桂 3一角成 2三玉 1三金 同香 3二銀生 2四玉
1三馬 同玉 1五香 1四合 2三金まで15手詰
上部へ脱出されそうな形ですが、2二龍の強手で引き戻せます(②1四玉なら2四金、1五玉、1一龍、1三歩合、1七香以下)。ところが、この後、3一角成と早まると2三玉…で逃れ。その前に3三銀捨てで同桂と跳ねさせておくのが巧い手で、これにより1三金打ちから香を取って上から押さえることが出来ました。前局とは対照的に豪腕の実戦型好作です。
柏川香悦「3三銀から1三金は如何にも作者らしい骨っぽさを感じた。いつもながら力強い構成である」
植田尚宏「野性味を買う」


中篇次点 湯村光造作


湯村光造作(平成2年5月号) 詰手順
2四歩 3二玉 3三歩 4一玉 5一と 同玉 6一角成 4一玉 3二歩成 同玉
2三歩成 同玉 3四と 同桂 2四歩 3二玉 3三歩 4一玉 4二歩 同玉
4三歩 4一玉 3二歩成 同玉 2三歩成 同玉 2四銀行 1四玉 1五歩 2五玉(途中図)

途中図(30手目2五玉まで)
第75期湯村氏作

2六歩 同桂 4二歩成 3四合 3六銀まで35手詰
初手から2四銀行とすると1四玉で打歩詰の状態。ここから2五角、同玉、3五と、1四玉、1五銀、2三玉、2四と、3二玉、3三と、4一玉…と続く軽い手順はありますが、僅かに届きません。
そこで2四歩…3三歩…5一と…6一角成で角の位置を変えておき、3二歩成…2三歩成…と玉を呼び戻して3四と、同桂の形にすると2五への角の効きがなくなるので、2四銀と行って1五歩は打てるようになりましたが、2五玉でまたもや打歩詰です。
しからば…と、2四銀と行く前にもう一度2四歩…3三歩…から4二歩…4三歩…としておき、3二歩成…2三歩成…で再び元の形に戻して2四銀行…1五歩…とすると(途中図)こは如何に、2六歩が打てるではありませんか!これぞ作者が初めて試みた<馬筋の二重遮断による打歩詰回避>の新手筋(取歩駒を発生させる森田手筋のバリエーション)なのです。
趣向的な歩打ち…歩成の反復手順で打歩詰回避の仕掛けを造る前半の面白さに対して収束がやや呆気ないのが惜しまれるので、本局の解説時に筆者が「玉方6三角を加えて5三歩を詰方5四歩にし、持駒の歩を二枚増やすと、序盤と同じ歩打ち…歩成捨ての趣向手順が再び現れ、不動の銀も捌ける収束がつく55手詰になる」という改良案を提示したところ、作者は「歩詰手筋総まくり」の名稿に収録される(詰棋めいと19号)際にさらに導入部も追加して左図のように改良され、素晴らしい構想的趣向作品となりました。

改良図(59手詰)


伊藤果「ユーモラスな打歩詰回避で楽しめ、作図センスの若さに敬服します」
柏川香悦「改良案も評価に入れてのことだが、打歩詰回避の新工夫と歩による趣向手順との組み合わせだけに、長手数を感じさせない成功作である」
北原義治「若々しい先輩の理論に○」



柏川氏作は「詰将棋半世紀」盤上流転第139番に収録されています。
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