続・塚田賞作品の魅力(24)(近代将棋平成9年2月号)③

今回は長篇部門を取り上げます。
第74期(平成元年7~12月号)

長篇賞 添川公司作
「高天原」



添川公司作(平成元年10月号) 詰手順
9六と 同玉 9七歩 9五玉 9六歩 同玉 8七と 9五玉 9四銀成 同玉
8四と 同玉 8五歩 ⑭9三玉 8三と 同玉 8四歩 ⑱9三玉 8三歩成 同玉
7六と(途中1図)

途中1図(21手目7六とまで)
第74期添川氏作1

㉒9二玉 8二と 同金 同香成 同玉 8七香 ㉘8三銀合 同香成 同玉
7三と 同金 同と 同玉 6三と 同銀 同と 同玉 6四銀 同玉
6五と左 5三玉 5四銀 4四玉 4五銀 同金 5五金 同金 同と寄 3五玉
4五と寄 [52]2五玉(途中2図)

途中2図(52手目2五玉まで)
第74期添川氏作2

1六金 同香 3六金 同玉 4六と寄 2五玉 3五と寄 1四玉
1五金 同玉 1六歩 同玉 1七歩 1五玉 1六香 2六玉 3六と引 1七玉
2八と 1六玉 2七と 1五玉 2六と上 2四玉 3五と左 1四玉 2五と直 同桂
同と上 1三玉 1四歩 1二玉 2四桂 同成桂 1三歩成 同玉 2四と直 1二玉
2二歩成 同銀 2三と 1一玉 2二と 同と 2三桂 1二玉 2一銀打 同と
1一桂成 同玉 2一銀成 1二玉 1三歩 同玉 2四と 1二玉 2三と 2一玉
2二とまで111手詰

詰上り図
第74期添川氏作3

煙詰の傑作をいくつも発表してきた作者の三局目の小駒煙詰です。
まず9八歩を消去しておいて8五歩と香を取ったとき、⑭9四玉、9六香、(イ)9五歩合、同香、同玉、8六と、9四玉、9五歩((イ)9五角合ならここで8三角…)、9三玉、8三と、同玉、8四歩、9二玉、8三歩成、同玉、7五と、9二玉、8二と、同金、同香成、同玉、7三と、同金、同と、同玉、6四と寄…と綺麗な手順が続きますが、これは変化。むしろ危なく見える9三玉…の方が作意です。
8四歩の突き出しにも⑱9四玉は9六香、9五歩合、同香、8四玉、9六と、8六歩合、8五歩…で早い。7六とと開いた途中1図で㉒8四歩合のほか8五歩、8六歩などの中合に苦しめられますが、結局、合駒をする手はすべて早詰と分って9二玉。8二で金をバラして、8七香打ちに再び㉘8三・8四・8五の合駒読みが大変ですが、8三銀合が最善で、以下はと金の群れを次々に金銀と刺し違えながら右辺へ寄せて行きます。
4五とと寄った途中2図で[52]2四玉は3五金、1四玉、1三桂成、同玉、2五桂以下。[52]2六玉は2八香、2七歩合(銀合なら同香…)、3七金、2五玉、2六金打、1四玉、1五金、同玉、1六香以下です。
その後も1六金3六金の軽手を放ちながら二枚のと金をすり寄せて行き、1五金から1六歩で香を取ったとき、普通なら1七香…2八と…で押し戻すところですが、それでは1四玉のときに打歩詰。そこで1七歩1六香…と歩香重ね打ちの妙手が入ります。これは歩を一枚多く使いながら打歩詰を回避する高級手筋です。
その後はよくある小駒煙の収束ですが、燃え尽きた焚き火を棒でかき回して残り火を惜しむような気分に浸りながら、駒を消して行きます。いつもながらの練りに練った手順と見事な構成で、香気の漂う傑作です。
北原義治「柔らかいタッチの小駒煙。この収束をようも見つけたりやな」
金田秀信「小駒独特の柔らか味があり、洗練された感じを受ける」
吉田健「素晴らしいアイデアで、楽しさを満喫した」


特別賞 墨江酔人作


墨江酔人作(平成元年10月号) 詰手順
5九と 同玉 5八と 同と 同と 同玉 5七と 同玉 4六龍 6七玉
⑪6八歩 5八玉 6九と 同玉 4九龍 6八玉 4六馬 ⑱7七玉 8七金 同玉
7八金 同玉 7九龍 8七玉(途中1図)

途中1図(24手目8七玉まで)
第74期墨江氏作1-1

㉕9六銀 同玉 7六龍 9五玉 9四と 同玉
7四龍 9三玉 ㉝9四歩 9二玉 8二金 同成桂 同歩成 同玉 ㊴9三歩成 同玉
8五桂 9二玉 9四龍 8一玉 8二歩 同玉 9三龍 7一玉 7二歩成 同玉
7三桂成 6一玉 6二桂成 同玉 5三香成 同飛 同龍 同玉 5四歩(途中2図)

途中2図(59手目5四歩まで)
第74期墨江氏作1-2

[60]6二玉
6三香 7一玉 7二歩 同玉 8二飛 6三玉 8三飛成 5四玉 7四龍 4三玉
4四香 5二玉 4三香成 同玉 3四龍 同玉 3五馬 4三玉 5三金 3三玉
4四馬 2三玉 3五桂 3二玉 2四桂 同馬 4三金 2一玉 2二歩 3一玉
3二歩 同銀 同金 同玉 4三馬 2二玉 2三銀 同馬 同桂成 同玉
1二角 2二玉 2一角成 2三玉 1二馬 2四玉 3四馬右 1五玉
2五馬まで109手詰
次局とともに同時発表された煙詰の連作。こちらは二枚馬による詰上りです。
最初はと金の捌きですが、4六龍や3七馬に合駒がないので手を進めることができます。⑪4七龍、5七歩合に7六銀…や6八歩…の紛れと⑱5七桂合、4八龍、5八歩合、5七馬、7七玉、6九桂、同香成、8七金、同玉、8八歩、9七玉、8六銀、同玉、4六龍…の変化を克服して途中1図。ここで㉕7六銀と引くと9六玉、9七歩、9五玉…で届きません。9六銀と捨てて7六龍と上がれば30手余りは一気呵成に進んで途中2図に至りますが、㉝5七馬、6六歩合、同馬…として一歩稼いでおく手や、㊴7二歩成…などの際どい筋もいくつか潜んでいるのです。
5四歩と突き出した途中2図では[60]同玉、6四飛、4三玉(5三玉は5四香、4三玉、6三飛成…)、4四香、同金(5二玉は5三歩、5一玉、4一香成…)、同飛、5二玉、5三歩…などの変化もありますが、作意は6二玉と躱し、6三香…7二歩…と斜め連打をして龍を手繰り寄せる軽い趣向手順になります。
その後、3四龍と金と刺し違えてからの収束に入っても変化や紛れがありますが、最後は二枚の馬による詰上り。角と馬による煙詰はそれまでにもありましたが、双馬というのは初めて。まさにコロンブスの卵です。

詰上り図
第74期墨江氏作1-3


特別賞 墨江酔人作


墨江酔人作(平成元年10月号) 詰手順
9九龍 7八玉 9八龍 ④7七玉 7六と 同玉 6六と 同金 ⑨7五と引 7七玉
6七金 同金 7八歩 同金 7六と 同玉 7八龍 8五玉 9五と ⑳同玉
7五龍 9四玉(途中1図)

途中1図(22手目9四玉まで)
第74期墨江氏作2-1

㉓8三銀打 同と ㉕同銀 同玉 7三と 同と 8四歩 同と
7二角 9二玉 8二金 同玉 8四龍 7二玉 ㊲6二桂成 同と 同香成 同玉
5二歩成 6三玉 6二と 同玉 5二桂成 同玉 5四龍 4一玉 3二歩成 同玉
3三歩 2一玉 2二銀成 同玉 5二龍 3三玉(途中2図)

途中2図(56手目3三玉まで)
第74期墨江氏作2-2

[57]3四歩 同玉 5四龍 3三玉
[61]2四と 同香 同角 2二玉 [65]2三香 同玉 4三龍 2四玉 2五歩 同桂
同と 同玉 1六金 3五玉 3六歩 同玉 3七金 同玉 2六銀 3六玉
3七歩 同龍 2五銀 3五玉 2七桂打 同と 同桂 同龍 3六歩 同龍
同銀 同玉 [93]2六金 同玉 4六龍 2七玉 2三飛 3八玉 3三飛成 2九玉
4九龍 1八玉 3八龍引 1七玉 [105]4七龍上 2六玉 2七龍左 1五玉 1八龍左
まで109手詰
前局と同時発表された二枚龍の煙詰。本局も合駒なしの龍追いから始まります。中段のと金捌きにはすぐに入れますが、⑨7五と寄として8六玉、8八龍、8七歩合、8五と、同玉、9五と、同角、8七龍、8六角の後、9六銀、9四玉、8四と、同玉、8六龍…や8四と、7五玉、7六歩、6四玉、6六香…のような際どい紛れもあります。ここを通過すると途中1図までは容易でしょう。
途中1図辺りで㉓8四金、同角、8五銀、9三玉、8四銀…としたり、㉕8五金、9三玉、8三銀成、同玉、7三と、同と、6五角、7四歩合、同金、9四玉、7六角、9三玉、9五龍…のような筋もありますが、いずれも続きません。作意は単純なバラシで進みます(途中で㊲7三歩と打つと7一玉、6二桂成、同と、同香成、同玉、5二桂成、6三玉、6二成桂、同玉、6四龍、6三金合、5二歩成、同玉、5三角成、同金…で詰みません)。
さらに左辺へ玉を追って途中2図。ここで[57]2四となら同香、同角、同玉、2五と、同桂、同歩、同玉、1六金、3六玉、3七金、同玉、5七龍、4七龍、4八銀、3八玉…で逃れ。また、[61]2四角、3二玉、3四龍、2一玉、2三龍、2二歩合…や、[65]1三角成、同玉、2五桂、1二玉、5二龍、2二銀合、1四香、2一玉、3三桂、同銀、1二香成、3一玉、2二成香、同銀…のような危ない筋もあります。その後はどんどん捌けて、3七龍を取ったところで2六金と捨てるのが最後の好手。[93]2六飛、3七玉、4六龍、3八玉、3六飛…と追えるだけに爽快な一手です。

詰上り図
第74期墨江氏作2-3

収束に[105]1九龍…の別詰はありますが、作意は全局の双馬煙とおなじく109手で1五玉の詰上り。その双龍煙も初めてで、煙詰の歴史に遺る姉妹作と言えましょう。
桑原辰雄「二枚馬と二枚龍の煙詰、傑作」
伊藤果「煙詰がこうまで気高く完成されてくれば、看寿もさぞかし喜んでいるに違いない」
金田秀信「故人への追悼の意を込めて特別賞としたい」

〔追記〕
12月号に解説した第72期短篇賞の平正利作について「作者自身が5手目から8三角成、1八玉、1九歩、2七玉、3八馬、3六玉、2六金、4五玉、5六馬、5四玉、5五馬…の余詰を発見し、九州大学将棋部の『九棋』第9号で玉方1五歩を銀に修正しています」という通報を山下雅博氏から戴きました。感謝して補足いたします。



「将棋墨酔」では、双馬煙詰が第95番、双龍煙詰が第96番にそれぞれ収録されています。

次回からは第25回(第75期)に入ります。
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