続・塚田賞作品の魅力(24)(近代将棋平成9年2月号)①

森田銀杏氏の連載「続・塚田賞作品の魅力」、第24回(第74期)も3度に分けて取り上げたいと思います。
今回は短篇部門です。
第74期(平成元年7~12月号)

この年、5月5日に名古屋で第五回全国詰将棋大会が開かれました。昭和37年に結成された全日本詰将棋連盟の主催で、二十三年ぶりに復活したもの。八十三名もの詰将棋愛好家が集い、交流を深めました。その後、この大会は毎年開かれています。
その年の暮れに黒川一郎氏と「墨江酔人」のペンネームでお馴染みの七條兼三氏のお二人の巨匠が相次いで逝かれました。
黒川氏は名著『将棋浪曼集』でも知られる趣向詰の泰斗で、その作品の数々は盤上の駒が奏でる詩とも言えるもの。加えて昭和27年に看寿以来の煙詰を発表し、38年にはそれまで不可能とされていた小駒煙で棋界を驚かせるなど、多才な大作家でした。
七條氏は昭和40年頃に五十歳近くで詰棋界に登場して続々と大作を発表誌、塚田賞を十三回も受賞した長篇作家です。その三回忌に上梓された豪華本『将棋墨酔』には歴史に遺る条件作や趣向作の数々が収められました。


第74期「塚田賞」選考投票 集計表



短篇賞 真 尚哉作


真 尚哉作(平成元年10月号) 詰手順
6六角成 3三歩 ③3四龍 同歩 3三銀成 1四玉 1五金 同玉 4八馬
⑩2五玉 2六銀 1六玉 1七歩 2七玉 3七馬まで15手詰
初手は角の開き王手しかありませんが、5五角成では1四玉、1五金、同玉、3七馬、2五玉、2六銀、1六玉で打歩詰。6六(または7七)角成はこれを避ける意味ですが、玉方はあくまで打歩詰に誘致しようと3三歩と突き出します。これを③同銀成…では先程の紛れ順で4八馬に3七歩合、同馬…となって同じ形に。そこで3四龍捨てがこれを切り返す絶妙手で、3筋に歩が残れば⑩3七歩合が出来なくなるという狙いです。
打歩詰の禁じ手をめぐる虚々実々の駆け引きを短手数で実現した作者は「有吉純男」名で知られたベテランですが、二人のご子息の名前から取ったというペンネームでの初受賞でした(なお、詰方4七歩は、後に入野孝氏から③3三龍…の紛れ順に4七馬と寄る余詰が指摘されて追加したものです)。
吉田健「ケレン味で印象に残る作」
谷口均「まさにこの序盤の応酬を見てくれという作だが、収束の腰くだけは残念」
柏川香悦「このような高級な狙いを短篇に纏めた意欲は買えるが、無理が形に出た」
北原義治「構想とまとめのアン・バラが惜しい」
金田秀信「形は悪いが、内容の新鮮さを買う。ただ、初手角成の場所は限定したい」


短篇次点 植田尚宏作


植田尚宏作(平成元年12月号) 詰手順
3一飛成 ②同玉 5三角成 ④4二桂合 同馬 2二玉 3二馬 同玉 2四桂 同歩
4一角 2二玉 2三金 3一玉 3二角成まで15手詰
誰もが3一角と打ちたくなる実戦型ですが、1二玉、2二金、1三玉、3五角、2四歩、2一金、2三玉…で逃れます。初手3一飛成が意表を衝く奇手で、②1二玉の躱しに1三金、同玉、2二角(1二玉なら1一角成、同玉、3三角成…)、2四玉、3三角引成、2五玉、4三馬、2四玉、2五馬、同玉、3五龍…(駒余り15手)の詰みを読み切らねばなりません。
3手目の5三角成に4二桂の捨て合が入るのも軽妙。④2二玉、3一角、1二玉、2二金、1三玉のときに3五馬…と引かせないためです。桂を手にして3二馬捨てからの収束も綺麗で、桂香図式の傑作です。
桑原辰雄「好感度作品。初手3一飛成の変化手順を買う」
岡田敏「初手の意外性と4二桂の捨て合は大いに買えるが、収束は定型的」
北原義治「毎月の登場、衰えぬ創作力には敬服のほかござらぬ」



有吉氏は作家名「有吉澄男」、本名「有吉純夫」かと思われます。
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