続・塚田賞作品の魅力(23)(近代将棋平成9年1月号)③

今回は長篇部門を取り上げます。
第73期(平成元年1~6月号)

長篇賞 墨江酔人作
「矢来くずし」



墨江酔人作(平成元年3月号) 詰手順
6二成桂 8一玉 7二成桂 9二玉 8二成桂 9三玉 8三成桂 同玉 7三歩成 9三玉
8三金 9四玉 8五と 同玉 7五と上 同と 同と 同玉 6五と ⑳同玉
6四と寄 7五玉 7四と寄 8五玉 8四と 9五玉 9四と 同玉 9六龍 9五桂合
9三金 8四玉 8六龍 8五歩合 8三と 7四玉 7六龍 7五歩合 7三と右 6四玉
6六龍 6五歩合 6三と右 5四玉 5六龍 5五歩合 5三と右 4四玉 4六龍 4五歩合
3四と 同玉 3七龍 3五歩合 4三銀 2四玉 2八龍 同と 2五飛 1四玉(途中1図)

途中1図(60手目1四玉まで)
第73期墨江氏作1

(一)3五飛 2四玉 2五飛 1三玉 1四歩 同玉
(二)4五飛…(繰返し)…1四歩 同玉
(三)5五飛…(繰返し)…1四歩 同玉 (四)6五飛…(繰返し)…1四歩 同玉
(五)7五飛…(繰返し)…1四歩 同玉 (六)8五飛…(繰返し)…1四歩 同玉
(七)9五飛…(繰返し)…3五飛 2四玉(途中2図)

途中2図(104手目2四玉まで)
第73期墨江氏作2

3四飛 1五玉 1四馬 2六玉 3六馬 1七玉 2九桂 同成桂 1八歩 同と
同銀 2八玉 2九銀 同玉 3九金 同玉 4七馬 2八玉 3八飛 1七玉
2九桂 2六玉 3六飛 1五玉 3五飛 2四玉 3四飛 2三玉 1四馬 2二玉(途中3図)

途中3図(134手目2二玉まで)
第73期墨江氏作3

3一飛成 同玉 4二と [138]同角 同銀 同玉 5三角 3三玉 3四歩 [144]4三玉
4四銀 5四玉 3六馬 6五玉 6四角成 6六玉 5五銀 7六玉 5四馬右 8五玉
7四馬 9五玉 9四金 8六玉 8七歩 同金 6四馬右 7六玉 7五馬まで163手詰
初手6二と右と入りたいところですが、成桂を寄るのは軽い伏線。この成桂の押し売りは8三まで行ってやっと取られ、7三歩成が実現します。ここから中段のと金捌きに入り、6五と(⑳8五玉は8四金、9五玉、9六歩、8四玉、8六龍、8五金合、7五と、9三玉、8三と…)から6四と寄のとき、初手6二と右としていると、ここで5五玉…と躱されて詰まないのです。
このと金を9四まで寄せて9六龍に9五桂合、9三金、8四玉、8六龍に8五歩合…となると本作の趣向が見えて来ました。五段目に歩合を並べさせて行く「矢来組み」です。
と金の鎖と連携しながら4六龍、4五歩合まで来て3四と…3七龍でもう一つ3五歩合をさせ、2八飛と刺し違えて途中1図。ここから飛車の開き王手で横並び歩の連取り趣向が始まります。一サイクルごとに歩を叩くので、持駒の歩の数は変わりません。終に9五桂を取って3五飛と開きます(途中2図)。
ここから3四飛として縦の捌きに入り、2九桂と打って再び追い上げた途中3図からの収束が意外に難しい。3一飛成と切った後の4二とには[138]2二玉、2三銀、1一玉、1二銀成、同玉、2四桂、2二玉、3二と、1一玉、2一と…の変化があり、5三角と打ってからも3四歩に[144]同玉、3五銀、4五玉、4四角成、5六玉、5七歩、6五玉、4七馬、7五玉、7四馬…を読み切ってから再び広々とした中原へ逆戻りしますが、二枚馬の追撃で網を絞りこんでやっと捕り押さえることができました。

参考図 黒川一郎作「矢来」


一列に横並びの歩合を発生させる趣向は黒川一郎作「矢来」(本誌S45・7)が最初ですが、本局は発生させた並び歩を飛車の連取りで消してしまう複合趣向にしたところが新機軸で、「矢来くずし」の題名もぴったり。さらに盤面一杯に拡がっていた駒を殆ど捌ききる収束が素晴らしく、十一回目の受賞となりました。
吉田健「複合趣向手順の構成が見事」
柏川香悦「趣向の見事さは言うまでもないが、後半、矢来の崩しから収束にかけて駒がどんどん消えて行くところは真に圧巻」
岡田敏「一度発生させた並び歩を飛車の開き王手で取ってしまう趣向が新しく生きている。収束も無駄なく捌ききって文句なし」


長篇次点 関 半治作


関 半治作(平成元年5月号) 詰手順
8二龍 7二香合 2二桂成 1三玉 ⑤2三成桂 1四玉 8四龍(途中1図)

途中1図(7手目8四龍まで)
第73期関氏作1

7四香上 同龍 ⑩6四香合 同龍 5四香合 2四成桂 1五玉 7五龍
5五香上 同龍 4五角打 2五成桂 1六玉 4六龍 3六角(途中2図)

途中2図(22手目3六角まで)
第73期関氏作2

2六成桂 1七玉 1八香 同玉 4八龍 1七玉 1八香 同角成
1六成桂 同玉 1八龍 同角成 1七香 同馬 4三角 1五玉 2五角成まで39手詰
初手から2二桂成…2三成桂…と追って、2六成桂、1七玉のとき7七龍と金を取ると6七歩合で、8一角の利きが2七に届いていて詰みません。こんなときは8二龍として7二合をさせ、角道を塞ぐのは常套手段。後の龍引きに備えて、この合駒はです。
これで作者の狙いが看破できた…とばかり、2二桂成から⑤8三龍、7三香上、同龍、6三香合、2三成桂、1四玉、7四龍、6四香上、同龍…と作意同様の手順で41手詰とすると誤解。⑤8三龍には3三歩合で逃れるという罠が仕掛けてあるのです。
作意は8三龍ではなく8四龍と二段引き。これに対して⑧7四香打なら2四成桂…2五成桂…8六龍…7七龍…で角筋が通らないので、途中図から7四香と浮きます。同龍に直ちに5四香合も2四成桂…から7七龍で金を奪って早い。そこで6四香という絶妙の捨合が入ります(⑩6四歩合は2四成桂…から変化図のように金を取って、6七桂合、1六成桂、同玉、6六龍、3六合、1八香…。6四香の場合はこの手順は成立しない)。

変化図(⑩6四歩合…7七龍まで)
第73期関氏作3

6四香を同龍と取ると再び5四香合となり、7七金を狙う7五龍にも5五香と突き捨てます。最後の4五合は角しかなく、4六龍で3六角(途中2図)と移動合をさせた後、この角と刺し違えて収束に向かいます。
角道を塞がせた香(または歩)を突き捨てる構想は本局以前にもありましたが、7二・6三・5四と規則的に打って行くのではなく、龍の動きも、それに対する香合の仕方も変則的なところが面白く、3月号の初入選作「凧あげ」とともに、本格的に詰将棋作家としてデビューした構想的趣向作品です。
伊藤果「構想力の雄大さ、緻密な計算、新機軸の趣向とが見事にマッチした秀作」
谷口均「手数は長くないが、長篇らしい趣向で、存分に楽しめる」
柏川香悦「独特の味わいがあり、力作」

〔追記〕
前々号で解説した第71期長篇賞の墨江酔人作に対して安江久男氏から次の余詰が指摘されました。即ち、作意80手目(途中図)から、

墨江酔人作「純四桂詰」
途中図(80手目6二同玉まで)
第73期墨江氏作純四桂詰

6三飛、7一玉、7三飛成、7二金合、8二角、8一玉、7二龍、同玉、7三金、6一玉、5二歩成、同銀、6二金、同玉、9五馬、6三玉、7三馬、5四玉、5五馬、4三玉、3三桂成、同桂、同銀成、5三玉、4五桂、6二玉、7三馬、6一玉、5三桂打、同銀、同桂、5二玉、4三銀、5三玉、7一角成まで。
また、第62期長篇賞の素田黄作にも、首猛夫氏から、作意60手目(途中図)に

素田 黄作
途中図(60手目5四角合まで)
第73期素田氏作

4六飛左、5五玉、5六歩、6六玉、5五歩、同玉、5六飛、4五玉、5四馬、同と、4六飛左、5五玉、6六角、6五玉、7五成香までという信じられないような早詰指摘が寄せられました。
実は、両方とも、いま話題の詰将棋解図ソフトウエア「脊尾詰」に解かせて発見されたもので、その威力には舌を巻きました。



「矢来くずし」は「将棋墨酔」第78番に収録されていますが、残念ながら41手目6七龍や45手目5三と右でも詰んでしまうようです。

矢来つながりで同じく七條兼三氏作「新・矢来」(近代将棋昭和62年4月号・将棋墨酔第77番)を掲載しようとも考えたのですが、こちらも15手目6五と以下で詰んでしまうようです…。

「矢来」は「近代将棋図式精選」長編の部第82番・「将棋浪曼集」第89番に収録されています。


次回からは第24回(第74期)に入ります。
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