続・塚田賞作品の魅力(22)(近代将棋平成8年12月号)③

今回は長篇部門を取り上げます。
第72期(昭和63年7~12月号)

長篇賞 墨江酔人作


墨江酔人作(昭和63年8月号) 詰手順
1三香 1二飛合 2一歩成 同玉 1二香成 同玉 3二飛 2三玉 2二飛成 3四玉
2五と 同歩 3七香 3五角合 2四龍 4三玉 4四銀成 同角 2三龍
3三金合(途中1図)

途中1図(20手目3三金合まで)
第72期墨江氏作1

同香成 同角 3四金 5三玉 3三龍 6二玉 8四角 ㉘7三銀合 4二龍 7一玉
9三角成 8一玉 9一歩成 同玉 8三桂 8一玉 7一馬 9二玉 7二龍
8二桂合(途中2図)

途中2図(40手目8二桂合まで)
第72期墨江氏作2

9一桂成 9三玉 8二馬 同銀 9四歩 同玉 9五歩 ㊽9三玉 8五桂 8四玉
7五龍 9五玉 9三桂成 8五香合 8六銀 9六玉 8五龍 8七玉 8九香
8八歩合(途中3図)

途中3図(60手目8八歩合まで)
第72期墨江氏作3

9七銀 7七玉 8八銀 6七玉 [65]5八金 同銀成 7六龍 同玉 8七銀 6七玉
7八銀 5七玉 5八金 同玉 4九銀 4七玉 3八銀 3六玉 3七香 2六玉
2七歩 1五玉 1六歩 同玉 1七歩 同玉 1八歩 同玉 1九香 同玉
2九金まで91手詰
盤面一杯の配置ですが、よく見ると小駒ばかり。初手と13手目の香打ちに飛合と角合が出て、20手目(途中1図)が金合となれば、順列七種合駒の趣向と察しがつくます(⑳3三飛合なら同香成、同角、4四歩、同玉、3四飛以下)。
次は8四角に7三銀合が出て(㉘角合は同角成、同歩、4二龍以下、㉘飛合も同角成、同桂、5二銀成以下)左辺に追い込み、40手目(途中2図)は桂合となります。この桂を馬で切って追い上げますが、9五歩を㊽同玉ととらずに9三玉と躱して桂を使わせる辺りは味のある手順。7五龍には桂が出払っているので(6五成桂はこのため)香合です。
60手目(途中3図)に歩合が入って趣向はめでたく終了。この後、龍も切り、銀を巧みに操って右辺に追い込むと、最後は1筋の歩香連打で入玉雪隠詰。なお、65手目の5八金は左右どちらでも同じです。
七種合は昭和30年代後半に登場した趣向で、順列七種合の一号局は山田修司作「天にかかる橋」(本誌S39・11)。本局は小駒図式でそれを実現したところが新しい工夫です。
桑原辰雄「いつもながら年齢を感じさせない。見た目も美しい小駒作品で、合駒を飛角金銀桂香歩と順序よく導入する手腕は見事」


長篇次点 小沢正広作
「賤ヶ岳」



小沢正広作(昭和63年9月号) 詰手順
3四角 ②2三銀合 4二飛 ④2二香合 2四桂 1三玉 1四歩 同銀 1二角成 2四玉
4四飛成 2五玉 3四龍 ⑭1五玉 3五龍 ⑯1六玉 3六龍 ⑱1七玉 3七龍 1八玉
2九銀 同玉 5六馬 1九玉 3九龍 1八玉 2九銀 ㉘2七玉(途中1図)

途中1図(28手目2七玉まで)
第72期小沢氏作1

4五馬 1六玉 3四馬 ㉜2五飛合 3六龍 ㉞2六角合 2七銀 1五玉 2六銀 同飛
3三角 2四桂合 3五龍 ㊷2五桂合 2四角成 同香 同龍 1六玉 1四龍 ㊽1五桂合
2八桂 同飛成 1七銀 同玉 3五馬 2六歩合 1五龍 1六金合(途中2図)

途中2図(56手目1六金合まで)
第72期小沢氏作2

1九香 2七玉 1六龍 3七玉 2六龍 4七玉 5九桂 同と 4六馬 5八玉
2八龍 6七玉 7八龍 同玉 7九飛 8七玉 8六金 同玉 6四馬 8七玉
6五馬 9六玉 8八桂 同と 9七歩 同玉 9八歩 9六玉 7六飛 9五玉
8六金 8四玉 7四飛 8三玉 7一飛成 9三玉 7三龍まで93手詰
作者はなうての裸玉研究家。本図は裸玉くずれの無仕掛図式です。
この形では角打ち、飛打ちから始まるのは常道、しかし、それぞれの合駒を読み切るのが大変な作業です(②2三香合は4二飛、1三玉、2四銀以下、②2三金または角合は3二飛、2二桂合、2四桂以下、④2二桂合は2四桂、1三玉、2三角成以下、④2二金合は1三歩、同玉、2四銀以下)。②2三銀合、④2二香合と決まれば2四桂以下、龍の縦ずらし手順に入ります。
この辺りにも⑭2六玉、3七銀…、⑯2五桂合、2六銀…、⑱2五桂合、2七銀…などの変化がありますが、ともかく3九龍まで引いて途中1図(㉘1七玉は3七龍、1六玉、3四馬、2五金合、3六龍以下)。この後も3四馬に2五飛合(㉜銀合は3六龍、2六歩合、2七銀、1五玉、2五龍以下)、3六龍に2六角合(㉞桂合は2七銀、1五玉、2五龍以下)、さらに2四桂、2五桂合(㊷歩合は2四角成、同香、同馬以下)と合駒選びが続いて悩まされます。
さらに龍と馬の追撃で1五桂合(㊽歩合は2八桂、同飛成、1七香、2七玉、2五龍以下)、2六歩合、1六金合(途中2図)を読み切ると、1九香(1八香でもよい)からは左辺へ追って収束手順に入ります。
改めて合駒を数えてみると、なんと七種九回!裸玉からの七種合なら神品でしたが、さすがにそれは叶わず、無仕掛に仕上げることになったのでしょう。それにしても、殆ど裸に近い右辺の1、2筋だけで七種合を発生させたのは見事です。その後処理のために左辺に数枚の駒を配置せざるを得なかったのは仕方ないでしょう。
なお、詳しい変化の説明は割愛しましたが、その全てを読み切るにはかなりの棋力と気力が要ります。腕に覚えのある方は挑戦してみては如何?
岡田敏「無仕掛からの難解な七種合」
植田尚宏「余詰との闘いであろう。苦労の程がわかる」
伊藤果「毎期、歴史に残るような傑出した作品が登場するとは、ただただ驚きです」



七條氏作は「将棋墨酔」第11番に収録されています。
なお、山田修司氏作「天にかかる橋」は(2)③の追記に掲載しています。

「賤ヶ岳」、「詰将棋おもちゃ箱」において「(12手目)2五玉には3四馬以下の早詰があるので、すぐに1五玉として91手詰が本手順と思う」との指摘がされていることを補足します。


次回からは第23回(第73期)に入ります。
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