続・塚田賞作品の魅力(21)(近代将棋平成8年11月号)③

今回は長篇部門を取り上げます。
第71期(昭和63年1~6月号)

長篇賞 駒場和男作
「六冠馬」



駒場和男作(昭和63年6月号) 詰手順
8二と 同玉 4六馬 8一玉 (1)4五馬 ⑥8二玉 5五馬 8一玉 5四馬 8二玉
7三香成 ⑫7一玉 (2)4四馬 8一玉 4五馬 7一玉 3五馬…(馬鋸戻り)…5四馬
7一玉 6三桂 6一玉 5一桂成 7一玉 6一成桂 同玉 5二角成 同玉
6三成香 5一玉 4二と 同玉 5三馬 3二玉 3三歩成 2一玉(途中1図)

途中1図(40手目2一玉まで)
第71期駒場氏作2-1

(3)5四馬 3一玉 6四馬…7五馬…(馬鋸戻り)…4三馬 3一玉 4二と 2二玉
(4)4四馬 2一玉 5四馬…(馬鋸行き)…6六馬 2一玉 6五馬 2二玉 2三と 同玉
3二馬 3四玉 3五歩 [78]4五玉 4六銀 5六玉(途中2図)

途中2図(80手目5六玉まで)
第71期駒場氏作2-2

2三馬 6六玉 (5)3三馬 5六玉 3四馬…(馬鋸行き)…4五馬 6六玉
5五銀 7七玉 7八歩 8七玉 5四馬 9七玉 9八歩 同と (6)6四馬 8七玉
6五馬 9七玉 7五馬 8七玉 7六馬 9七玉 8六馬まで107手詰
⑥7二金打なら同香成、同銀、同馬、同玉、7五香、7三歩打、同香成、同飛、9二飛成、8二香打、6二金、同玉、8二龍、7二金打、6五香、6三香打、同香成、同玉、7三龍、同金、7四銀、5四玉、5八香、5五香打、6五銀、5三玉、5五香以下
⑫同玉なら7四と、8二玉、9三飛成、同玉、8三と、同桂、8四銀、9四玉、8三銀、同玉、9六桂、8四金打、同香以下
馬鋸を何回も反復する作品は昔から二百局以上も作られていますが、一局に道筋の違う馬鋸を入れた作品となると数えるほどしかありません。護堂浩之氏が「詰棋めいと」誌で古今の馬鋸作品(三一七局)を分類して解説した「新・馬子唄集」によれば、三代宗看の左右馬鋸(無双30番)、巨椋鴻之介氏の上下馬鋸(風ぐるまS30・2)、福田桂士氏の三種馬鋸(詰パラS41・11)と本局だけです。その機構上、鋸引きの軌跡は短くなりますが、一局に六種の馬鋸を入れた作者の執念には鬼気迫るものを感じます。
まず一つ目は4六馬が5四まで近づくもの、二つ目は5四馬が3五桂を取って戻ってくるもの。この桂を6三→5一→6一と捌き、5二角成…6三香成で右辺に移ります(途中1図)。三つ目は、ここから7五歩を取って4三まで戻るもので、四つ目は、4二との形にしておいて6六歩を取りに行くもの。この二枚の歩を補充するのは[78]3五同玉の変化に備えるためです。
途中2図から3二馬を4五まで近づける五つ目の馬鋸が入り、最後は左へ追って9七玉に近づく馬鋸で終わります。この六種馬鋸の記録はその後は破られておりません。
その上、今回の解説では省略しましたが、一頁くらい必要な膨大な変化・紛れがあって自力で詰めるのは大変です。詰将棋は難解さで勝負するもの…という作者の持論を実践した力作です。
岡田敏「変化・紛れに重点を置いた六種馬鋸は大いに買える」
吉田健「記録への哄笑」


長篇賞 墨江酔人作


墨江酔人作(昭和63年5月号) 詰手順
3九と寄 1九玉 1八と 同玉 2八と寄 同金 同と 同玉 2六龍 2七銀成
3八と 同玉 3七と引 4九玉 4八金 5九玉 5八と 同金 同金 同玉
5七と引 ㉒4九玉 4八金 3九玉 3八と 同成銀 同金 同玉 3七と 3九玉
4八銀 同玉 2八龍 5七玉 4七と 同玉 6九馬 5六玉(途中1図)

途中1図(38手目5六玉まで)
第71期墨江氏作1

4六と 同玉 2六龍 [42]5五玉 5四と 同玉 6四と ㊻同玉 7五と寄 同金
同と 同玉 7六金 [52]8四玉 8五金打 9三玉 9四歩 同成銀 同金 同玉
8五金 同玉 9六馬 [62]9四玉 8五銀 9三玉(途中2図)

途中2図(64手目9三玉まで)
第71期墨江氏作2

8四銀 同玉 8六龍 9三玉 9二成香 同玉 8二歩成 同馬 同成香 同飛
同龍 同玉 7二歩成 同玉 6二歩成 同玉 5二歩成 [82]同銀 同馬 同玉(途中3図)

途中3図(84手目5二同玉まで)
第71期墨江氏作3

5三飛 4二玉 3一角 同玉 3二銀 2二玉
3三飛成 同桂 3四桂 1一玉 2一銀成 同玉 3三桂 1一玉 2三桂まで99手詰
㉒5九玉なら5八と、同玉、5六龍以下
㊷5七玉なら3七龍(6六玉は7六と、同歩、6七金、5五玉、5七龍…)、5六玉、4七龍、5五玉、5四と、同玉、6五金以下
㊷4三玉なら3三銀成、同桂、同桂成、同玉、4五桂以下
[52]6四玉なら6六龍、5四玉、6五龍、4三玉、3三桂成、同桂、2五馬以下
[62]7五玉なら8六馬、6五玉、7六馬、5五玉、5六銀(6四玉は6五銀、5五玉、6六馬、4五玉、5六馬、4四玉、4六龍、4五歩合、3三銀、同桂、5五馬、3四玉、3三馬…)、4四玉、4六龍(3四玉は4三馬、2四玉、3三銀、2三玉、1五桂、1四玉、1三桂成、同玉、2三桂成、同玉、2六龍…)、4五歩打、同銀、同桂、4三馬、同玉、4五龍、4四歩合、3五桂、4二玉、4四龍、3一玉、3二歩、2二玉、2三歩、1一玉、1二桂成、同玉、1四龍、1三歩合、同桂成、同桂、2二歩成以下
[82]7一玉なら9三角、8二合、6一飛以下
・7二玉なら6二飛、8三玉、7四角以下
・7三玉なら6三飛、8四玉、9五角以下
序盤はと金の群れの捌き。9手目に2六龍と引き、普通なら⑩2七歩合で切れる形ですが、3七龍…3九龍…で合駒がなくなって詰みます。2七銀成の防ぎの後もと金の捌きには一手一手紛れと変化が伴います。
八枚のと金を捌き終えて6九馬と引いた途中1図で4六とから2六龍と出るのが味の良い手順。5四金を取ったところで㊺5六龍…や㊺3六馬…の際どい紛れがありますが、作意は中段のと金群の捌き。途中2図まで辿りつけば先が見えてきました(その前に[62]7五玉…のかなり長い変化もありますが…)。
ここからは馬と飛車を剝がしながら三段目の歩を次々に成捨て、途中3図から鮮やかな四桂詰に向かいます。
純四桂詰は一号局の柏川悦夫作(王将S29・8)以来、当時までに四局しか作られていませんでしたが、驚いたことに、この号に本作と並んで中村雅哉氏と飯田岳一氏の三局が同時に発表されたのです。しかも、飯田作「氷の死刑台」と本局は史上初の全駒作品。ベテランと若手の大作家が競い合う本誌の研究室の解説を興奮しながら執筆していた日々が懐かしく思い出されます。
それはともかく、それまでに発表済みの純四銀詰・純四金詰・純四香詰に続く本作により、前人未踏の”全駒一色詰シリーズ”が完成したのです。しかも四局とも99手詰というのも見事。後に『将棋墨酔』の第89~92番に並べて収められました。
吉田健「練り絹の肌ざわり」
柏川香悦「氏の力量は勿論ですが、この拘りと遊び心にはほとほと感服、参りました」
()手の表記に少し工夫して、玉方が持駒を使うとき、「打」を入れました。(森田)



「六冠馬」関連
「六冠馬」は「ゆめまぼろし百番」第21番に収録されています。

解説中で言及されていた2作品を掲載します。
まず、将棋無双第30番を掲げます。


次に、福田桂士氏作「馬子唄」を掲げます。


昭和41年度看寿賞奨励賞を受賞しています。


墨江氏作関連
"全駒一色詰シリーズ"は、第89番が純金詰(第67期塚田賞、(17)③に掲載)、第90番が純銀詰、第91番が今回掲載の純桂詰、第92番が純香詰((18)③追記に掲載)となっています。

墨江氏作は81手目6三飛以下でも詰んでしまうようで、4一銀→4一成銀とする修正案が駒場和男氏により示されています。
このことは後に本文中で書かれていますし、以前記事にしたこともあります。
ご興味がありましたらどうぞ。→http://hirotsume.blog.fc2.com/blog-entry-60.html

最後に、同じく解説中で言及されていた柏川悦夫氏作(王将昭和29年8月号改良図)を掲げます。


「詰将棋半世紀」駒と人生第51番に収録されています。

追記(11月14日)
「六冠馬」には、少々気になることがあります。いずれ追記するかもしれません。

次回からは第22回(第72期)に入ります。
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六冠馬

質問
 六冠馬の詰手順で91手目57銀に同王は?
 ここは55銀が正しいのでは?

谷口さんへ

コメントありがとうございます。

仰る通り、「六冠馬」の91手目は5五銀です。
文章は正しく、棋譜ファイルへの入力を間違えてしまったようです。
訂正いたしました、ご指摘ありがとうございました。

「六冠馬」の余詰指摘

ご無沙汰しております。
「六冠馬」については、下記で余詰との指摘があります。

http://toybox.tea-nifty.com/memo/2006/06/post_7a6a.html

すでにご存じかもしれませんが、ご参考まで。

名無しさん

お久し振りです。
カスヤ氏の指摘は投稿の少し後に読ませて頂きました。
理解が不十分等の理由があって、一昨年11月14日の追記を書いた記憶があります。
対応については、指摘にリンクを貼るということも考えられますが、今しばらくお待ち頂ければと思います。
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