続・塚田賞作品の魅力(20)(近代将棋平成8年10月号)③

今回は長篇部門を取り上げます。
第70期(昭和62年7~12月号)

長篇賞 駒場和男作
「六法七変化」



駒場和男作(昭和62年8月号) 詰手順
7三歩 8二玉 8一と 同玉 8三飛 9一玉 9三不成 9二合 8三不成 8二玉
7一不成 8一玉 7二歩成 同と 8二歩 同と 同銀成 同玉 7一不成 7三玉
7四歩 7二玉 9二飛成 6一玉 6二角成 同と 8一龍 5二玉 5三歩 ㉚4二玉(途中1図)

途中1図(30手目4二玉まで)
第70期駒場氏作1

2三不成 1五歩 4三歩 3二玉 2二歩成 同成香 同成桂 同玉 2四香 2三
不成 同玉 2一龍 2二合 3五桂 1四玉 2五金 同玉 2二龍 ㊿2四
2七飛 [52]2六合(途中2図)

途中2図(52手目2六銀合まで)
第70期駒場氏作2

同飛 同玉 2四龍 [56]3七玉 3九香 [58]3八合 5九角 [60]4八
4九桂 4七玉 2七龍 3七飛成(途中3図)

途中3図(64手目3七飛成まで)
第70期駒場氏作3

[65]5六銀 同玉 6六金 同玉 4八角 同龍
6七龍 同玉 6八香 同龍 同銀 7六玉 6七銀打 7五玉 6六銀 同玉
6七飛 7五玉 6五金 7六玉 6六金まで85手詰
六種不成と七種合駒を連想させる題名は歌舞伎用語をもじったものとか。7手目に早速9三不成、9二合が出てきて、19手目には7一不成。この辺り、軽快な捌きの手が続きます。
途中1図の直前、5三歩に㉚同との変化が厄介で、同金、同玉、5一龍に対し5二銀合なら5四銀…、4四玉なら4五歩、3三玉、3一龍…を読み切ることが必要です。
途中1図で2三不成が登場。2四香には2三合が出て、同不成と取ります(これをうっかり同香成とすると1一玉…で逃れ)。次いで2一龍に2二合が入って、上部への追い上げ手順に移ります。
途中2図の龍と飛車による上下からの挟み打ちに対して、作意は2四合、2六合ですが、他の組合わせも調べねばなりません。
㊿角金(または金角)合なら、2四龍…2六飛…2五飛…2七香以下。
㊿金銀(および銀金)合も右と同様。
㊿角角合が難しく、後述します。
㊿銀角合は以下作意と同じ手順(従ってこれも正解ですが、角銀合を作意としたのは右の角角合の変化を含ませるためだそうです)。
作意は2六飛…2四龍の順に取って([56]2五角合なら2七香…で早い)3七玉と追い出し、3九香と5九角で合、合をさせ([58]3八金合、[60]4八飛合と順序を間違えると3八香…3九金…4八角…で早詰)、4九桂…2七龍で3七飛成(途中3図)となりますが、先述の㊿角角合の場合はここで持駒が角香なので、[65]同龍…5六銀として同玉なら4五角以下、同歩なら5八金(3六玉は4五角…)、同金、同銀、同玉、6七角以下で早く詰みます。
作意では3七飛成を取らずに5六銀とし、6六金…4八角…6七龍…と強手を連発して収束。説明を省略しましたが、途中に幾つもの誘手があって、難解極まりない作品です。
序盤のの不成は、成ると王手にならないので、詰将棋においてこれを”不成”と見るかどうかは意見の分かれるところですが、作者としては可成区域なので不成だと考えて作られたそうです。いずれにしても<詰方六種不成+七種合駒>という厳しい複合条件に初めて挑んだ力作でした。
岡田敏「七種合+六種不成に挑戦した意欲作で、不成の意義に多少の問題は残るとしても、それを実現し、独特の難解作に仕上げた点を買う」
柏川香悦「厳しい条件作であり、一号局としての価値は大きいと思う」
金田秀信「何故、こうも難しく作らねばならないかと疑問に思うこともあるが、これはこれで作者一流の作図姿勢なのだろう」


長篇次点 相馬康幸作
「日時計」



相馬康幸作(昭和62年9月号) 詰手順
8七銀 同と 9七金 同と 8八桂 同と 9七金 同玉 8七金 同と
9八金 同と 3七飛引 ⑭8六玉 8七飛 7六玉 5四角成 6五と 7八飛
7七香合(途中1図)

途中1図(20手目7七香合まで)
第70期相馬氏作1

同飛寄 8五玉 8六香 9六玉 9八飛 8六玉 8七飛 7六玉 「7八飛 6六玉
6七飛 5六玉 5八飛 4六玉 4七飛 3六玉 3八飛 3七歩合(途中2図)

途中2図(38手目3七歩合まで)
第70期相馬氏作2

同飛寄 4六玉 4七飛 5六玉 5八飛 6六玉 6七飛 ㊻7六玉 7八飛 8五玉
8六歩 9六玉 9八飛 8六玉」
(途中3図、右の24手をA手順とする)

途中3図(52手目8六玉まで)
第70期相馬氏作3

5三馬 [54]7五と 8七飛 7六玉 4三馬 [58]6五と ……二回目A手順……
4二馬 7五と 8七飛 7六玉 3二馬 6五と ……三回目A手順……
3一馬 7五と 8七飛 7六玉 2一馬 6五と ……四回目A手順……
3一馬 7五と 8七飛 7六玉 3二馬 6五と ……五回目A手順……
4二馬 7五と 8七飛 7六玉 4三馬 6五と ……六回目A手順……
5三馬 7五と 8七飛 7六玉 5四馬 6五と 7八飛 6六玉
6七飛 5六玉 5八飛 4六玉 4七飛 3六玉 3七歩 2六玉 2八飛 1七玉
2七飛 1六玉 4六飛 同歩 2六飛 同玉 3六馬 1六玉 1七歩 同玉
2七馬まで231手詰
金四枚の持駒を打ち捨ててと金を翻弄する軽快な序奏から、3七飛と引いて本題に入ります。常識的には、ここで⑭9六玉と躱して9八飛、8六玉と2手稼ぐところですが9八とがまだ持駒になっていない状態(途中1図)では7七香合という絶妙の”焦点の捨合”が飛びだして10手も伸びるのです。
この陥穽を通り過ぎれば二枚飛車による横追いが始まり、3筋まで行ったところで3七歩合(途中2図)が入って同飛寄で折り返します(6七飛まで戻ったときに㊻7五玉なら5三馬、6四桂合、同銀…で早い)。
3筋の捨合で入手した歩を8六へ打って9六玉、9八飛、8六玉(途中3図)で8七飛…と折り返しては永久運動になってしまいますが、これを打開するのが5三馬、7五と、8七飛、7六玉、4三馬、6五と…の馬鋸手順。馬鋸の彼方に見える2一歩を狙いますが、その前に[54]7五香(または桂)合、8七飛、7六玉、7八飛、6六玉、7五馬…や、[54]6四桂合、同馬、同と、8七歩(8五玉なら9七桂…)、7六玉、7八飛、8五玉、8六歩…、また4三馬のときに[58]6五香合、7八飛、7七香合、同飛上、6六玉、6七飛、5六玉、6五馬、同と、5八香…といった変化を読み切っておくことも必要です。
この一歩を取って、再び5四馬の形に戻すまでに二枚飛車の横追い手順が都合六回。一サイクル30手ですから、これだけで200手近くかかります。
216手目には途中2図の3八飛が5八飛で、2一歩が持駒に移っている状態になり、ここから3八飛としないで、3七歩以下、二枚の飛車を捌いての収束に入ります。
本作は、二丁飛車による追い趣向と馬鋸を複合させて長手順を生み出しただけのように見えて、実は、かなりの変化を内蔵した見事な作品です。序奏と収束の構成も非の打ちどころがありません。
この期、二百手台の超長編を三局も発表して新人類(?)時代の到来かと騒がれた作者は当時、法政大学三年生で、中井広恵さんの大ファン。第13期女流名人位の初防衛を祝って贈られた左図が5月号に紹介されましたが、これは珍しい三段曲詰の名作(17手詰)です。

相馬康幸作
「ヒロエ詰」





この年の看寿賞長編賞を受賞したのは、次々点の相馬康幸氏作「迷路」(昭和62年7月号)でした。


相馬氏は上記の「ヒロエ」(昭和62年3月23日報知新聞)とのダブル受賞でした。

相馬氏の作品集「Collection」では「日時計」はNo.11に、「迷路」はNo.77に収録されています。


次回からは第21回(第71期)に入ります。
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