続・塚田賞作品の魅力(19)(近代将棋平成8年9月号)③

今回は長篇部門を取り上げます。
第69期(昭和62年1~6月号)

長篇賞 添川公司作
「大地の詩」



添川公司作(昭和62年3月号) 詰手順
9八と 同玉 8八と 9九玉 9八と 同玉 5八飛 8八歩合 同飛 9九玉
9八飛 同玉 9九歩 ⑭同玉 8八銀 ⑯8九玉 3九龍 8八玉 7八と 同玉
6八と ㉒同玉 ㉓5八金 7八玉 6八金 同玉 6七と 同玉 6九龍 5六玉
5八龍 4六玉 4五金 3六玉 3八龍 4五玉 4七龍 5四玉(途中1図)

途中1図(38手目5四玉まで)
第69期添川氏作1

6五と ㊵同玉
4五龍 ㊷7六玉 5六龍 ㊹8七玉 6七龍 9六玉 7六龍 9五玉 7七角 8四玉
8三と 同玉 [53]9三桂成 8四玉 6六角 9五玉 9四成桂 同玉 9六龍 8三玉
8五龍 9二玉 9四龍 8一玉 [65]7一香成 同玉 [67]6一桂成 8一玉 7一成桂 同玉
6二歩成 同玉 7三歩成 同玉 5五角 [76]6二玉(途中2図)

途中2図(76手目6二玉まで)
第69期添川氏作2

5三銀成 同玉 [79]6四龍 4三玉
3二角成 5二玉 [83]4二馬 同玉 3二歩成 5二玉 4二と 同玉 3三桂成 5一玉
4二成桂 同玉 6二龍 4三玉 6三龍 3四玉 5四龍 3五玉 4四龍 2六玉
2七金 同玉 4七龍 1八玉 3八龍 1七玉 2八龍 1六玉 1五金 同玉
3三角成 1六玉 3四馬 1五玉 2五馬まで115手詰
長篇賞を三期連続受賞して絶好調の作者がこの期も三局の煙詰を発表して気を吐きましたが、本局はその一つで作者にとっては三局目の無防備煙です。際どい紛れと変化を内蔵した妙手順がつづきますので、ぜひ駒を並べて鑑賞して下さい。
最初は八段目のと金を捌き5八飛には8八歩の捨て合が入ります。これを9九歩と叩いたとき、⑭8九玉は3九龍、7九飛合、同龍、同玉、5九飛…と、飛合を強要して早詰ですが、次の8八銀引きに⑯9八玉の変化は9七と、8九玉、3九龍、8八玉、7八と、同玉、6八と、同玉、6七と、7八玉、6八と、同玉、5八金以下、本筋かと思うような手順が続きます。
次は3九龍の後、七段目のと金を引きます(㉒8七玉は8九龍、8八銀合、7七と、同玉、6七と…)。ここで4四角の利きを通そうと㉓6七とと早まると、7八玉…と躱されて微かに詰みません(先程の変化⑯とは紙一重)。その前に5八金…6八金…と消しておくと、6七とには同玉の一手となり、6九龍以下、龍追いが始まって、ようやく筋に入った感じになりました。
途中1図からは4四角の長い足を利用した龍追いになりますが、6五とに㊵6三玉、4一角成、5二歩合、同馬、同玉、4一銀…、4五龍に㊷6四玉、5五龍…4一角成…、5六龍に㊹7五玉、8四銀(同玉は9三桂成)、7四玉、8三銀、6三玉、4一角成…という一手ごとの変化も読まねばなりません。
9筋まで追い込んで7七角と引き、今度は上段への追撃。9三桂成のところでは[53]9三と、8四玉、6六角、9五玉、9四と、同玉、9六龍、8三玉、9三角成、7四玉、7六龍、6三玉、6五龍、6四歩合、4一角成、5二歩合…のような際どい紛れもあります。
8一玉まで追ったところで[65]7二香成では同玉、7三歩成、同玉、5五角(8四龍は6三玉、4一角成、5二歩合、同馬、同玉、4一銀、6三玉…で逃れ)、6四歩合、同角、6三玉…で5三桂が邪魔。そこで7一香成…6一桂成…と、これを捌く手が入りますが、この6一桂成のときも[67]9三角成、8二歩合、6二歩成(6一桂成は同玉、5一銀成、同玉、8四馬、5二玉、6二馬、4三玉…で逃れ)、同玉、7三歩成、同玉、8四龍、6三玉、4一角成、5二歩合…という危ない紛れがあります。そして途中2図の前、5五角に[76]7二玉なら7四龍、6一玉、5一銀成、同玉、7三角成、6二香合、4一角成、同玉、3二歩成、5二玉、4二歩成、5三玉、6二馬…の変化もあり、中盤の難所です。
途中2図からは5三銀成…6四龍…で終盤へ。ここでも[79]4四角(4三玉は3二角成…で詰む)、6三玉、4一角成、7二玉、7四龍、8二玉、7一角成(7一龍は8三玉、7四馬、9四玉…で逃れ)、9一玉、9四龍、9二歩合、同龍、同玉、7四馬、8三金合…で逃れるという恐ろしい筋があります。
以下は角・歩・桂を手順に捨てながら収束に向かいますが、2五桂の消去は終局のための伏線。龍馬での見事な煙詰となりました。

詰上り図
第69期添川氏作3

4四角が7六→6六→5五と移動しながらの龍追いを軸に、序・中・終盤に4八金・5三桂・2五桂の邪魔駒消去を配し、しかもこれだけの複雑な変化と紛れを内蔵しながら、キズは[83]4一馬の一か所だけという完璧な構成には感服のほかありません。
本作は(1)駒場和男作「三十六人斬り」(詰パラ78・3看寿賞)、(2)大西宏明作(同81・9半期賞)、(3)添川公司作「帰去来」(双玉同84・11看寿賞)、(4)添川公司作「五丈原」(詰棋めいと86・10)に次ぐ五局目の無防備煙で、塚田賞四期連続受賞の偉業を達成したのは見事でした。
桑原辰雄「止まるところを知らない添川氏の煙詰の連作。中でも無防備煙が一番」
柏川香悦「一挙に煙詰三局を発表するのですから、煙詰の創れない私などはただ驚くばかり。1月号『ジプシー』も文句なく傑作」
谷口均「今期は添川氏の独り舞台」


長篇賞 飯田岳一作
「双飛城」



飯田岳一作(昭和62年6月号) 詰手順
1三と 1一玉 2一香成 同玉 2二歩 1一玉 1二と 同玉 2三と 1一玉
2一歩成 同玉 3二と左 同金 同と 同玉 2四桂 2二玉 2三歩 同玉
3四と 同玉 3三金 同玉 3二桂成 3四玉 3三成桂 同玉 4三歩成 同香
同香成 同玉 4七香 5二玉(途中1図)

途中1図(34手目5二玉まで)
第69期飯田氏作1

6三と 同玉 6四と 5二玉 6二と 同玉 7二歩成 同玉 7三と 8一玉
8二歩 同金 同と 同玉 9二歩成 同玉 9三角成 同玉 8三金 9四玉
8四金 9五玉 8六銀 同飛 8五金打 同飛 同金 同玉 8四飛 7六玉(途中2図)

途中2図(64手目7六玉まで)
第69期飯田氏作2

8七金 6五玉 7六金 同玉 8七馬 6七玉
6四飛 5八玉 7六馬 5七玉 6七馬 4七玉 4四飛 3八玉 5六馬 3七玉
4七馬 2八玉 2四飛 1九玉 2九馬 同龍 同飛 1八玉 1九飛打まで89手詰
本作は初め5月号に特別出題されましたが、余詰があったとかで6月号に修正再出題されたもの。自陣成駒のないすっきりした配置から1三と以下、爽やかな手順が始まります。
序盤では21手目の3四とから3三金…3二桂成…が気持ちの良い捌き。4筋で香を入手した後の4七香の遠打ちが本局のポイントで、終盤への伏線です。
ここから左辺を掃討して行き、51手目9三角成の軽手を放って中段に呼び込みます。途中図からは飛車と馬による趣向的な横追いになりますが、先程の4七香が一段でも上なら4四飛廻りが出来なくなっていたという訳。
最後の二枚飛車による見事な詰上りは、二百局を越える煙詰の歴史において初めてのものです。

詰上り図
第69期飯田氏作3

岡田敏「詰上り二枚の生飛の煙詰はアッと驚く新機軸。盤上に自陣成駒のない爽やかさも素晴らしい。難解性が少ないのがかえってプラスになっているような気がする、不思議な作品である。とにかく、この詰上りのオリジナルは大いに買える」
吉田健「普通作品でもやりにくい奇想の詰上りに脱帽。本作の場合、易しいことはいいことである。作者の一つの境地を知った」
金田秀信「全着手が完全限定(詰手順の一意性保持)というのは、本局が一号局かどうか知らないが、とにかく凄い。煙詰が高い評価を受ける時代は終わっていなかった」
柏川香悦「終わりから13手前あたりの形の発見が素になったと思う。難条件の詰上りだけに難しさはないが、形・手順ともに厭味なく、数ある煙詰の中でも注目すべき一局」
伊藤果「長生きは大切。生きているからこそ、こんな夢の作品にも出会える。その才能と努力に惜しみない拍手を贈りながら、今ぼくは感動に改めて酔っています」



柏川氏のコメントで言及されていた、長篇次点の添川公司氏作「ジプシー」(昭和62年1月号)を掲げます。



次回からは第20回(第70期)に入ります。
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