続・塚田賞作品の魅力(19)(近代将棋平成8年9月号)②

今回は中篇部門を取り上げます。
第69期(昭和62年1~6月号)

中篇賞 酒井克彦作


酒井克彦作(昭和62年1月号) 詰手順
1二歩 ②2一玉 2二歩 ④同飛 1一歩成 同玉 2二龍 同玉 2三歩 ⑩同角
3二銀成 ⑫同角 3四桂 1三玉 3三飛 2三角上(途中図)

途中図(16手目2三角まで)
第69期酒井氏作

1四歩 1二玉 2三飛成 同玉
1三歩成 同玉 2二角 1二玉 1一角成 同玉 3三馬 1二玉 2二馬まで29手詰
軽い配置と持駒ですが、嘗めてかかると序盤の変化に苦しめられます。
1二歩に②同玉なら、2三龍(同玉は3三飛、2二玉、3四桂、2一玉、2二歩…)、同角、1三歩(同玉は2五桂、1二玉、1三飛…、2一玉は3三桂、2二玉、1二飛、同角、同歩成、同玉、2一角…)、2二玉、1二飛、同角、同歩成、同玉、2四桂(1三玉は1四歩、2三玉、1二角、3三玉、3四角成…、1一玉は3三角、2二金合、1二歩、2一玉、3二銀成…)、2三玉、3四銀成、2二玉、2三歩、同桂、3二桂成、同玉、3三成銀、2一玉、3二角、1一玉、1二歩以下27手詰。狭い所なのに多岐にわたる変化があります。続く2二歩に④1二玉は1三歩、同玉、2四馬以下です。
5手目の1一歩成捨ては、ついなんとなく指してしまう手ですが、実は後の二歩禁を避けるための伏線。2二龍と切り、2三歩で角を呼んでから3二銀成とする複合手にも絶妙の味があります(⑩2三同玉は3四銀成、1二玉、2四桂、2一玉、2二歩、同玉、3二桂成、同角、3三馬…、⑫3二同玉は4二飛、2一玉、1三桂…)。
3二角の形になると、ようやく3四桂から3三飛と打て、角の移動合(途中図)からはこの角をもぎ取って爽やかな収束に入ります。
初手に打った1二歩を消しておく伏線と、3四桂と打つのに細かな運びで3二角の形にしておく綾を主題とする捌きの中編のつもりが、作者も予期しなかった2手目の複雑な変化のために、つい難解な小品になってしまったのでしょう。完成度の高さはさすがです。
岡田敏「1二歩消去をめぐる細かい綾が面白いが、変化がややこしいのが難」
伊藤果「変化がかなり煩雑で、解く楽しみを損ないかねないが…」
金田秀信「紛れが凄いのが難点と感じるが、内容は文句のつけようがない」
谷口均「簡潔な配置で、よくこれだけの力強い内容が入れられたもの」


中篇次点 駒三十九作


駒三十九作(昭和62年4月号) 詰手順
4四角 ②1六玉 3八馬 2七桂合 1七歩 1五玉 3三角成 ⑧2四飛合(途中図)

途中図(8手目2四飛合まで)
第69期駒氏作

1六歩 同玉 2七馬 1五玉 2四馬 同玉 2三飛 3四玉 2六桂 4四玉
3五銀 同玉 3三飛成まで21手詰
初手3五角では1六玉、3八馬、1五玉で打歩詰。角を離して打っておけば、3三角成…で囲いを外して1五歩打ちが出来ます。これに対して②3五桂合なら同角、1六玉、3八馬、1五玉、1六馬、同玉、1七歩、1五玉、2七桂までなので、玉方は4手目に2七桂の捨て合をします。これを直ぐに同馬では1五玉、3三角成に2四合(飛以外)…で詰みません。また同銀、1五玉、3三角成では2四飛合をされて1六銀、2六玉に4四馬が出来ません。
そこで1七歩と打ち、3三角成に対する合駒を見極めてから1六歩突き捨てで戻す――作者が”攻方態度保留”と称する珍手が登場します。即ち、途中図で⑧2四合が飛車以外なら、1六歩、同玉、2七銀、1五玉、1六銀、2六玉、4四馬…の早詰(初手はこのための限定打)です。2四飛合の場合は1六歩から2七馬と進め、2四馬と飛車を入手して中段での綺麗な収束に向かいます。
いかにも中編らしい論理的な構想を全く無駄のない配置で実現した傑作です。
谷口均「攻方態度保留とは高級な技法」
岡田敏「簡潔な棋形に限定打、捨て合、合駒の綾を含んだ手順は申し分ない」



酒井克彦氏作品集「からくり箱」では、受賞作は第60番、次点作は第67番に収録されています。
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