続・塚田賞作品の魅力(19)(近代将棋平成8年9月号)①

森田銀杏氏の連載「続・塚田賞作品の魅力」、第19回(第69期)も3度に分けて取り上げたいと思います。
今回は短篇部門です。
第69期(昭和62年1~6月号)

この年の3月号に、七條兼三・黒川一郎・駒場和男・上田吉一・添川公司・橋本孝治という豪華な顔ぶれを集めて開かれた座談会が「詰将棋、この魅惑の世界」と題して載っています。これは、その前年に橋本孝治氏が一五一九手詰という驚異の超長編『ミクロコスモス』を完成したのを祝って企画されたもので、司会は筆者。改めて読みなおしながら、昭和詰将棋黄金時代を代表する大型作家たちの”美”を想像する芸術家魂に共感したひとときを思い出しました。
この期から詰将棋の選考方法が少し変わり、短・中・長篇の各部門ごとに各委員3点の持ち点で投票することになりました。その結果、短篇では植田尚宏作、中篇では酒井克彦作がそれぞれ他を引き離して最高点。長篇では添川公司作の無防備煙と飯田岳一作の双飛煙が並んで受賞しました。
なお、61年度の「三手詰優秀作」は四十二題の中から行き詰まり(本名=塩見倫生)作が選ばれています。

第6回三手詰最優秀作
行き詰まり作(昭和61年3月号)
第69期行きづまり氏作


第69期「塚田賞」選考投票 集計表



短篇賞 植田尚宏作


植田尚宏作(昭和62年6月号) 詰手順
3三歩成 ②同玉 3四銀 同玉 3五金 3三玉 2四金 同玉 2五飛 3三玉
3四歩 同銀 2二飛成 同玉 3二金まで15手詰
実戦型の好作で毎号のように登場される作者が、鑑賞室から溢れた八局で個展を開きました。本図はその中の一局です。
この形では3一銀…4一飛…と攻めたくなりますが、届かず。拠点のような歩を3三歩成と捨てるのは思い余った末のことでしょう(②同桂なら3一銀…)。続く3四銀…3五金も上部へ呼び出すようで勇気が要ります。以下、2四金…2五飛…と態勢を組み直して2二飛成捨ての収束は爽快。無理のない実戦型だけに引き立ちました。
金田秀信「2四金の味がよい」
伊藤果「格調があり、いかにも”プロの手作り”を感じさせる。模範的な一作」


短篇次点 植田尚宏作


植田尚宏作(昭和62年6月号) 詰手順
3四桂 ②同金 2三銀打 1三玉 1四銀成 同玉 4三銀不成 1三玉 2三角成 同玉
3四金 2二玉 2三金打 3一玉 3二金まで15手詰
本局も端正な実戦型。初手から2三銀打…などの紛れに目が行きますが、作意は3四桂(②1三玉なら2三銀成、1四玉、1三成銀、同玉、1四銀…)。続いて2三銀打…1四銀成捨てから4三銀不成と開くのは5四角の利きを消す手で、本局の主眼です。
銀の重ね打ちとソッポ不成の奇手を実戦型で実現した佳作でした。
柏川香悦「安定した形から2三銀打…1四銀成…4三銀不成とは旨い手があったもの。紛れも十分あり、好作」


短篇次点 小林敏樹作


小林敏樹作(昭和62年3月号) 詰手順
7六角 ②5二玉 6二飛 5三玉 4五桂 同桂 6五桂 ⑧5四玉 6四飛成 同龍
5三桂成 4四玉 4三成桂まで13手詰
初手から3五桂、5四玉、5五飛、6四玉…や5三飛、4二玉、3四桂、同龍…の紛れ筋を読まされた挙げ句に発見できた7六角は絶妙に映ります(②同龍は5三飛…、②5四合は5五桂、5二玉、6二飛、5三玉、6三飛成…、②6五合は同角、5二玉、6二飛、5三玉、7二飛成…)。
作意はただちに5二玉と躱し、6二飛から4五桂で同桂と跳ねさせて6五桂(⑧同龍は同飛成…)と据えた後の6四飛成が豪快な手で、5三桂成から4三成桂の連続両王手の詰上りは見事。自角の利きを二度も遮る攻め方も味が良く、いかにも現代風に完成された傑作でした。
谷口均「利き筋を止める手が数手あって、異色の感覚。いま最も乗っている作者だけにさすがに巧い」
柏川香悦「大駒の使い方にいつも巧さを見せてくれる作者だが、本作も大駒を巧みに使う手順は手応えも充分の好局」
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