続・塚田賞作品の魅力(18)(近代将棋平成8年8月号)③

今回は長篇部門を取り上げます。
第68期(昭和61年7~12月号)

長篇賞 添川公司作
「白夜」



添川公司作(昭和61年11月号) 詰手順
8三歩不成 9一玉 9二歩 同玉 9三と 同玉 8四と上 9二玉 8二歩成 同玉
8三と右 9一玉 8一と 同玉 7一歩成 9一玉 8一と 同玉 7二香成 同玉
同香成 同金 同と 同玉 7三金 6一と 6二金打 同金 同金 同玉
7三と左 5二玉(途中1図)

途中1図(32手目5二玉まで)
第68期添川氏作1

6三金 ㉞同成銀 同と寄 4二玉 5三と左上 ㊳同成香 同と寄 3二玉
2二と引 ㊷同成銀 4三と寄 2一玉 3二銀 ㊻同成銀 同と 同玉 4三銀 2一玉
3二銀打 1一玉 1二と 同玉(途中2図)

途中2図(54手目1二同玉まで)
第68期添川氏作2

[55]1三香 [56]2二玉 3三と 同と 3四桂 同と
2三歩 1三玉 2五桂 同と引 同桂 同金 2四と 同と 2二銀 1二玉
2四桂 同金 1四香 同金 1三歩 同金 2一銀直 1一玉 1二歩 同金
2二歩成 同金 1二歩 同金 同銀成 同玉 2三金 1一玉 2一銀成 同玉
3二銀成 1一玉 2二成銀まで93手詰

詰上り図
第68期添川氏作3

初形を見れば小駒煙詰が予想される図。平凡に8三歩成…8二と…から始めて、7三と、同金、同と、同金、8三歩、同金、同と、同玉、8四金、9二玉、8三金打、9一玉…とゆくと切れてしまいます。作意は8三歩不成…9二歩…9三と…8四と上…と、香筋が通るように、と金を捌く手順です。
7筋・6筋で三枚の金を剝がした途中1図から、6三金打…と三段目の成り駒と刺し違えながら横追いで進みます。6三金のときに㉞5一玉と下がると6二と以下、5三と左上のときも㊱4一玉と下がると5二と以下、作意同様に進めて、6二とや5二とが残っているので、途中2図のところから2三銀成、同玉、3四と直、同歩、同銀成(1三玉なら2五桂、同と、同桂、同金、2四銀…)、1二玉、2四桂打、1三玉、2五桂、同と、2二銀、同玉、3三と…で早く詰む順が生じます。
5三と寄、3二玉まで来ると次は2筋の成駒剝がしですが、ここでも㊷同成桂、4三と寄、3一玉、3二香…や、㊻1一玉、1二と、同成銀、2三桂…など、ここでは省略しますが、長手数の変化を読み切らねばなりません。
さらに途中2図では[55]2四桂打…の紛れがあり、また先述の[55]2三銀成…の筋もかなり際どいところまで行きます。また1三香を[56]同玉なら2五桂、同と引、同桂、同金、2三銀成…以下。この辺りの変化と紛れは微妙な差で詰んだり詰まなかったり、複雑です。
1三香に2二玉と躱してからの収束は鮮やかな捌きで、それまでの小駒煙には全く見られなかった新しい収束手順で終わります。
昭和38年に黒川一郎氏が不可能と言われていた小駒煙「嫦娥」を完成させて以来、本作は十三局目(作者にとっては二局目)ですが、新しい収束型の上に、玉が自陣(三段目)から出ないというのも初めてで、命名はそのようなイメージも含まれているそうです。
吉田健「作者の小駒煙への執念に打たれた」


長篇次点 杉山 正作
「パピヨン」



杉山 正作(昭和61年9月号) 詰手順
9四と 8五玉 9五と 8六玉 9六と 8七玉 9七と 7六玉 (1)「6五銀 8五玉
9六と 8四玉 9五と 8三玉 9四と 7二玉 8四桂 6三玉 5四銀 ⑳7四玉
6五と 8五玉 9五と 8六玉 9六と 8七玉 9七と 7六玉」
(途中1図、以上20手をP手順とする)

途中1図(28手目7六玉まで)
第68期杉山氏作1

7七銀 ㉚6七玉 6六と 5七玉 5六と左 6七玉 6八歩 同成桂 同銀引 7六玉
(2)6五銀 ……二回目P手順…… 7六玉 7七銀 [60]6七玉
6六と 5七玉 5八歩 同成桂 5六と左 6七玉 6八歩 同成桂 同銀引 7六玉
(3)6五銀 ……三回目P手順…… 7六玉 7七銀 [92]6七玉
6六と 5七玉 5八歩 同成桂 5六と左 6七玉 6八歩 同成桂 同銀引 7六玉
(4)6五銀 ……四回目P手順…… 7六玉 7七銀 [124]8五玉
8六と 8四玉 7五と左 8三玉 8四香 7二玉 8二と 同金 同香成 同玉
8三歩 同玉 8四と 7二玉 6三金 同銀 同銀成 同玉 Ⓐ7四銀 同歩
同と右 7二玉 7三と左 7一玉(途中2図)

途中2図(148手目7一玉まで)
第68期杉山氏作2

6一と 同玉 5二と 同玉 6三と入 4三玉 4四と 同玉 4五歩 4三玉
3三と 5四玉 5七香 [162]5六桂合(途中3図)

途中3図(162手目5六桂合まで)
第68期杉山氏作3

5五歩 6五玉 5六と 7五玉 6六と 8四玉 8五歩 同玉 7六銀 8六玉
7五銀 8七玉 7九桂 同金 9八金 9六玉 9七金 8五玉 8六金まで181手詰
と金引きから6五銀で桂を取り、今度はと金押しで戻して8四桂と打ちます。次の5四銀が軽手で、⑳同玉なら4四と引、6三玉、5四と、7四玉、6四と、同玉、5五と以下です。
7三歩を一周りした玉が6五とから再び8筋に沿って9筋のと金引きで途中1図まで来たところで、銀とと金による送り機構を使って成桂を剝がし、またも6五銀から20手の昇降手順を繰り返します。二回目と三回目の成桂剝がしは二枚の歩を使うので、四回目の昇降手順を終えたときには〔持駒歩二枚〕で、途中1図から成桂が全て消えた状態です。今度の7七銀には[124]6七玉と入る訳には行かず、8五玉尾バックし、8六と…7五と左…で香を取って収束に向かいます(それまでの7七銀に㋑8五玉とすると同様手順で進み、6三金でばらした後に、歩の数が多いので7四銀とせずにⒶ6四歩、7二玉、6三銀、8一玉、8二歩…の早詰)。
この後の60手もかかる収束の捌きが凄い。それが趣向手順を構成していた駒の殆どを活用しているのには驚きます。そして最後の抵抗が5七香に対する5六桂合。[162]6五玉、5六と…も駒が余らず綺麗に詰むので油断はできません。
全小駒図式に情熱を燃やす作者がと金の昇降プロットにミニ智恵の輪による成桂剝がしを組み合わせて小駒図式の最長手数記録を樹立しただけでなく、手順も見事で、受賞を逸したのが惜しまれる秀作です。
伊藤果「小駒図式でありながら大長手数。手順は流麗、そしてなによりも魅きつけられったのが初形の気品。歴史に残る作でしょう」
植田尚宏「またも小駒の記録伸ばし。手順も優れていて申し分なし」
柏川香悦「長年、小駒による趣向長編を追求されている作者のこだわりと創作力には敬服のほかありません」



追記(10月1日)
長篇次々点の墨江酔人氏作「純香詰」(昭和61年12月号)を掲げます。


「将棋墨酔」第92番に収録されています。


追記(2014年8月20日)
詰将棋おもちゃ箱の「記録に挑戦!」によると、現在では小駒図式の最長手数は大崎壮太郎氏の235手、純小駒図式の最長手数は杉山正氏「新・海猫」の185手となっています。



次回からは第19回(第69期)に入ります。
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【参考】 小駒図式の長手数記録

杉山氏作の「パピヨン」は発表当時、純小駒図式の最長手数作品だったのですが、この記録はその後、同じ作者の「新・海猫」 (185手詰) により更新されました。

http://www.ne.jp/asahi/tetsu/toybox/challenge/c1023b.htm

名無しさん

追記いたしました。
ご指摘ありがとうございました。
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相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

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