続・塚田賞作品の魅力(18)(近代将棋平成8年8月号)①

森田銀杏氏の連載「続・塚田賞作品の魅力」、第18回(第68期)も3度に分けて取り上げたいと思います。
今回は短篇部門です。
第68期(昭和61年7~12月号)

この期、短篇は有望な新人の参入もあって活気づきました。その中で佐々木聡作が一頭地を抜いてゴールイン。二度目の受賞です。中篇もベテランの活躍で多くの好作が発表されましたが、上田吉一作と若島正作の一騎打ちとなり、首の差で若島氏が七度目の受賞。長篇は不完全作が多く、生き残った候補作は五局でしたが、いずれも受賞級で大接戦となりました。最後は添川公司氏の小駒煙が杉山正氏の小駒趣向長編と墨江酔人氏の全駒四香詰を押さえて五度目の栄冠に輝きました。
この年に初入選した作家は久木正人・金子義隆・佐藤達也・谷混色・飯尾晃・田淵信次・石川好夫・児島久典・川口康久・風の精・渡辺栄吉・関野憲文の十二氏。その後も作り続けておられるのは誰々でしょうか。


第68期「塚田賞」選考投票 集計表



短篇賞 佐々木聡作


佐々木聡作(昭和61年8月号) 詰手順
1四飛 2二玉 1三飛成 同香 1二金 3二玉 2四桂 同歩 2二金 同玉
2三金 1一玉 1二金まで13手詰
端正な実戦型。筋は一目、1三に蓋をして2四桂…ですが、初手1三金では同桂、2四桂、2一玉…で駒不足になります。1四飛に②1三歩合なら同飛成以下、さきほどの順で詰みますが、これには2二玉と躱されます。そこで1三飛成が得もいえぬ妙手(④同桂なら1四桂…)です。同香に1二金とし、作意手順は3二玉と逃げ、2四桂から2二金と再活用して気持ちよい収束です。
その作意だけを見ると中心手の1三飛成の快感しか残りませんが、1二金を⑥同玉と戻るとアラ不思議、6手をかけて初形の1一香が1三香に移っているではありませんか!この奇術のような一連の手順も、爽やかな桂香図式で表現したからこそ効果が大きかったのでしょう。
植田尚宏「実戦型で1四飛から1三飛成の何とも言えぬ妙手が良い。以下のまとめも申し分なし」
金田秀信「1四飛~1三飛成とは。こんな鉱脈がまだ未発見で残されていたのか」
吉田健「1四飛と打ってすぐ1三飛成は前例のない筋ではないが、変化をも含め、実戦型でムダなく表現したところに作者の才腕を感じる。短篇らしい短篇と言えよう」
柏川香悦「誰もが詰ましたくなるような好形作。手順も、打った金を再び捨てるところなど、実に感じの良い作品」
伊藤果「実戦型であり、”塚田好み”の観点でゆけば、序の3手は意外性があって、その価値は十分」
桑原辰雄「3手目1三飛成が好印象なるも、以下のまとめにちょっと線の細さを感ずる」


短篇次点 桑原辰雄作


桑原辰雄作(昭和61年7月号) 詰手順
1六桂 ②同歩 3四金 ④1五玉 2五金 ⑥同玉 2四飛 1五玉 1二飛成 1三香合
2五飛 同玉 2三龍 1五玉 2四龍まで15手詰
この初形では3四金…4四飛打…2五金…2二飛成の筋が浮かびますが、1六玉…で桂の持駒ではダメ。そこで初手1六桂と打ってここを塞いでおくことに気づきます。すると3四金に今度は1五玉と躱される展開になり、最後は1三香合をさせて打った飛車を捌いての軽い詰上りになりました。
4一香の配置がちょっと厭味ですが、2三金…の紛れ筋に入った人は了解できるでしょう。作者には珍しい軽快作でした。
植田尚宏「広いようで狭い玉。スッキリと詰上がるところ良し」
柏川香悦「作者らしい個性は感じないが、駒数も少なく、収束に飛と龍を入れ換えてのスッキリした詰上がりの好短篇」


短篇次点 柳原夕士作


柳原夕士作(昭和61年12月号) 詰手順
5三銀 ②同玉 6四角 4四玉 5五金 同と 5三角成 同玉 6三飛 4四玉
5六桂 同と 5三飛成 同玉 5四馬まで15手詰
宙ぶらりんの4三銀を取られないためには初手は5三銀しかありません(②4三玉なら4二飛、5三玉、6四角、6三玉、5五桂、7四玉、7五金…)。同玉にも6四角と出て(④4三玉なら4二飛、3四玉、2六桂…)、5五金でと金が動けば収束が見えてきます。つまり、5三角成から6三飛と打ち替え、5六桂でさらにと金を動かして5三飛成から5四馬まで。玉は4四と5三を往復するだけで、詰方の駒繰りを楽しむ中段の風船図式でした。
北原義治「切れ味よくたたみ込む」



追記(9月25日)
受賞作、2六馬・4二馬→玉方4五龍という改良図が佐々木氏自身により発表されているようです。
ドリーさん、情報ありがとうございました。
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佐々木聡氏作について

実戦型とか好形とかいう選考委員の感覚はおかしいと思います。私の感覚では、3一歩と4二歩は作図の失敗です。

佐々木聡氏作について

42歩+26馬→玉方45龍、と1枚減らした作者自身による改良図が発表されてますね

No title

コメントありがとうございます。

不透明人間さん
考え方の違いということでしょうね。

ドリーさん
追記させて頂こうと思います。
重ねて、ありがとうございます。
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