続・塚田賞作品の魅力(17)(近代将棋平成8年7月号)③

今回は長篇部門を取り上げます。
第67期(昭和61年1~6月号)

長篇賞 添川公司作
「天狼」



添川公司作(昭和61年4月号) 詰手順
7三角 2八香合 同角成 同玉 7三角 2九玉 3八銀 3九玉 (1)8四角成 2八玉
2九歩 1七玉 1九香 1八角合(途中図)

途中図(14手目1八角合まで)
第67期添川氏作

同香 同玉 2七銀 2九玉 7四馬 1九玉 3七角 2八香合 同角 同玉 6四馬
2九玉 3八銀 3九玉(この20手を繰返す)
(2)7五馬……6五馬……5五馬……3九玉
(3)6六馬……5六馬……4六馬……3九玉
(4)5七馬……4七馬……3七馬……3九玉
4八銀 同成銀 同馬 同玉 4九銀引 5九玉 4八銀打 4九玉 5八銀 4八玉
4九香 5九玉 6九金まで101手詰
粘り気のない持駒ばかりなのでとっつきにくい初形ですが、7三角と打ってみると2八香合しかないことはすぐに判ります。再度7三角と打って、3八銀…8四角成…2九歩…1九香で1八角合(途中図)の一手となればほぼ作者の狙いが見えてきました。3八銀を2七銀と繰替えながら8四馬を7四馬…6四馬…とずらす三段馬鋸です。その間に香から角へ、角から香への持駒変換が入って一サイクル20手。一回毎に一歩を費消するという新型の複合馬鋸で、これを四回繰り返して3七馬の形から4八銀以下の収束に入ります。
黒川一郎氏の名作「天馬」を嚆矢とする横型の三段馬鋸を入玉で持駒変換を絡めながら僅かの駒数で実現した見事な趣向作です。しかも駒の影もない天空に7三角と打って馬をつくり、これを引き寄せてくるところが新工夫で、「天狼」の命名もそれを意識したものでしょう。前期の「桃花源」に続いての輝かしい受賞でした。
吉田健「忽然と馬鋸の馬が盤上に出現するのにはびっくりした」
岡田敏「合駒入りの複合三段馬鋸でありながら、盤面に馬がない局面から始まる新機軸の作品」
柏川香悦「次々と打ち出す新型馬鋸。作者の才能に改めて感嘆するのみである」



特技賞 墨江酔人作
「純金詰」



墨江酔人作(昭和61年1月号) 詰手順
9八と 同玉 9七と引 8九玉 8八と 同玉 7八と 同角成 同と 同玉
9六角 ⑫8八玉 6八龍 9七玉 7七龍 9六玉 9五と 同玉 9七龍 8四玉
8六龍 9三玉 9五龍 8三玉(途中1図)

途中1図(24手目8三玉まで)
第67期墨江氏作1

7三歩成 同角 同と 同角 9三飛 7四玉
7三飛成 同玉 7二と引 7四玉 6五角 6四玉 6三と 同玉 7三と 同玉
7五龍 8二玉 8四龍 7一玉 6一と 同玉 5二桂成 同玉 4三桂成(途中2図)

途中2図(49手目4三桂成まで)
第67期墨江氏作2

㊿同銀
同角成 同玉 5四龍 4二玉 [55]3三銀 同桂 同歩成 同玉 3四金 2二玉
3二と 同玉 2四桂 同香 4三龍 2一玉 1三桂 同金 2三香 3一玉
2二香成 同玉 1三龍 同玉 2三金打 1四玉 2四金引 1五玉 1六香 同玉
1七歩 同金 同香 同玉 [85]2八金 1六玉 1七銀 1五玉 2六銀 同金
同銀 同玉 3七金打 1五玉 1六歩 同玉 2七金直 1五玉 2六金まで99手詰

詰上り図
第67期墨江氏作3

同時に発表された「純銀詰」と一対をなす史上初の全駒使用四金詰の完全作です。
まず、と金を捌いて角を入手し、9六角と離して打ちます(⑫8七歩合なら同角、8九玉、6九龍、8八玉、7八龍、9七玉、9八歩…)。ここから龍追いになり、8・9筋でのミニ龍鋸をして途中1図へ。ここから飛車を取って角に替え、6五角と据えて6三と…7三と…からまたもや龍追いに入ります。
途中2図では㊿6一玉、8三角成、7二歩合、同馬、同玉、7四香…や、㊿6二玉、8二龍、7二歩合、6四香、6三歩合、同香、同玉、5四金、6二玉、6三歩、6一玉、5二成桂、同玉、7二龍…の変化があり、この後5四龍、4二玉となったところでは[55]4三銀、3一玉、2一歩成、同玉、3二銀成、同玉、3三歩成、同玉、3四金、2二玉…や[55]3二と、同玉、3三歩成、同桂、2一銀、3一玉、4三桂、2二玉、1二銀成、同玉、1四香、1三歩合、同香成、同玉、1四金、1二玉、2三金、同玉、3四金、1二玉…といった際どい紛れもあります。
作意は、途中2図から3三銀とぶち込んで3四金と進め、1三金の形にして73手目に1三龍…と切ってからは小駒だけの収束手順に入りますが、終盤でうっかり[85]2八銀…とすると後ですり抜けられます。
この見事な四金詰と四銀詰(2二馬を2一馬に修正)は、後に発表された全駒の四桂詰・四香詰(いずれも99手詰)と並べて、七條兼三氏の三回忌に上梓された『将棋墨酔』第八十九番から第九十二番に収められています。
北原義治「全駒使用の意欲は高く買える」
吉田健「またケムリだろうと思っていると裏をかかされる」
桑原辰雄「年齢を感じさせないネバッコイ弾力には敬服のほかありません」
金田秀信「全駒使用にありがちな無理な配置がなく、詰将棋の一つの夢を実現させた手腕は高く評価したい」
伊藤果「墨江氏のファイトに感動した」
柏川香悦「氏の旺盛な意欲には感服のほかなし」


「天狼」の解説中で言及されている黒川一郎氏作「天馬」を掲げます。


詰将棋パラダイス昭和43年4月号に発表され、看寿賞を受賞。
「将棋浪曼集」第100番に収録されています。


「純金詰」は「将棋墨酔」第89番に収録されています。
「純銀詰」(「将棋墨酔」第90番)は、余詰があるようですので掲載を控えます。


次回からは第18回(第68期)に入ります。
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添川公司氏作 「魁」 (77手詰)

この期に発表された長篇作では、添川氏の「魁」 (77手詰) も特筆に値すると思います。

この作品は数少ない七歩連続合作品の一つです。
この作品以前に発表された七歩連続合作品の内訳は

[1] 飛に対する横の七歩連合 (1作)
[2] 香に対する縦の七歩連合 (2作)
[3] 角に対する斜の七歩連合 (2作)

ですが、「魁」は竜に対する縦の七歩連合で、手順を成立させる原理も過去の作例とは異なる新しいものです。
発表時期がずれていれば、長篇賞を受賞していてもおかしくなかった作品です。

名無しさんへ

私の知識では
[1]山中龍雄氏作、[2]森田拓也氏作「北斗」、七條兼三氏作(第49期塚田賞長篇賞、「将棋墨酔」第17番)、[3]駒場和男氏作?、?
ぐらいしか思いつきませんでした。

「魁」、知りませんでした。
時間がある時に探してみようと思います。

七歩連合作品リスト

七歩連合に限定せず、連続合駒作品のリストが近代将棋の1995年7月号の「夜の詰将棋」に掲載されています。

※ このリストに漏れた作品が4作あり、補足記事が同年9月号にあります。

その中から七歩連合作品のみリストアップします。

(1) 山中龍雄作 59手詰 近将 1968年6月号 *飛に対する横の七歩連合
(2) 森田拓也作 63手詰「北斗」 詰パラ 1971年11月号 *香に対する縦の七歩連合 (※ 小駒図式)
(3) 七條兼三作 67手詰 近将 1977年4月号 *香に対する縦の七歩連合
(4) OT松田作 73手詰 近将 1983年12月号 *角に対する斜の七歩連合
(5) 駒場和男作 79手詰 「凌雲閣」近将 1984年7月号 *角に対する斜の七歩連合
(6) 添川公司作 77手詰 「魁」近将 1986年6月号 *竜に対する縦の七歩連合

このリスト以降に発表された作品については知りません。
(1)と(3)は名著『近代将棋図式精選』に収録されています。
(5)は駒場氏の作品集『ゆめまぼろし』に収録されています。

以上、ご参考まで。

添川氏作 「天狼」

27年振りに見ましたが、やはりよい作品ですね。
この作品も難解な変化はなく、誰にでもよさが理解できるのが魅力だと思います。

名無しさんへ

七歩連合リスト、ありがとうございます。
OT松田氏も発表されていたのですね。

「天狼」は、四百人一局集で選んでいることを見ると作者お気に入りの一局なのかもしれません。
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