続・塚田賞作品の魅力(16)(近代将棋平成8年6月号)③

今回は長篇部門の二回目です。
第66期(昭和60年7~12月号)

長篇賞 橋本孝治作
「イオニゼーション」



橋本孝治作(昭和60年12月号) 詰手順
9四成桂 8五玉 8四と 7五玉 7四と引 6六玉 5六と 同玉 5五と寄 6六玉
6五と 同玉 6七龍 ⑭6六香合 6四と右 5五玉 5七龍 5六歩合 5四と右 4五玉
4七龍 4六歩合 4四と右 3五玉 3七龍 ㉖3六歩合 3四と引 2五玉 2七龍
2六歩合 2四銀成 1五玉(途中1図)

途中1図(32手目1五玉まで)
第66期橋本氏作1

1四成銀 2五玉 2四と 3五玉 3四と左 4五玉 4四と左 5五玉 5四と左
6五玉 6四と左 7五玉 7四と左 8五玉 8六歩 同飛 8四成桂 9五玉
9七香 9六桂合(途中2図)

途中2図(52手目9六桂合まで)
第66期橋本氏作2

同香 同飛 (1)9四成桂 8五玉 『8四と右 7五玉 7四と右 6五玉 6四と右
5五玉 5四と右 4五玉 4四と右 3五玉 3四と右 2五玉』
(以下では『と金送り手順』を……で略記)
1七桂 同成香 2四成銀 1五玉 1七龍 1六歩合 1四成銀……8五玉(途中3図)

途中3図(88手目8五玉まで)
第66期橋本氏作3

「8六歩 同飛 8四成桂 9五玉 9八香 [94]9七桂合 同香 9六香合 同香 同飛
9四成桂 8五玉」
(この12手で持駒香歩が桂香に変換される)
(2)8四と……3五玉 2七桂 同歩成 3四と右 2五玉 2七龍 2六歩合
2四と……8五玉 「香歩→桂香変換」
(3)8四と……4五玉 3七桂 同歩成 4四と右 3五玉 3七龍 3六歩合
3四と左…8五玉 「香歩→桂香交換」
(4)8四と……5五玉 4七桂 同歩成 5四と右 4五玉 4七龍 4六歩合
4四と左…8五玉 「香歩→桂香交換」
(5)8四と……6五玉 5七桂 同歩成 6四と右 5五玉 5七龍 5六歩合
5四と左…8五玉 「香歩→桂香交換」
(6)8四と 7五玉 6七桂 同香成 7四と右 6五玉 6七龍 [244]6六歩合
6四と左…8五玉 「ここでは、香香→桂香交換」
(7)8四と……6五玉 5七桂 同歩成 6四と右 5五玉 5七龍 5六香合(途中4図)

途中4図(270手目5六香合まで)
第66期橋本氏作4

5四と左…8五玉 「香歩→桂香交換」
(8)8四と 7五玉 6七桂 同歩成 7四と右 6五玉 6七龍 6六歩合
6四と左…8五玉 「香歩→桂香交換」
(9)8四と……6五玉 5七桂 同香成 6四と右 5五玉 5七龍 5六歩合
5四と左…8五玉 「香香→桂香交換」
(10)8四と……5五玉 4七桂 同歩成 5四と右 4五玉 4七龍 4六香合
4四と左…8五玉 「香歩→桂香交換」
(11)8四と……6五玉 5七桂 同歩成 6四と右 5五玉 5七龍 5六歩合
5四と左…8五玉 「香歩→桂香交換」
(12)8四と……5五玉 4七桂 同香成 5四と右 4五玉 4七龍 4六歩合
4四と左…8五玉 「香香→桂香交換」
(13) 8四と……4五玉 3七桂 同歩成 4四と右 3五玉 3七龍 3六香合
3四と左…8五玉 「香歩→桂香交換」
(14) 8四と……5五玉 4七桂 同歩成 5四と右 4五玉 4七龍 4六歩合
4四と左…8五玉 「香歩→桂香交換」
(15) 8四と……4五玉 3七桂 同香成 4四と右 3五玉 3七龍 3六歩合
3四と左…8五玉 「香香→桂香交換」
(16) 8四と……3五玉 2七桂 同歩成 3四と右 2五玉 2七龍 2六香合
2四と……8五玉 「香歩→桂香交換」
(17) 8四と……4五玉 3七桂 同歩成 4四と右 3五玉 3七龍 3六歩合
3四と左…8五玉 「香歩→桂香交換」
(18) 8四と……3五玉 2七桂 同香成 3四と右 2五玉 2七龍 2六歩合
2四と……8五玉 「香香→桂香交換」
(19)8四と……2五玉 1七桂 同歩成 2四成銀 1五玉 1七龍 1六香合
1四成銀…8五玉 「香歩→桂香交換」
(20) 8四と……3五玉 2七桂 同歩成 3四と右 2五玉 2七龍 2六歩合
2四と……8五玉 「香香→桂香交換」
(21)8四と……2五玉 1七桂 同香成 2四成銀 1五玉 1七龍 [754]1六香合
1四成銀…8五玉(途中5図)

途中5図(768手目8五玉まで)
第66期橋本氏作5

7五と [770]9四玉
9三馬 同玉 8四と 9二玉 9三香 同飛 同と 同玉 9六香 9五香合
同香 同桂 9四香 同玉 8四飛 9三玉 8二飛成 9四玉 8四龍まで789手詰
1筋から9筋までの壮大なと金智恵の輪に龍移動と合駒変換を組み合わせた前代未聞の超長篇大作です。そのカラクリを理解するには途中図を追ってみるしかありません。
まず途中1図までは序奏。龍ずらしで六段目に合駒の歩を並べさせてと金智恵の輪の舞台
づくりです(25手目の3七龍に㉖2五玉は2七龍、2六歩合、2四銀成、1五玉、1四成銀、2五玉、2四成銀、1五玉、1六歩、2四玉、2六龍以下)。このうち6六だけが香になっているのが本局のキーポイントで、もし⑭6六歩合なら1九金の質駒を取りに行く早詰の筋(後述)に入られてしまいます。
この智恵の輪で左へ送って途中2図で桂合を入手し、右へ戻して1七桂…で成香をはがして来ます(途中、5四と左または右のときに同金と取る変化は8二馬と寄る筋に持ち込めば詰む)。ここまでの88手がプロローグ。途中3図からいよいよ本題に入ります。
ここからの「12手」で持駒の香歩が桂香に変わり([94]9七香合は8六と、同玉、8五飛、9六玉、9七香…で早い)、この桂を2七へ打って龍を1路左へ寄せる。振幅はだんだん小さくなりますが、これを六回繰り返して6六龍まで持ってくると、このときは6六香が歩に変わる。持駒は香香になっても、桂香への変換手順は同じですが、玉方は5筋に香合をして抵抗します(途中4図)。
この辺りでようやく作者の意図が読めてきました。つまり、この往復手順を三回繰り返す毎に香合が1筋ずつ右へシフトして行くのです!そして遂に19回目に1六香合が出現。このときは持駒が香歩ですが、もう二回往復させると、同じ形で持駒が香香に変わります([754]1六歩合なら途中5図から8四成桂、9五玉、9六と、同玉、9七香、8七玉、8八香、同銀、同と、同玉、9八飛、8九玉、1九龍、9八玉、8七銀、同玉、8九龍…で駒余りの詰み。この順は持駒香歩でも成立するので、これを防ぐ香合だった訳です!)。
さて途中5図からは大団円。7五と引きに[770]同桂なら8四成桂、9五玉、9六と、同玉、9八香、9七桂合、9三飛に対して合駒がない!この状態をつくるのが二十一回も往復する智恵の輪の目的だったのです。作意の方は7五とに9四玉以下。さしもの大河ドラマも幕が降りました。
伊藤果「両作に接したとき身体の中にビリビリットと電気が走るほどの激しいショックを受けた。大長手数の分野に独自の構想で敢然と挑戦した二人に惜しみない拍手を贈る」
岡田敏「新機軸のプロットで789手の長手数詰を完成させたことに脱帽あるのみ」
吉田健「長手数構成原理も”龍追い”から”持駒変換型多重連取り”と飛躍的進歩を遂げたが、若い作家達はさらに高度の組合わせ技法を探究し続けている。二作揃い踏みの偉業を讃えたい」
谷口均「長篇部門は確実に新時代を迎えたようだ」
なお、本図も『饗宴』に収録された改良図〔8一金、7一金→6一と、6二と〕で紹介しました(ついでながら『饗宴』には詰研の俊英二十名が代表作を五局ずつ自ら解説した夢のような作品集です。ご希望の方は切手か定額小為替で千二百四〇円を同封して〒185国分寺市東元町二-四-五、詰将棋研究会まで)。



「桃花源」に続いて超長編作品の登場です。
現在においては第七位の長手数となっています。



有名な作品ですが、翌年、詰将棋パラダイス昭和61年6月号に発表された橋本孝治氏作「ミクロコスモス」(改良図)を掲げます。



発表当時から四半世紀以上の時が流れた現在でも、堂々の普通詰将棋最長手数作品です。
もちろん看寿賞も受賞しています。
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意外なバグ

「ミクロコスモス」のFLASHデータ ( http://uraniwa.org/kif2swf/referer.cgi?createtime=13793400391&filename=13793400391 ) に意外なバグがあります。

|←←!→→| ボタンで1手ずつ進める / 戻す、最終手 / 初手にジャンプする動作は問題ないのですが、左側の [0手目] のテキスト入力エリアに3桁までしか数値が入らず、1,000手目以降にジャンプできません。
(添川氏の「新桃花源」http://uraniwa.org/kif2swf/referer.cgi?createtime=13792495808&filename=13792495808 についても同様です)

→→| ボタンで1,000手目以降の局面に進めた場合、4桁目が表示されず、手数表示は3桁となっています。
(※ これはテキストエリアの横幅の問題で、内部的には4桁のデータとなっているようです)

プログラムテンプレートの仕様上、999手までしか入らないのかもしれませんが、可能であるなら修正したほうがよいと思います。

名無しさんへ

確かにご指摘のような状態ですね。
残念ながら、私の力では解決法が分かりませんでした。
「ミクロコスモス」と「新桃花源」につきましては、別の盤での掲載を検討したいと思います。
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相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

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