続・塚田賞作品の魅力(14)(近代将棋平成8年4月号)①

森田銀杏氏の連載「続・塚田賞作品の魅力」、第14回(第64期)は3度に分けて取り上げたいと思います。
今回は短篇部門です。
第64期(昭和59年7~12月号)

本誌「詰将棋研究室」の解説を筆者が担当したのは昭和56年からなので、この期で四年が経ちました。当時の解説を読み返してみると、詰将棋の面白さを一人でも多くの読者に理解して貰うべく、懸命に執筆していたことが蘇ってきます。
解説が情熱的かつ的確であれば、作家の方もそれに応えて意欲的な作品を投稿してきます、昭和50年代後半の本誌には大作・妙作が数多く集まりましたが、その意味で、少しは貢献したのかもしれません。
この期は7月号に、二年ぶりに駒場和男氏が一挙に四局の野心作を”力だめし”で発表して読者に挑戦。添川公司・山腰雅人氏らの趣向作や杉山正氏の小駒図式など、受賞級の大作で長篇部門は賑わいましたが、12月号に特別出題された藤本和氏の長尺物に賞をさらわれました。また裸玉図式に執念を燃やし、47手詰という史上最長手数の快作を”発見”された小沢正広氏に特技賞が贈られました。
中篇部門も相変わらず妙作が目白押しでしたが、山本民雄氏が奇術を見るような秀作で上田吉一氏の連続受賞を阻みました。
四期にわたって”該当作なし”だった短篇部門にも、中篇作家が参入して、久々に好作が集まり、打歩詰作品で若島正氏と森長宏明氏が一騎打ちの末、前者に凱歌が上がりました。
なお、この期に初入選した作家は濱田博・東寺悠紀・西山和宏・原亜津夫・馬詰恒司・若葉涼・IMO(現在のペンネームは塚田真青)といった人たちでした。

第64期「塚田賞」選考投票 集計表



短篇賞 若島 正作


若島 正作(昭和59年7月号) 詰手順
①1三歩成 同玉 1四金 ④1二玉 2三龍 1一玉 2二龍 同玉 2三金 1一玉
3三馬 同桂 1二歩 2一玉 1三桂まで15手詰
普通に攻めるなら①2三金(1一玉は2二金、同玉、1三歩成、同桂、2三歩成…で詰む)、同歩、1三歩成、1一玉、2二と、同玉ですが、このあと2三龍は1一玉で打歩詰。2三歩成なら1一玉、3三馬、同桂で1二歩は打てますが、2一玉に1三桂を同馬と取られてしまいます。
そこで1三歩成(同桂は2三金…)から1四金と打ち換えておくのが第一の鍵。これは④同玉なら4一馬(1五玉は3五龍、1六玉、3八角…)、3二香合、1六香、1五合、3二馬、同歩、2六桂、同馬、2三歩成までの変化が伴います。
1二玉と追い戻して2三龍と入るのが第二の鍵で、2二龍切りから2四歩を残して2三金と入れば、先程の打歩詰も1三桂打ちも可能になるのです。
大駒先捨て(本局では龍と金)による打歩詰回避という構想を、歩→金打ち換えの巧妙な序奏で隠蔽し、しかも短手数で仕上げたところは見事と言うほかありません。
谷口均「強烈な狙いを実現した構想作品。打歩詰に関連したこの種の手筋は氏の得意とする分野だが、強引に短篇にまとめてアピールしようとしたことが成功した」
桑原辰雄「作風とは言え、マジックに徹底した作意が形の悪さをカバーし、とくに2三龍と歩にぶつける手筋は力強い」
金田秀信「3手目1四金は心理的妙手。私自身、詰まないのでは…と思い、編集部に問い合わせたほど。よく見ると形もそんなに悪くない」
伊藤果「ピカッと光るものを感じた」
柏川香悦「作者のものとしては、構成の面でいささか弱い感じもするが、短篇はここらを賞の基準としたいので、一票を投ずる」


短篇次点 森長宏明作


森長宏明作(昭和59年8月号) 詰手順
3三桂 ②同歩 4一龍 ④3一桂合 1一歩成 同玉 2三桂 同飛 3一龍 2一飛
⑪1二角成 同玉 1三歩 1一玉 2三桂まで15手詰
初手3三桂に②2二玉は、2三金、同飛、1四桂、1三玉、2三角成、同玉、2一飛以下。3手目4一龍にも④2二玉は、2三歩、1二玉、2四桂、同飛、2二歩成、同玉、1三金、同玉、1一龍まで。どちらも一局の作品になりそうな、綺麗な変化です。
作意は3一桂合で、1一歩成から3一龍と取る前に2三桂で同飛と呼んでおくのが角の利きを消して打歩詰を回避する手筋。玉方も2一飛と引いて打歩詰に誘致しますが、1二角成捨てで解決します(⑪2三桂、1二玉、2一龍、同馬、3一桂成、3四歩、1三飛…の紛れに入ると大変)。
形と手順が程よく調和し、作者にとっては三期連続受賞を狙った自信作でしたが、惜しくも次点。7月号の角短打による打歩詰回避の見事な短篇構想作にも票が別れたのが不運でした。
植田尚宏「打歩に絡む飛車の上下運動が良い」
金田秀信「打歩詰を巡る攻防だが、難解性もあり、収束もキチッと決まった重厚な作」
吉田健「緻密に組み立てられた歩詰手筋の完成品」
谷口均「軽い構想を無理なく綺麗に表現した完成品である」



若島氏作は「盤上のファンタジア」第35番に、森長氏作は「詰物語」第9番にそれぞれ収録されています。


追伸
第66期の受賞作品が「おもちゃ箱掲示板」に書かれていますね。
まだご存じなく、ネタバレを防ぎたいという方は10日間程ご覧にならない方がいいかなと勝手に思います(苦笑)
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