続・塚田賞作品の魅力(13)(近代将棋平成8年3月号)①

森田銀杏氏の連載「続・塚田賞作品の魅力」、第13回(第63期)も2度に分けて取り上げたいと思います。
今回は短篇・中篇部門です。
第63期(昭和59年1~6月号)

この年の2月号に、塚田正夫名誉十段の三千子未亡人から寄贈された基金によって第63期から塚田賞が豪華になり、時計つきの駒形のアクリル板に受賞作品を刻み込んだ楯と副賞三万円となったことが発表されました。同じ号の研究室解説の枕に小生が年賀戯作「子の字図式」37手詰を紹介しているので、丁度十二年前のこと。この塚田基金による豪華な賞が続いたのは数年間なので、その間の受賞者は実に幸運でした。
さて、この期にも岡村孝雄・竹田竜治・西村誠一・堀田雅裕・下村雅彦といった有力な新人が十二人も登場したにも拘わらず、短篇部門はまたもや該当作なし。活況を呈した中篇では上田吉一氏が、作者には珍しい桂香図式で十回目の受賞となり、北原義治氏(十二回)、山田修司氏(十一回)に続く第三位の塚田賞受賞記録者となりました。秀作が目白押しの長篇では森長宏明氏と素田黄氏の二作が拮抗し、両氏とも前期に続く連続受賞。森長氏は加えて第三回三手詰最優秀作にも選ばれ、ダブル受賞の栄誉に浴しました。

第3回三手詰最優秀作
森長宏明作(昭和58年8月号)
第63期森長氏作


第63期「塚田賞」選考投票 集計表



短篇次点 西村誠一作


西村誠一作(昭和59年2月号) 詰手順
3三金 同銀 1三金 同玉 1二金 同玉 3二飛成 2二銀上 2三金 1一玉
2二龍 同銀 1二銀まで13手詰
四金持駒なので銀二枚の守りを甘く見て、1三金から1一飛成と平凡に攻めると1二合…でなぜか届かない。しからば…と3三金、同銀、1三金、同玉に3三飛成と銀を取っても2三合…とされて旨く行きません。5手目に1二金と捨てるのが絶妙の一手で(同銀なら3三飛成…)、これで玉方は痺れます。初入選とは思えないほど洗練された小品です。
吉田健「簡潔な造形、持駒趣向、軽妙な打ち廻しと三拍子揃った好作であることは確かだが、いま一歩」
岡田敏「初入選ながら、1二金捨てなど渋い手を挿入して好作と思うが、短篇賞としては迫力に欠ける」


中篇賞 上田吉一作


上田吉一作(昭和59年2月号) 詰手順
4二歩成 同金 4三桂 同金 3四龍 ⑥3三合 4一龍 2二玉 2三龍 同玉
3五桂 ⑫同香 4三龍 ⑭3三飛合(途中図)

途中図(14手目3三飛合まで)
第63期上田氏作

⑮2四歩 2二玉 ⑰3二金 1二玉 1三歩成 同桂
2三歩成 同飛 同龍 同玉 3三飛 1二玉 1三飛成 同玉 2五桂 2三玉
3三桂成 1三玉 1四歩 1二玉 2二金まで35手詰
初手から3二龍と切って3四龍、3三合、2四桂、同歩、4四桂…と実戦的に攻めるのは3三銀合でダメ。4二歩成…4三桂…3四龍…と守りの金を動かすのが詰将棋らしい筋です。続く4一龍…2三龍の荒技から3五桂と打てば(⑫3四玉は4三龍以下なので)⑥3三合がだったことに気付きます。途中図の3三飛合(⑭金合なら2四歩…2三金…3三龍…)のあと、⑮2四金や⑰4二龍などの際どい紛れもありますが、作意は20数手にも及ぶ気持ち良い捌き。この収束が1四歩一枚の配置で成立するのですから驚きです。
構想派の雄に珍しい実戦型作品ですが、その完成度が高く評価されました。
桑原辰雄「二度にわたる合駒のヒビキが洗練されており、本格的なプロ好みの味」
谷口均「珍しく正算式で創作されたそうだが、手順の格調の高さはやはり超一流」
岡田敏「自然な実戦型に詰将棋らしい好手を盛り込み、軽い合駒をアレンジして解者を飽かせないのは流石。軽く作ったのだろうが、そこにはえも言えぬ品格が漂う」
吉田健「作者にとっては異色作であるが、いつもながらの完成度の高さ。作品に風格を与えている」


中篇次点 角 建逸作


角 建逸作(昭和59年5月号) 詰手順
6三銀 7五玉 7六飛 8五玉 7四銀 8四玉 7三銀 8五玉 8六飛左 9五玉
8四銀 9四玉 8三銀 9五玉 9六飛 8五玉 7四銀 8四玉 7三銀 8五玉
8六飛右 7五玉 6四銀 7四玉 9四飛まで25手詰
銀と二丁飛車のパズル。目的は判らないままに単純な送り手順を繰り返して玉を9四まで運び、再び7四玉まで戻ってみると、なんと9四飛の1手詰。要は24手をかけて初形から9四歩が消えただけですが、このバカらしさも詰将棋の味なのです。
岡田敏「銀の動きが印象に残る好作」
谷口均「夢かめまいか、この作意はファッショナブル」
北原義治「堀半七の古典をちょっと連想させ、捨駒のない単彩で統一できたところを買う」



新人賞は1票としてカウントされているようです。

上田氏作は「極光21」第23番に収録されています。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

hirotsumeshogi

Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR