続・塚田賞作品の魅力(12)(近代将棋平成8年2月号)②

今回は長篇部門を取り上げます。
第62期(昭和58年7~12月号)

長篇賞 素田 黄作


素田 黄作(昭和58年11月号) 詰手順
「5六飛 4五玉 4六飛打 3五玉 3六飛 4五玉 6三角 5四角合 同角成 同と
4六飛右 3五玉 6二角 ⑭4四角合(途中1図)

途中1図(14手目4四角合まで)
第62期素田氏作1

3六飛 4五玉 4六飛左 5五玉」 4四角成 同と
9一角 ㉒8二角合 同角成 同歩 「5六飛 4五玉 6三角 5四角合 同角成 同と
4六飛右 3五玉 7一角 4四角合 3六飛 4五玉 4六飛左 5五玉」 8二角成(途中2図)

途中2図(39手目8二角成まで)
第62期素田氏作2

㊵7三歩
同馬 6四歩合 5六歩 6六玉 6七銀引 6五玉 6六歩 同角 同銀 ㊿同玉
5五歩 6五玉 6六歩 5五玉 4四角 同と 「5六飛 4五玉 6三馬 5四角合
同馬 同と 4六飛右 3五玉 6二角 4四角合 3六飛 4五玉 4六飛左 5五玉」
5六歩 6六玉 4四角成 同と 5五歩 6五玉 6六飛 5五玉 5六飛右 4五玉
2七角 3五玉 3六飛 4五玉 3五飛 同玉 3六飛 4五玉 9六飛 3六飛合(途中3図)

途中3図(90手目3六飛合まで)
第62期素田氏作3

同角 3五玉 1五飛 2五桂合 同飛 同歩 2七桂 2六玉 6三角成 9六銀
3六馬 1六玉 1七香まで103手詰
序奏もなく、いきなり六段目に飛車二枚のミニ知恵の輪をつくり、6三角に5四角合、6二角にも4四角合(途中1図、⑭5三角合は同角成、同と、5五飛以下)とする<角打ち角合>の主題が始まります。
この無窮運動の局面を進展させる第一弾が9一角(㉒7三角合は同角成、同歩、5六飛、4五玉、6三角、5四角合、同角成、同と、4六飛左、5五玉、5六歩、6六玉、6七銀引、6五玉、6六歩、6四玉、7五角、6三玉、7三歩成まで)。これで8二角合とさせて8二歩と進め、3五玉の形に戻して7一角から8二角成(途中2図)として一歩稼ぎます。ここで7三歩と突くのが珍しい応手で、直ちに㊵6四歩合としても全く同じ手順に進みますが、馬が8二→7二と行くのを8二→7三→6三とさせる2手延ばしの陥穽なのです。
6四歩合で退路が塞がれたので、5六歩…6七銀引…と手を変え、6六歩、同角、同銀と角を入手します。ここで㊿7六玉は7七銀引、6五玉、7六角、同銀、同銀、同玉、5五歩、6五玉、6六歩、5五玉、4四銀、同とから「5六飛…5五玉」と本手順同様に進め、5六飛左、4五玉(8七銀が消えているので6六玉と躱せない!)、6三角、5四角合、同角成、同と、4六飛左、5五玉、6六角以下です。このあと5五歩…6六歩以下、最初と同様の手順を繰り返すと7三馬が手駒に替わり、2七角から飛車を捌いて9六成香を入手すれば、3六飛(途中3図)の捨合による4手延命が入って収束に向かいます。
二丁飛車による変則的な知恵の輪と角打ち角合のモチーフつまり、「5六飛…5五玉」の手順を反復する間に微妙に局面が変化して詰に至るという奇妙な作品で、駒繰りを楽しむ趣向作とも論理的な構想作とも違います。変化・紛れの説明はかなり省略しましたが、これがまた複雑怪奇で、このために全題正解者が僅か十二名になってしまいました。
作者(本名=臼田信次郎)は当時、大井町将棋センターを根城にして一風変わった難解作を集団創作していた「般若一族」の一人ですが、本作も頭領のミスター・ブラック氏の発案を基にしたものとか。最近、一族が復活しそうな気配が見えるのは嬉しいことです。
金田秀信「二枚飛車を操りつつ角打ち角合を繰り返す手順は大魔術を見ているようだ」
柏川香悦「角打ち角合の手筋を作者独特な創り方で、実に難解な大作と思う。飛車一枚を消しての収束も巧妙」
岡田敏「角打ち角合はよくあるパターンだが、パズル性を強く主張している。40手目の7三歩突きが異色で、収束も無難にまとめ、文句なし」
植田尚宏「いたずらに難解。その割に玉の行動範囲が狭く、奇怪な感じ」
谷口均「怪奇的な作風。今までにない何かが隠されているようで、楽しみである」
北原義治「美しさという点が欠けるの憾みないわけでもないのだが。ま、ないものねだりと謗られようか」


特技賞 飯田岳一作


飯田岳一作(昭和58年10月号) 詰手順
7五銀 9四玉 8五金 同銀 9三馬 同玉 9一飛 9二角合 9四歩 同玉
9二飛成 9三歩合 同龍 同玉 8四角 9四玉 9五歩 8三玉 7三歩成 9二玉
9三角成 同玉 8三と 同玉 8五香 7三玉 6五桂 同歩 6四銀打 6二玉
5二と 同玉 5三銀生(途中図)

途中図(33手目5三銀生まで)
第62期飯田氏作1

㉞4一玉 5二銀打 3一玉 2一と 同玉 2二飛 同金
同と 同玉 3四桂 3三玉 2三歩成 同玉 3五桂 3四玉 4四金 3五玉
2六と 同金 4五金打 3六玉 3七歩 同金 同馬 同玉 3八と左 2六玉
2五金 3六玉 3五金左 4六玉 4七歩 同成香 4五金引 5六玉 4七と 同玉
4八と 5六玉 5七香 同成香 同と 同玉 5八と 5六玉 5七香まで79手詰
序盤は全駒使用による合駒制限を絡めながらの見事な捌き。30手余りを費やして5三銀生(途中図)と出たあたりで作者の狙いが姿を現します。この後、右辺で煙詰のような手順が続き、中段まで追い上げてから三枚の金がミニ知恵の輪のように横並びするのが珍妙です。最後に成香を奪って盤面一杯の<十文字>が出来上がります(詰上り図)。

詰上り図
第62期飯田氏作2

<十文字>の炙り出しは岡田敏氏が「三大曲詰の研究」(本誌、昭和56年6月号)で提唱され、相生梨花氏がすぐに挑戦しましたが(同7月号)惜しくも余詰。従って本図がその第一号です。
それだけの難条件にも拘わらず、本局は手順がよく練られており、序・中・終盤のバランスのとれた構成も非の打ちどころがありません。中でも33手目の5三銀生(途中図)が㉞6一玉、5一と、同飛、6二銀打、7二玉、6四桂、6三玉、5二銀、同飛、5三歩成、同飛、同銀成、同玉、5一飛…の変化を伴いながら、後に4四へ効かせるための伏線手で、本局のアクセントになっています。しかも盤面一杯の<宇宙詰>なのに不動駒が五枚しかないというのも凄い。作者の腕を存分に発揮した力作です。
桑原辰雄「詰上り盤面一杯に広がる十字の出現となれば並みの曲詰とは格が違う。詰将棋の歴史の一頁を飾る快挙である。全駒配置から不動駒は僅か五枚だけというのも強力に引き締めている」
岡田敏「史上初の十文字の炙り出し。不動駒五枚という捌きもさることながら、伏線手も挿入してあり、上出来の作」
柏川香悦「大十文字の難しい条件にも拘わらず、見事な内容には感嘆の他なし」
伊藤果「不可能領域が段々とベールを剝がされて行くようで、創作技術の進歩に敬服と脱帽です」



素田氏作は53手目6六飛、55手目5六歩、59手目6三馬などでも詰んでしまうようで、何とか修正されることを期待したいです。
→追記(2014年8月11日)
先日出版された「般若一族 全作品」の第15番に収録されています。
詳細な解説に加え、驚愕の結論も出されています。購入して損はありません。

次回からは第13回(第63期)に入ります。
明日は詰将棋パラダイスのちょっとした感想を載せる予定です。
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素田黄氏作品

いつも楽しみにしています。

> 素田氏作は15手目4四角成、53手目6六飛、55手目5六歩、59手目6三馬、67手目4四角成などでも詰んでしまうようで、何とか修正されることを期待したいです。

http://hyudo.shiteyattari.com/index.html

上記↑に掲載されている般若一族作品の中にも本作の修正図は収録されていないので、修正は断念されたのかもしれません。

首猛夫氏は2008年に死去されましたし、素田氏も創作活動をされていないようなので、残念ながら今となっては作者自身による修正は難しいと思います。

名無しさんへ

コメントありがとうございます。

素田氏の消息は全くもって存じ上げないのですが、どうやら「般若一族作品集」を出版する動きが進んでいるようです。
その作業の中で修正が成功すればいいなという思いを込めて書きました。

また、首氏のホームページ中の「既発表作品」は、完全作と思われる「虎バサミ」などが収録されていないことから、未完成だったと思われます。この記事の作品に対するコメントを見ることができないことを含めて、早世が残念でなりません。

Re 「般若一族作品集」

> どうやら「般若一族作品集」を出版する動きが進んでいるようです。

なるほど、そうでしたか。
それは知りませんでした。
ということであれば、この作品も修正図で収録されるかもしれませんね。

情報ありがとうございました。

No title

素田黄氏作の余詰として書かれているもののうち、67手目4四角成というのは単なる迂回手順(千日手的後戻り)です。柿木の指摘を鵜呑みにしすぎです。

解答欄魔さんへ

失礼しました、該当部分は修正いたしました。


ここからは私見です。
私の検討が不十分であることや柿木将棋に頼る部分の強いことは間違いないですし、ミスに対する指摘はもちろん受け入れます。
ですが今回のコメント、言葉が強すぎるという印象を受けました。
過去の作品に関する余詰や非限定の指摘を全て載せている訳ではなく、自分なりに判断した上で掲載していますし、したがって除外しているものもあるということを書いておきます。

必要以上に強い言葉を発するのは、時として悲しい結果を生むことがあります。
相手側へ及ぼす影響には気を付けたいものです。
以上の点、僭越ながら申し上げさせて頂きます。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

非公開コメントさん

該当箇所は修正いたしました。

完璧にとは行きませんが、注意を払って精度を高める努力はしていきたいと思います。

驚愕の結論

今月発刊された『般若一族全作品』に、この作品を検討した結果の驚くべき結論が掲載されています。

http://item.rakuten.co.jp/shogi/15194556/

運命のいたずらといいましょうか、本当に驚きました。

名無しさん

この記事のコメント欄、久々に見ました。
色々と懐かしいです。

「般若一族 全作品」は詰将棋全国大会の時に購入いたしました。
結論には私も驚きました。
時間が出来ましたら、追記を行いたいと思います。

また、「エマージェンシ―」についても同様に追記する予定です。
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Author:hirotsumeshogi
少ない知識をフル活用させています。
当ブログはリンクフリーです。
相互リンクは詰将棋関係のものであれば原則受けさせて頂きます。

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