続・塚田賞作品の魅力(11)(近代将棋平成8年1月号)①

森田銀杏氏の連載「続・塚田賞作品の魅力」、第11回(第61期)も2度に分けて取り上げたいと思います。
今回は短篇・中篇部門です。
第61期(昭和58年1~6月号)

第2回三手詰最優秀作
塩見倫生作(昭和57年3月号)

第61期塩見氏作

この年の2月に拙著『近代将棋図式精選』が西東書房から刊行されました。これは昭和53~54年に連載した「塚田賞作品の魅力」がきっかけになり、本誌の創刊号(25年4月)から54年12月号まで、三十年間に発表された約四千局の詰将棋の中から四百一局を選んで解説した三六〇頁にも上る豪華本。さながら「昭和詰将棋黄金時代の略史を見るようだ」という評判で、未だに購入者が絶えないようです(著者署名入りをご希望の方は郵便振替で口座番号=001110-8-173595 加入者名=森田正司へどうぞ。送料込み四、五八〇円)。
さて、この期も短篇は低調で該当作なし。それにひきかえ、中篇は好作が目白押しで、と金を歩に打ち換えるマジック氏の珍作と有吉弘敏氏のよく練られた曲詰Dが善戦しましたが、上田吉一氏が新感覚の入玉図で九回目の受賞。長篇では馬鋸入りで最長手数を達成した添川公司氏の煙詰に票が集まり、本間鉄郎氏の合駒入り龍鋸趣向の大作は不運に泣かされました。
なお、57年度に掲載された「三手の詰み」五十八局の中から塩見氏が前回に続いて優秀作に選ばれています。

第61期「塚田賞」選考投票 集計表

★植田尚宏氏は回答なし


短篇次点 柏川香悦作


柏川香悦作(昭和58年5月号) 詰手順
3四角 ②同飛 4四桂 同飛 5三金 同玉 4二角成 同飛 5四金 5二玉
5一と右まで11手詰
初手3四角は②5三玉、4二角成…の変化に備えた限定打。続いて4四桂…4二角成…と守りの飛車を弄ぶ小品ですが、余詰を消すために中央に配したのが却って味を増しています。
なお、7五とは②4三金合、4二金、5三玉、4三角成、6四玉、5四馬…の変化に備えた配置でしたが、なくても同手数駒余りで詰むので、昨年上梓された『詰将棋半世紀』では省かれて、さらに好形になりました。
桑原辰雄「初手3四角を限定打にした短篇構想は、形と相まって新鮮味抜群」
金田秀信「角・桂で飛車を泳がし、さらに5三金から4二角成に味がある」


中篇賞 上田吉一作


上田吉一作(昭和58年3月号) 詰手順
2六馬 2八玉 3七馬 3九玉 4八馬 ⑥2八玉 3九金 同金 3七馬 1七玉
2六馬 2八玉 5八龍 3八角成(途中図)

途中図(14手目3八角成まで)

第61期上田氏作

3七馬 1七玉 2七飛 同馬 2八龍 同馬 2六馬まで21手詰
作意手順を見ると馬と玉が往ったり戻ったりしているだけのようですが、4八馬には⑥同玉、5九金、3八玉、4九金(同玉は2七角…)、2八玉、2三飛、2七金合、3七角、1七玉、2七飛成…という変化があります。3九金で金を移動させておいて、もう一度2六馬と戻ったところで5八龍の好手に3八角成(途中図)の抵抗があり、飛龍の捨駒で綺麗な収束。作者が得意とする変則趣向手順を簡潔な配置で実現した小品です。
金田秀信「馬のエスカレーターが明快な論理で展開される。馬の動きが醸し出す階調は心地よい」
岡田敏「心地よいリズムを乗せた馬の動きを良形で仕上げた」
伊藤果「こんな手順は”夢想の世界”だと諦めていたのに、上田氏はそれを完璧に表現してくれた」
桑原辰雄「小気味よい手順が最後まで続き、入玉図のお手本とも言える完璧な構図」
谷口均「推敲し尽くされた格調高い作」


中篇次点 有吉弘敏作


有吉弘敏作(昭和58年6月号) 詰手順
4七飛 ②4六銀合 4四金 ④5五玉 5四金 同金 6四銀 ⑧同玉 6三と 5五玉
5七飛 同銀成(途中図)

途中図(12手目5七同銀成まで)
第61期有吉氏作

4七桂 ⑭同と 4五金 同香 4四龍 4六玉 3五龍 5五玉
4六金 同と 4四龍 同金 7三角成 5四玉 5三桂成 同香 6五角成 同玉
6四馬まで31手詰
初手4七飛に②同と、3六金、5五玉、3五龍、4五合、同金、同金、4四銀…、3手目4四金に④同香、同銀成、5五玉、5七飛、同銀成、4五金、同金、同成銀、同玉、4七香…の変化を読まされたあと、6四銀と引くのが好手で、⑧同金には4五金、同玉、3七桂…の詰みがあります。
5三銀を捌いたのは、途中図から4七桂に⑭4六玉の逃げを3五角成…で摑まえるため。4五金で香を吊り上げてからは巧みに龍を繰り替えて、鮮やかなDの字になりました。
中段玉で駒を捌いていく典型的な近代曲詰で、変化手順も含めてよく練られており、不動駒も僅か二枚。完璧な構成の炙り出しと言えます。
岡田敏「濃密な本格的手順の炙り出し」
伊藤果「巧緻に組み立てられた難解な曲詰。有吉氏は驚異の人のようです」
谷口均「実によく練られた濃密な手順は解く者に強烈な印象を与える」
柏川香悦「特技賞もの」



柏川氏作の改良図は「詰将棋半世紀」盤上流転第115番、上田氏作は「極光21」第37番にそれぞれ収録されています。

有吉氏作は、9手目6三龍及び7四角成でも詰んでしまっているようです…。
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