続・塚田賞作品の魅力(8)(近代将棋平成7年10月号)②

今回は中篇部門を取り上げます。
第58期(昭和56年7~12月号)

中篇賞 若島 正氏作


若島 正作(昭和56年7月号) 詰手順
5四金 ②6二玉 6三金 同玉 4三香成 ⑥4五桂合 同角 6四玉 5五金 同玉
6七桂 6四玉 6三角成 同玉 5五桂 6四玉 4四飛 5四桂合 同飛 同玉
4五金 6四玉 5六桂 同金 5四金 同玉 6五馬まで27手詰

詰上り図
第58期若島氏作

伊藤果五段の昇段を祝って、創棋会のメンバーである若島正・上田吉一・筆者・岡田敏の四人で連作した「イトウ五」の曲詰を7月号に特別出題しましたが、作者名当ての興味にも拘わらず、冒頭の本問が難問すぎて、全題正解者が僅か三十名という結果でした。
まず、初手の5四金に対する②同玉の変化が頗るつきの難解。以下、4四香、5三玉、6五桂、同金、5七飛、5五歩合、4三香成、同玉、6五馬、5二玉、5五飛、5四歩合、同飛、5三歩合、同飛成、同玉、5四馬、4二玉、4三金、4一玉、4二歩、5一玉、5二歩、6一玉、7二馬まで。また5手目の4三香成に⑥6二玉も7二角成以下、1筋まで追う長変化で、どちらも同手数駒余りです。
作意の方は4五桂の捨合を6七桂から5五桂と二段活用しながら金角を綺麗に捌き、最後にもう一度桂合が入って鮮やかにの字が炙り出されます。
の字詰は曲詰の中でも最も多く作られており、百局は超えているはずですが、この詰上り形の場合、殆どが5五玉で、5四玉は本図が初めて。二度の桂合を含む軽快な駒捌きと盤面一杯の変化を僅か十枚の駒で成立させたのは作者のセンスと力のなせる技でしょう。
岡田敏「正に近代的な炙り出しで、手順の妙もさることながら、詰上り形の玉位置に新機軸を出して文句なしの出来栄えである」
柏川香悦「簡潔な棋形で、実に難解にして巧妙。数あるの字の中でも、最も格調高い傑作と思う」
伊藤果「完璧の表現に脱帽。曲詰の決定版ではないでしょうか」


特別賞 柳田 明氏作


柳田 明作(昭和56年11月号) 詰手順
3四角 3五玉 2六角 2四玉 3五角 同玉 4五と 同香 3七香 2四玉
2六飛 1四玉 1三と 同玉 2二飛成 同玉 2四香 3三玉 2三香成 4四玉
4三角成 同玉 4二桂成 4四玉 4三桂成 同玉 3三成香 4四玉
3四成香まで29手詰

詰上り図
第58期柳田氏作

柏川香悦作(詰棋界S30・10、駒と人生54番)と三木宗太作(詰パラS56・5)に続く<四香詰>の第三号局。初形に成香がなく、四枚の香に必然性のある<純四香詰>としては史上初の快挙でした。
詰手順は軽快な捌きに終始しますが、序盤で邪魔駒の角を消去するあたりに味があり、金銀を使わない貧乏図式に仕上げ、全ての香が<香>としての機能をフルに発揮しているだけでなく、不動駒は5七香の一枚だけというのも立派です。
伊藤果「四香の詰上りは、また一つの夢が実現され、誠に嬉しい気持ちです」
柏川香悦「史上初の純四香詰。内容も香をフルに使った構成は申し分ない」
吉田健「楽しいロマン。苦渋の跡も見せずに四香詰上りを実現した才腕を称えたい」


新人賞 小沢正広氏作


小沢正広作(昭和56年11月号) 詰手順
4四角 ②3三金合 2三銀 同玉 2四歩 ⑥3二玉 4二金 同玉 5三金 3二玉
4三銀 同金 2三銀 3一玉(途中図)

途中図(14手目3一玉まで)
第58期小沢氏作

⑮3二歩 4一玉 4二歩 同金 3一歩成 同玉
2二銀生 4一玉 4二金 同玉 3三銀成 5一玉 5二歩 同玉 5三金 5一玉
4二成銀 6一玉 6二金まで33手詰
詰将棋作家の追い求める夢の一つ<裸玉図式>。この頃までに二十数局の完全作が発見されていましたが、2二玉型は岸本雅美氏の二局(本誌S38・7、角角金桂三香の27手詰と王将天狗S39・11、角角金銀香歩の15手詰)があるだけでした。本局は角が一枚で桂もないために手掛かりがつけにくく、その上、序盤の変化が多岐にわたって実に難解です。
まず、初手4四角に対する合駒選びから。②3三香合なら(歩桂飛も同様)、2三銀、同玉、2四歩、同玉(飛合のときは3二玉、2三銀、4三玉、3三角成…)、2五歩、同玉、2六金、1四玉、1五銀、1三玉、2四銀打、1二玉、2二金以下。②銀合なら(角も同様)、2三銀、同玉、3四銀(同銀は2四歩、1二玉、1三歩、同玉、2二銀…)、同玉、3五金、4三玉、5三金、3二玉、3三角成以下。
最後に金合ですが、この場合は2三銀、同玉、2四歩でさらに三つの応手に分岐して、⑥同金なら、3三金(1四玉や1二玉は2三銀…)、1三玉、2二銀、1四玉、2三銀、同金、1五歩以下。⑥1四玉なら、1五歩、2四玉、2五歩、同玉、2六金、2四玉、3五銀、1三玉、2四金以下。作意の3二玉には金銀をポンポンと打って守備駒の3三金を無能にしながら攻めます。
途中図でうっかり⑮2二銀成…とすると打歩詰に陥るので、一旦3二歩から4二歩と金を引かせてから2二銀生と入るのが味のあるところ。裸玉の中では珍しくすっきりとした手順です。
初入選での受賞に気をよくしてか、作者は裸玉創作にとり憑かれ、その後、十局も発表して、掘り尽くしてしまった感があります。
植田尚宏「あまりにも変化多岐で頭が痛くなるが、収束2二銀生で引き締まったのは幸運。裸玉の名作である」
柏川香悦「これだけの変化がありながら、裸玉に出がちなキズもなく、手順もなかなか妙味あり」
岡田敏「中盤に味のある手が出てきて、裸玉の中では上位にランクされる作」



柳田氏の作品は氏の作品集「奇想曲」参考1図に収録されています。
解説中で言及されていた柏川悦夫氏作(詰棋界昭和30年10月号・改良図)を掲げます。


「詰将棋半世紀」駒と人生第54番に収録されています。

小沢氏作で言及があった岸本氏作の2局目は、持駒角角金金香歩が正しいようです(おもちゃ箱「裸玉の検証」より)。
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